パンチラインで観る映画『ベイビー・ドライバー』|ストリートヘッズのバイブル Vol.26

音楽ジャンキーな天才ドライバーが走り抜ける、音楽とアクションの華麗な融合映画。

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きならマストチェックの映画を、作中に登場するパンチラインを通して紹介していくよ!

今回取り上げるのは、『ベイビー・ドライバー』。
幼い頃の事故での耳の後遺症から、音楽がないと運転ができない天才ドライバー・ベイビーが主人公の映画だ。ベイビーが聴いている音楽と劇中のアクションがシンクロしている映像は、観ていて最高にアガること間違いなし。

多彩な音楽が流れる『ベイビー・ドライバー』から、君のマインドをインスパイアする“パンチライン”を紹介していくよ!

『ベイビー・ドライバー』ってどんな映画?

主人公のベイビーは、天才的なドライブテクニックを持ち、犯罪組織の「逃し屋」として強盗の片棒を担いでいた。彼は幼い頃の事故によって耳に後遺症を負っていて、耳鳴りを消すためにいつでもどこでも音楽を聴いている音楽中毒でもある。さらに人との会話を録音して、それをリミックスして音源を作ることを楽しみにしているほど、音楽に救われていた。

過去の負債を返すために仕方なく逃し屋をしているベイビーは、恋人のデボラのために、この業界から足を洗うことを決意する。だが、犯罪組織のボスであるドクは、犯罪者を絶対逃がすことができるベイビーをやすやすと手放すわけがない。果たしてベイビーは犯罪組織から抜け出すことができるのか。

自分は誰のために車を走らせるのか、その選択を迫られることになる。

『ベイビー・ドライバー』のパンチライン

常にサングラスをかけイヤホンを付けているベイビーは、現実と距離を置いて無口を貫いている。そんな彼が人と繋がるきっかけも、また音楽だった。
音楽を通して、周りがベイビーが語りかけたパンチラインを3つ紹介するよ!

①「“ベイビー”の曲はなくならい」

幼い頃に交通事故で両親を亡くしたベイビーは、母親がかつて働いていたダイナーによく客として訪れていた。そこで出会ったのが、ウェイトレスとして働く音楽好きのデボラだった。

「逃し屋」の仕事で負債を完済し、自由になった(と思い込んでいた)ベイビーは、清々しい気持ちでデボラに会いにダイナーへと向かった。良い感じの雰囲気で打ち解けるデボラとベイビー。お互いに自己紹介して、ここで初めて名前を知ることに。ベイビーは、自分が知っている“デボラ”という歌を挙げ、それに応えるようにデボラが歌う。

もうひとつデボラの歌があると、今度はベイビーが歌ってみせるイチャイチャっぷり。お互いの心の距離がグッと縮まった様子だ。
さらにベイビーという名前を知ったデボラが、嬉しそうに伝えたパンチラインがこちら。

Every damn song is about you.

We could drive back and forth

across the States forever

and never run out of “ Baby “ songs.

それじゃ全部があなたの歌だわ

アメリカを横断して戻っても

“ベイビー”の曲はなくならいわ

ロマンチックすぎやしないか…!
いますぐふたりでドライブに行ってほしいくらい。

これに対してベイビーは「But we might run out of gas, though.(でもガスはなくなるかもね)」と粋な返し。

音楽好きだという共通点があったからこそ、できた特別な会話だった。
さらにベイビーは、歌を歌ってみせるデボラに、シンガーだった母親を重ね合わせていたのかもしれない。これをきっかけに、ふたりは一気に仲を深めていく。

そしてベイビーは、デボラのためにもまっとうな仕事につこうとするのだが…。

②「曲は終わりだ。でも“音楽”とは向き合わないとな」

デボラとの楽しい日々を過ごしたのも束の間、犯罪組織のボスであるドクの手からは逃げられないと知ったベイビー。
里親で耳が不自由なジョーやデボラの存在も隈なく調べられていて、ふたりを守るためにまた逃し屋としての仕事を受けることになる。

