WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.85の今回は「Genre-Less Music」特集。
先日開催された第62回グラミー賞のレコード・オブ・ザ ・イヤー、アルバム・オブ・ザ ・イヤーなど主要4部門を独占したBillie Eilish(ビリー・アイリッシュ)、ベスト・ラップ・アルバムに輝いたTyler, The Creator(タイラー、ザ ・クリエイター)の「Igor」、ベスト・ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンスに選ばれた。
Lil Nas X ft. Billy Ray Cyrus(リル・ナズ・X ft. ビリー・レイ・サイラス)の「Old Town Road」。今、世界を席巻しているこれらの楽曲に共通するのが既存のジャンルの枠に捉われない「ジャンルレスな音楽」という共通点。2020年、もうジャンルの壁なんてものは存在しない。ヒップホップ、R&B、ロック、パンク、ハウス、エレクトロといった音楽ジャンルを超え、人種や国境、言葉の壁もぶち壊して君の気持ちをアゲてくれるものこそがこれからの音楽。という訳で今回はジャンルレスな音楽活動を展開する3組のアーティストをピックアップして紹介していくぜ!
トップバッターはbeabadoobee(ビーバードゥービー)、Rina Sawayama(リナ・サワヤマ)などが所属するイギリスのレーベル、Dirty Hit(ダーティー・ヒット)のアーティスト、No Rome(ノー・ローム)。フィリピン、マニラ出身のシンガー兼プロデューサーだ。2018年にデビューEP「RIP Indo Hisashi」をリリースして以来その注目度は高まるばかり。VOGUE誌が選ぶ2020年に注目の若手ミュージシャン10人にも選ばれている。今回はそんなノー・ロームの最新シングル「Trust3000 ft. Dijon」をチェキ!
①No Rome 「Trust3000 ft. Dijon(2019)」
Tell me why are you so frustrated? Obviously you, it’s complicated. Baby girl, I’m still down to see ya. I’ll be there, I can guarantee it. Trust in me, you’ll find. Your own peace of mind. Wishing you were mine. Thank you for your time.
「教えてくれよ、なぜイライラしてるの?君のことさ、明らかにね。複雑なんだよ。ベイビー・ガール、君のためにまだ。必ずそこに行くから。約束する。信じてくれよ。必ず安心させるから。願うよ。君が僕のものだったらと。一緒に過ごしてくれてありがとう。」
せつない恋心を歌ったノーロームのリリック。
既存のR&Bに、90年代に流行したロックのスタイル、“ショーゲイズ” やエレクトロ・ポップの要素を組み合わせた彼のスタイルは、まるで頭の中でセンスの良い恋愛ショートフィルムを見せられているように曲の世界観に入っていけるクオリティ。2018年リリースの「Do It Again」のMVを日本で撮影したり、昨年10月にも「Trust3000」のプロモーションで来日するなど、日本好きとしても知られているね。
続いて紹介するのはニューヨーク・クイーンズ生まれのYaeji(イージ)。シンガーだけでなく、DJ、プロデューサーとしても活躍する26歳だ。昨年行われた「FUJI ROCK FESTIVAL ’19」にも出演したアーティストだね。コリアン・アメリカンとして育ち、アメリカと韓国を往復する子供時代を過ごしたというバックグラウンドを持つイージの音楽はハウス、エレクトロ、ヒップホップをクロスオーバーする唯一無二のもの。チェックするのは2017年のヒット・シングル、「raingurl」!
②Yaeji 「raingurl(2017)」
Mother Russia in my cup. And my glasses foggin’ up. Oh yeah hey dog hey what’s up. Oh yeah hey dog hey what’s up. When the sweaty walls are bangin’. I don’t fuck with family planning. Make it rain girl, make it rain.
「カップの中のマザー・ロシア。メガネが曇ってる。ヘイ、ドッグ、調子はどう?ヘイ、ドッグ、調子はどう?て。例のスウェッティ・ウォールがアガってる。家族計画なんてどうでもいいし。雨を降らせてよ、ガール。雨を降らせて。」
「マザー・ロシア」はウォッカベースのカクテルのこと。“ sweaty walls(スウェッティ・ウォール:直訳すると「汗かきの壁」) ”は「ムラムラしている」という意味のスラングだ。クラブでお酒を飲んで “スウェッティ”になっちゃった女の子が “ make it rain(雨を降らせる)” しちゃうてこと。真面目そうな外見とは裏腹にかなりセクシーなイージのリリックだぜ。ちなみにこのMVのディレクションも彼女自身が手がけているんだ。
最近では自分のファッションブランド「YAEJI-MART」を立ち上げたイージ。既存のミュージシャンの枠に留まらない彼女の活躍から今年も目が離せないぜ。
ラストを飾るのは2020年大注目のアーティスト、100 gecs。昨年1月にリリースしたデビューアルバム「1000 gecs」の衝撃的サウンドで一躍世界の音楽シーンの話題をかっさらったDylan Brady(ディラン・ブラディ)と Laura Les( ロウラ・レス)による2人組だ。チェックするのは「1000 gecs」収録の1曲、「money machine」!
③100 gecs 「money machine(2019)」
Hey, you lil’ piss baby. You think you’re so fucking cool? Huh? You think you’re so fucking tough? You talk a lotta big game for someone with such a small truck. Aw, look at those arms. Your arms look so fucking cute. They look like lil’ cigarettes. I bet I could smoke you. I could roast you.
「あんたにおしっこかけてやるよ、ベイベー。あんたクソイケてるとでも思ってんの?はぁ?クソタフだとでも思ってんの?あんな小さいトラックで大口叩いて。あの腕を見てみろよ。お前の腕はファッキンキュートだな。あいつらは小さなタバコみてぇだな。お前なんかスモークしてやる。それか蒸し焼きにしてやる!」
なんちゅう歌詞や。そしてなんちゅう曲やねん。
まったく何のジャンルかわからないけど、1つだけ言えるのはこの曲、間違いなく激アツすぎやろ。「好きなものを全部詰め込んでやりたいことやってまんねん」て感じの最高に自由なサウンドに問答無用でブチあがってしまうのが100 gecsの楽曲なのだ。
メンバーのディランとロウラは2人ともミズーリ州セントルイス出身。音楽・カルチャー情報サイト「Fader」とオーディオ機器メーカー「Scullcandy」が運営するポッドキャストでのインタビューによれば、学生時代からそれぞれビートメイカーやシンガーソングライターとして活動していた2人は高校生だった2012年に共通の友達のハウスパーティーで知り合ったよう。だけどそこからはしばらくは別々で音楽活動をしていたんだって。ちなみにディランは元々聖歌隊出身で、音楽活動を始めた頃はブーンバップ・ビート的なものを作ってたらしい。
高校卒業後、2人は大学に進学。ディランは地元で音楽活動を続け、ロウラはシカゴに引っ越すことになったのだけど、シカゴでの生活が合わずにセントルイスに戻ることになる。そこでロウラとディランと結成したのが100 gecsだ。そして2019年1月にリリースしたのが「1000 gecs」。エレクトロ、トラップ、ロック、パンク、その他ありとあらうるポップ・ミュージックの様々な要素がこれまでに経験したことのない化学反応を起こして生まれた規格外のサウンドで世界の音楽ヘッズの話題をかっさらうことになる。
そんなデュランとロウラはすでに次回作への準備を始めてる模様。ポップミュージック界に革命を起こす異次元の音楽を作り出す100 gecs。次回作も楽しみすぎるぜ!