パンチラインで観る映画『イングロリアス・バスターズ』|ストリートヘッズのバイブル Vol.23

ナチスの一網打尽を誓ったユダヤ人による、歴史改変復讐劇。

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きならマストチェックの映画を、作中に登場するパンチラインを通して紹介していくよ!

今回取り上げるのは、クエンティン・タランティーノ監督の『イングロリアス・バスターズ』。
史実のパラレルワールドを豪快に描いたこの映画は、家族を惨殺されたユダヤ人の少女や、ナチ殺しに執着するアルド中尉(ブラッド・ピット)率いる英米連合軍バスターズが、ナチス根絶を企てる物語。「もしもヒトラーが殺されていたら」という実際の歴史にはない物語を、フィクションならではのハチャメチャさで描き切っている。

今回は『イングロリアス・バスターズ』から、君のマインドをインスパイアする“パンチライン”を見ていくよ!

『イングロリアス・バスターズ』ってどんな映画?

舞台はナチス占領下のフランス。ナチス・ドイツ軍に家族を惨殺されたユダヤ人のショシャナは、数年の時を経て自身が運営する映画館でのナチス復讐計画を企てていた。一方、ナチス・ドイツ軍の兵士を殺しては頭皮を剥ぐ残忍な英米連合軍「バスターズ」も、ショシャナとおなじ目的を持っていた。

奇しくもヒトラーを含むナチスの高官たちが集う、ドイツのプロパカンダ映画のプレミアム上映会をショシャナの映画館でおこなうことに。ナチスを一網打尽する良い機会だと、バスターズなどの登場人物たちが、その映画館へと集うことになる。

歴史上ではありえなかった、ユダヤ人によるナチスへの復讐劇を痛快に描いた映画だ。

『イングロリアス・バスターズ』のパンチライン

この物語には、ひと癖もふた癖もあるキャラクターがたくさん登場する。ナチス根絶という目的のためには手段を選ばない彼らは、ぶっとびながらも己の任務遂行のために奮闘していく。

そんな彼らが、ナチスに相対した時のパンチラインを3つ紹介していくよ!

①「上達に必要なものは何だ?」

ナチス・ドイツ軍を手当たり次第殺しまくる集団として、ナチスに恐れられていたバスターズ。リーダーであるアルド中尉のナチス嫌いは筋金入りで、殺したナチス・ドイツ軍兵士の頭の皮を剥いではそれを戦果としていた。

運悪くバスターズに遭遇したナチス親衛隊のブッツニは、味方が隠れている場所を教えることを条件に逃がしてもらえることに。でも、アルド中尉がナチスをタダで逃がすわけがない。バスターズの恐ろしさをナチスに見せつけるために、ブッツニの額にナチスのシンボルマークである「卐」をナイフで彫る。

その「卐」マークの完成度を部下に褒められたアルド中尉が言った、狂ったパンチラインがこちら。

You know how you get to

Carnegie Hall, don’t you?

Practice.

上達に必要なものは何だ?練習だよ。

やばいやつがいる〜〜!!
いったい何人の額にこの印をつけてきたんだろう。爪を剥がす拷問でも、慣れるほど爪を綺麗に剥がせるって聞くけど、いやな上達だよね笑

このセリフは直訳すると「カーネギー・ホールに辿り着く方法を知ってるか?練習だよ」になるんだけど、直訳にあるカーネギー・ホールとは、NYにある世界でもっとも名高いコンサートホールのひとつ。

そんな高尚なコンサートホールとナチの額に綺麗に「卐」を刻むことを同列に語っているのが、悪趣味だけどイカしている。

アルド中尉が「卐」を彫るのは、ナチの軍服を脱いでもナチだとわかる目印をつけるためでもあるから、どれだけナチを憎んでいるのかがわかるよね。

②「良いスコッチが分からん連中は地獄行きだ」

キャラクター同士の緊迫した会話劇も、この映画の魅力。
ナチスの高官たちが集まるというプレミアム上映会の噂を聞きつけたイギリス軍は、ドイツ語が得意なヒコックス中尉(マイケル・ファスベンダー)に、バスターズとともに映画館を爆破する計画を伝える。

その作戦の鍵になるのがドイツの有名女優であるハマーシュマルク。ドイツ人でありながらイギリス軍に協力する彼女と接触するために、ヒコックス中尉はドイツの地下にあるバーに出向くことに。

ナチスはいない場所だと聞いていたが、なんとナチス・ドイツ軍の兵士たちがある兵士の子供の誕生を祝う祝杯をあげていた。しかもひょんなことから、上官である少佐と同じテーブルで飲むことに。

ヒコックス中尉たちがドイツ人ではないのではないかと怪しむ少佐。なまりに対する指摘をかわして難を逃れたかに思えたけど、少佐はヒコックス中尉に銃を向ける。

銃撃戦は免れないと思ったヒコックス中尉が、少佐が注いでくれた年代物のスコッチを飲みながら言ったパンチラインがこちら。

There’s a special rung in hell reserved

for people who waste good Scotch.

Seeing as I may be rapping

on the door momentarily,

良いスコッチが分からん連中は地獄行きだ。

私はじき天国の扉を叩く。

なんだこの洒落た最期の言葉は…。
なんでヒコックス中尉がドイツ人ではないとわかったかというと、スコッチ3杯を示す「3」のハンドサインが原因だった。

言語の習得はできても、何気なくしみこんだ生活の手振り身振りは、その土地に根をはった暮らしをしなければなかなか習得は難しい。
そんなことで!?で、命を落としてしまうのが戦争の怖いところ。

このあとお互いのタマを撃ち合ったことをきっかけに、案の定銃撃戦へ。(めちゃくちゃ痛そう…)

③「お前たちを殺すユダヤ人の顔をよく見るがいい」

ショシャナが計画したナチス復讐作戦とは、観客が逃げられないよう映画館を締め切ったあとで可燃性が高いフィルムを燃やし、全員焼き殺すことだった。

物語のクライマックス。ショシャナの映画館にはヒトラーも訪れ、300人以上のナチス関係者が集結していた。この日のために復讐作戦の準備をしてきたショシャナは、真っ赤なドレスで客を迎え入れる。

ナチス・ドイツ軍の狙撃兵の活躍を描いたプロパカンダ映画に興奮する一同。しかし、突然スクリーンに映る絵がショシャナの顔のどアップに変わり「ドイツにメッセージを」と告げる。

突然の状況に騒然とする観客にむかって、ショシャナが放ったパンチラインがこちら。

That you are all going to die.

And I want you to look deep into the

face of the Jew who’s going to do it!

お前たちは全員死ぬ。

お前たちを殺すユダヤ人の顔をよく見るがいい。

華麗なる逆転復讐…!
かつてガス室にぎゅうぎゅうに押し込められて虐殺されたユダヤ人のように、ナチスの重要人物たちを映画館という密室で焼き殺すことに成功したショシャナ。すべてが燃えて爆発するさまは、痛快そのものだ。

ここまで3人の登場人物について紹介したけど、この映画で一番存在が際立っていたのは、クリストフ・ヴァルツが演じるランダ大佐だ。
彼はこの映画でタランティーノに発掘され、世界的に有名となった俳優。
出演するシーンすべてにおいて存在感が圧倒的すぎるから、ぜひ映画でランダ大佐の魅力も堪能してほしい。

 

画像出典元:ユニバーサル・ピクチャーズ

配信先:U-next