パンチラインで観る映画『スラムドッグ$ミリオネア』|ストリートヘッズのバイブル Vol.24

天才か?インチキか?波乱万丈な人生を歩んだ、スラム育ちの青年の一発逆転劇。

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?

「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きならマストチェックの映画を、作中に登場するパンチラインを通して紹介していくよ!今回取り上げるのは、『スラムドッグ$ミリオネア』。

スラム育ちの青年ジャマールが、一攫千金を狙うクイズ番組に出演する物語だ。金なし、学なし、権力なしの青年が、過酷な人生の中でたくましく生きてきた姿を、過去と現在の交差を通して描いている。スラム出身者に対する偏見やインドの悲惨な現実もくまなく反映されている映画だ。

今回は『スラムドッグ$ミリオネア』から、君のマインドをインスパイアする“パンチライン”を見ていくよ!

『スラムドッグ$ミリオネア』ってどんな映画?

クイズに正解していくと、大金を手にすることができる番組「クイズ$ミリオネア」に出演したスラム育ちの青年ジャマール。彼はろくな教育を受けていないはずなのに、どんどんクイズに正解し、史上最高額である2000万ルピーに挑戦できる最終問題までたどり着いた。

大学教授や医者という高学歴者が挑戦しても1万6000ルピー止まりなこのクイズ番組。スラム出身という理由で彼は不正を疑われ、次の日の最終問題を目前に警察に捕まり拷問を受ける。コールセンターのお茶汲みをしていた彼が、なぜ最終問題までたどり着くことができたのか。

答えを知っていたからだというジャマールは、警察の尋問を通して自身の人生を振り返っていく。

『スラムドッグ$ミリオネア』のパンチライン

クイズ$ミリオネアで出題される問題は、不思議なことにジャマールが歩んでいた人生とリンクしていた。波乱万丈な暮らしの中で、ジャマールはひたすら必死に生きてきたからこそ、最終問題までたどり着いたんだ。

学はないけど信念と行動力でのしあがってきた彼のパンチラインを3つ紹介していくよ!

①「だから天才でなくてもいいんだ」

不正を疑われたジャマールは、尋問を担当する警部と一緒に彼が出演したクイズ$ミリオネアの録画を見返していた。第1問目は「1973年のヒット映画「鎖」の主演俳優は?」というお題。

ジャマールは幼い頃から貧しく、兄と一緒に自分たちの街の野外トイレを管理することでお金を稼いでいた。ところがある日、ジャマールはトイレで用を足していたために客をひとり逃してしまい、怒った兄にトイレに閉じ込められてしまった。

トイレで途方に暮れるジャマールだったが、外から聞こえてくる人々の声に耳を澄ますと、なんとジャマールが大好きなインドの俳優がヘリで街に降り立ったらしいと気がつく。

どうしてもその俳優に会いたかったジャマールは便器から糞溜めにダイブし脱出。恐ろしいほどの執念で、糞まみれになりながらも、彼に無事サインをもらうことができた。その俳優というのが、第1問の答えであるアミタ―ブ・バッチャンだったんだ。

答えを知っていた経緯を説明しながら「天才でなくてもいいんだ」というジャマール。そして「俺にも答えがわかった」というジャマールを拷問していた警官に対して、彼が放ったパンチラインがこちら。

Like I said, don’t have to be a genius.

だから天才でなくてもいいんだ

言ってやった〜!!
この警官は速攻でジャマールに飛びかかっていたけど、図星だったからだよね。

天才か、はたまたインチキかと疑われていたジャマールも、他の人と同じ凡人ってわけだ。それをすんなり信じるほど警部も甘くはなく、取り調べは続いていく。

②「これが本当のインドの姿です」

つらい思い出を掘り起こしながら、順調にクイズに正解していくジャマール。第5問目は「アメリカ合衆国の100ドル紙幣に肖像が描かれている人物は?」という問題だった。

ヒンドゥー教の過激派に襲われ毋と家を失い、身寄りのない子供に物乞いをさせてお金を稼ぐ卑劣なギャングからも逃げ、ジャマールと兄は列車を乗り継ぎながらタージマハルにたどり着いた。

そこには大勢の観光客がいたため、観光ガイドとして生計を立てていくことに。ある日、金持ちのアメリカ人夫妻をガンジス川に案内していたジャマールだったが、その間にアメリカ人が乗っていた車のタイヤを地元の子供たちに盗まれてしまう。

ジャマールが仲間に指示して、車を離れた隙にタイヤを盗ませたと勘繰った運転手は、彼をボコボコに殴る。見かねた夫妻がジャマールをかばった時に、彼が発したパンチラインがこちら。

You wanted to see a bit of real

India, here it is.

これが本当のインドの姿です

めちゃくちゃだ〜〜!
タージマハルとかの綺麗な観光地じゃなく、おそらくインドの生の生活を見たいとガンジス川にやってきた夫妻。でもそこには、現地の人々の暮らしを「観光」として消費する特権階級的な意識もあったはず。

そんな生半可な観光では得られない現実がここにあるという、ジャマールの主張だ。
殴られた慰謝料代わりに、夫妻に100ドルのチップをもらった彼は、その経験のおかげで第5問目にも正解することができた。

警部が1000ルピーの紙幣札に描かれている人物を問うと、ジャマールは知らないという。貧乏だったジャマールは、1000ルピーという紙幣を手にしたことがなかったからだ。

ちなみに答えはインド独立の父、ガンジーだ。

③「愛がある」

ジャマールには忘れられない女性がいた。母と家を失った後に出会い、タージマハルに行くまでを共に過ごしたラティカだった。何度もラティカを救おうとしたが、そのたびにふたりは離れ離れになっていた。

兄とも別れ数年が経ったのち、ジャマールはコールセンターのお茶汲みの仕事をしていた。たまたま兄の電話番号をつきとめた彼は、兄と再会することに。

兄はかつてジャマール達が暮らしていた街を牛耳っていたジャヴェドの組織の一員となっていた。しかもそのジャヴェドの家にラティカがいたんだ。

偽コックとしてその家にやってきたジャマールは、ラティカと熱い抱擁をかわす。そしてジャヴェドのラティカに対する仕打ちをみたジャマールは、駆け落ちしようと提案する。「どうやって生きていくの?」と言うラティカに対して、ジャマールが誠実に答えたパンチラインがこちら。

Love.

Come away with me… now.

愛がある。

僕と来るんだ。今すぐに。

とんだ純愛…!
お金もないし、力もないけど、愛があればどうにかなるとまっすぐラティカの目をみつめるジャマール。

敵に邪魔をされて駆け落ちは叶わなかったけど、ラティカが見ているかもしれないからと、彼はクイズ$ミリオネアに出演したんだ。

ジャマールは本当にインチキをしていたのか? 果たして最終問題に正解して億万長者となることができるのか? 彼が辿った奇妙な運命を、ぜひ映画で目撃してほしい。

 

画像出典元:ギャガ・コミュニケーションズ

配信先:U-next

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