郵便局襲撃を狙った今回のメンバーは、バディとその恋人であるダーリン、そしてバッツだった。ベイビーは強盗の片棒を担いでいるものの、なるべく人を傷つけないように振舞っていたが、バッツはそれについて気に食わない様子で、常にベイビーにイチャモンをつけてチームの輪を乱すやっかいな存在だった。

襲撃当日、郵便局を襲ったバッツが目の前で警察官を殺したのを見たベイビーは、何かが切れたように暴走し、バッツを自分の運転によって殺してしまう。
それをきっかけに、大勢の警察に追われることになったベイビーたちは、逃亡の最中に銃撃戦となり、ダーリンが死んでしまう。

愛する恋人を失ったバディは、その原因をつくったベイビーに復讐するため、逃亡中にデボラがいるダイナーで彼を待ち構えていた。デボラと逃げるためにダイナーにやってきたベイビーは、バディと対峙することになる。

いつでもデボラを殺せると銃をチラつかせ、ベイビーを隣に座らせたバディは、彼のイヤホンを片方とり一緒に音楽を聴く。「Never Gonna Give You Up」という曲の「I’m never, ever gonna quit ‘cause quitting just ain’t my stick(僕は決して諦めない)」を口ずさみ、イヤホンをとる。
そしてベイビーに向かって放ったパンチラインがこちら。

Song is over, Baby.

But I’m afraid you still have to face the music.

曲は終わりだ。

でも“音楽”とは向き合わないとな。

復讐の宣戦布告だ…!!
「Never Gonna Give You Up」は絶対に君を諦めないと、愛する人を歌ったラブソング。ダーリンを失ったバディの愛は行き場を失い、それはベイビーへの憎しみに変わった。
その気持ちを歌詞に乗せて、お前に絶対復讐してやるぞと誓ったんだ。

さらにセリフにあるface the musicには「自分が招いた好ましくない結果をいさぎよく受け入れる」っていう意味があるから、音楽という言葉に宣戦布告の意味もこめた渋いセリフになっている。

ベイビーは一瞬できた隙を狙ってバディを撃ち、デボラを連れて車で逃走をはかることに。

③「お前はドライバーだ。あと25年は走り続けれられる」

実は郵便局襲撃の前、会話を録音して音楽を作っていることがバレたベイビーは、カセットテープを奪われ、スパイではないかとドクをはじめとする仲間たちに尋問を受けていた。なんとしてもデボラを守りたいベイビーは絶対にドライバーを全うすると宣言し、襲撃に向かっていたんだ。

デボラと逃げていたベイビーは、カセットテープを取り戻すために犯罪組織のアジトにやってきた。その中には、母親が歌っている大切なカセットテープもあるからだ。
アジトにいたドクに助けを求めるが、彼はベイビーのせいで計画が台無しになったし、もやは無関係であると切り捨てる。

だが、ベイビーに駆け寄るデボラの姿を見たドクの態度は一変。ふたりを助けるために、地下まで送り届けることに。そしてエレベーターの中で、逃げることは難しいと伝える。
だがいいニュースがあると、ふたりに放ったパンチラインがこちら。

The good news is you like driving,

because you can’t take your foot off the gas for the next 25 years.

This should be enough to get you across the border.

From there, it’s on you.

Don’t trust anyone but each other,

and don’t ever look back.

お前はドライバーだ

あと25年は走り続けれられる

(カセットテープを渡しながら)これで国境を越えるんだ

お互いを信じて前へ進め

ドライバーであるベイビーの腕を一番買っていたのは、ドクだった。
「昔を思い出した」と言うドク。実は彼も、愛する人のために命を懸けたことがあったようだ。だから昔の自分の姿に重なるベイビーを、助けることに決めたんだ。
もうこれは、カセットテープの歌をずっと聴きながら、どうにか逃げ切ってほしい。

ドクの想いを受け取ったふたりが、無事に逃げ切ることができたのかはぜひ映画を観てほしい。そして全編にわたって散りばめられた、音楽に対するリスペクトも受け取ってみて。

 

画像出典元:ソニー・ピクチャーズ

配信先:Netflix