パンチラインで観る映画『トレインスポッティング』|ストリートヘッズのバイブル Vol.25

ヘロイン中毒者の若者たちを描いた、最悪で最高な青春劇。

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きならマストチェックの映画を、作中に登場するパンチラインを通して紹介していくよ!

今回取り上げるのは、『トレインスポッティング』。
スコットランドのヘロイン中毒者の若者たちが登場するこの映画は、ドラッグの恐ろしさと若者特有の人生に対する絶望や焦燥感を、ポップに描き出している。ヤク中のみならず、時間だけが無意味に過ぎる現実逃避を経験したことがある人なら、共感するところが多いはず。

今回は『トレインスポッティング』から、君のマインドをインスパイアする“パンチライン”を見ていくよ!

『トレインスポッティング』ってどんな映画?

スコットランドに住む主人公のレントンは、重度のヘロイン中毒者。人生を無意味なものとして捉え、嫌な現実から逃れるためにヘロインを打ちまくっていた。

このままではいけないという焦燥感に駆られるたびにクスリ断ちを試みるも、禁断症状の苦しみから解放されるために、またヘロインに手を染めてしまう日々。

果たしてレントンはヘロインから足を洗い、普通の生活を手に入れることができるのか。人生とは選択の連続の結果であると突きつけてくる映画だ。

『トレインスポッティング』のパンチライン

クソみたいな生活の中でヘロインに溺れ、もがき苦しみながら生きているレントン。
辞める辞めるといいながら強烈な禁断症状から逃れるためにヘロインを打ち続けている彼の弱さは、人間誰でも身に覚えのあるものだ。

そんな愛すべき(?)キャラクターであるレントンが放つパンチラインを3つ紹介していくよ!

①「俺は人生を選ばないことを選んだ」

物語はレントンのナレーションから幕をあける。

「人生で何を選ぶ?」と問う彼は、豊かな人生を送る人たちが持つ代表的なモノとして、家族/マイ・ホーム/健康/洗濯機/車/友達を次々と挙げていく。まるで、それを選ぶ人生はつまらないものだという風に。

思いつく限りを挙げたのちに、彼がかましたパンチラインがこちら。

But why would I want to do a thing like that?

I chose not to choose life.

I chose something else. And the reasons?

There are no reasons.

Who needs reasons

when you’ve got heroin?

だが俺はごめんだ。

俺は人生を選ばないことを選んだ。

理由か?理由なんてない。

ヘロインを打つ時に理由なんているか?

まごう事なきヘロイン中毒者だ…!
せこせことくだらないもののために頑張るよりも、ヘロインがもたらしてくれる一瞬の快楽を選んでいるレントン。

この宣言どおり、彼は仲間と一緒にヘロインを打ちまくっている。ここまで来るといっそ潔いくらいだ。

でも、ヘロインだからダメみたいになっているけど、ギャンブルだったり携帯ゲームだったりSNSだったり、みんなそれぞれつらい現実から逃れるために、依存しているものって何かしらあるよね…。

②「そんなクソだめで新鮮な空気を吸って何になる?」

ある朝、レントンは腐れ縁の悪友、トミー、スパッド、シック・ボーイと一緒にスタンドバイミーさながら線路を辿って自然豊かな山に向かって歩いていた。その理由は前夜の出来事がきっかけだった。

何度目かのクスリ断ちに挑戦中のレントンは、自分に足りないものを探すために仲間と一緒にクラブに来ていた。そこで一目惚れしたダイアンと一夜を共に過ごすも、彼女が学生だということが判明。犯罪者にはなりたくないと、距離をおこうとするも逆に脅される始末。

スパッドは彼女に散々おあずけをくらっていたセックスチャンスを得るが、泥酔していたため実現せず。あげくの果てに彼女の実家のベッドで脱糞し、そのシーツを家族団欒の食卓にぶちまけてしまった。

トミーは彼女とのハメ撮りビデオを観ながらことに及ぼうとするも、ビデオを紛失していたことが発覚し、彼女と大げんかに発展。
そんなわけで最悪な夜を過ごした男たちは、ヤケクソになったトミーに連れられて大自然を目指していたのだ。

だけど言い出しっぺのトミー以外のみんなは渋々といった様子。自然豊かなこの国を誇れというトミーに対して、イライラしていたレントンは「こんな国くそったれだ!」とブチ切れる。みんながバカにしているイングランドに占領された、どうしようもなく落ちぶれた国だと。

溜まっていた怒りを吐き出すように、レントンが放ったパンチラインがこちら。

It’s a shite state of affairs to be in,Tommy.

And all the fresh air in the world

won’t make any fucking difference.

そんなクソだめで

新鮮な空気を吸って何になる?

侵略された歴史を持つスコットランドに対する、鬱屈した想いが爆発している。
国全体にあふれる、どうしようもない空気感ってあるよね。
だから新鮮な空気を吸ったところで、クソみたいな現実は変わらないんだ。

クスリ断ちが続いていたレントンだったけど、“健全な選択”としてまたもやヘロインに溺れていく。
ヘロインだけが嫌な現実から逃がしてくれるってわけだ。

③「楽しみだ。あんたと同じ人生さ」

ヘロインに溺れるレントンの現実は、最悪に最悪を重ねていた。
クスリ仲間の溜まり場になっていた家の赤ん坊の死。ヘロインの注射器からエイズに感染したトミーの存在。万引きでも逮捕され、家族にも散々迷惑をかけたレントンは、いよいよヘロインを断ち不動産への就職を果たした。

だけど悪友たちとの縁がスッパリ切れるかといったら、そう簡単にはいかない。武装強盗で指名手配されたアルコール中毒のベグビーと、ポン引きになったシック・ボーイが家に転がり込んできた。ふたりを追い出すために、会社で管理している部屋に勝手に住まわせるも、会社にバレてクビになってしまう。

ある日、麻薬売買のうまい話があると、ベグビー、シック・ボーイ、スパッドにそそのかされたレントンは、これが最後だと引き受ける。取引で足元をみられたものの大金を手にした四人は祝杯をあげるが、レントンは大金が入ったバッグから目が離せない。

ホテルでみんなが寝ているすきに、売上金が入ったバッグを持ち逃げしたレントン。物語のラスト、これを機に俺は変わると笑みを浮かべながら歩くレントンが言ったパンチラインはこちら。

I’m looking forward to it already.

I’m going to be just like you.

楽しみだ。

あんたと同じ人生さ。

いきなりこっちに向かってぶっこんできた。
悪友との縁を断ち切って、豊かな人生をレントンは選んだんだ。仕事をして、家族と暮らし、マイホームを建てて、日曜大工に励む平穏な人生を。

足を洗ってカタギの生活をすると息巻いているけど、今度こそ本当にクソみたいな生活から抜け出すことができるのか…。

この物語の20年後を描いた続編『T2 トレインスポッティング』があるから、それも観るしかないね。

画像出典元:アスミック・エース

配信先:U-next