映画 『バーバーショップ』を観るべき5つの理由|ストリートヘッズのバイブル Vol.66

アイス・キューブ主演! 黒人街の床屋でのドタバタコメディ。

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。

今回取り上げるのは映画『バーバーショップ』。シカゴの黒人街の床屋のある1日を描いた群像劇だ。

『バーバーショップ』ってどんな映画?

 

シカゴの黒人街にある床屋“バーバーショップ”を亡き父から受け継いだカルビン。個性豊かな従業員たちがいる賑やかな床屋は、街の人たちの憩いの場だった。しかし、経営の悪化からカルビンは店を手放そうとして…。

『バーバーショップ』を観るべき5つの理由

①黒人街をリアルに描いた映画

アフリカン・アメリカンの人々にとって髪を整えてくれる床屋は生活とすごく近い存在。髪を整える目的だけではなく、交流のための社交場だ。『バーバーショップ』ではそんな下町の床屋を舞台にした人間模様が描かれている。

街の噂話やたわいもない話があーだこーだ交わされる中でも持ち上がるのは、公民権運動やロス暴動などの話題。古株従業員のエディは、バスで白人に席を譲らなかった「公民権運動の母」ローザ・パークスを「ただ席を立たなかっただけ」と言ったり、ロス暴動のきっかけになった白人警察官に暴行されたロドニー・キングの事件で「酔っていたあいつが悪い!」とばっさり切ったりと、自分の持論を好き勝手しゃべっている。

もちろん反論する者も出てくるが、エディは「なんでも喋れるのがバーバーショップだろ」と抵抗。ローザ・パークスやキング牧師をくさすシーンは、公民権活動家からひどく批判を受けたそうだが、この時代には街中でリアルに交わされていたかもしれない話題だ。バーバーショップでは言論の自由が守られていて、だからこそ人々はくつろぎながら交流することができる。まるで自分がその場にいるような臨場感をもって、バーバーショップでのリアルを知ることができるよ。

②ヒップホップとR&Bの名曲ぞろい!

全編にわたって流れるヒップホップやR&Bなどの音楽にも注目。冒頭で流れるのはFabolous, P. Diddy & Jagged Edgeの『Trade It All (Part 2) 』。このPVには、バーバーショップのメインキャラも出演していて、物語とリンクしているのもおもしろい。

 

店内のBGMでEPMDの『You Gots to Chill』が鳴ると、理髪師も客も首をガンガン振り始める。それがめちゃくちゃかっこいいし、これもアメリカの床屋では日常の風景なのかも!?

夕方頃にマーヴィン・ゲイの名曲『Got To GIVE It UP』がラジオから流れると、良いやつも悪いやつもみんな踊り出すシーンは最高。音楽だけでも楽しめる映画だよ。

③古きよきものを尊ぶ心

この映画では、長年築いてきた歴史を受け継いでいくことの大切さが描かれている。

カルビンの父の時代からの従業員、古株エディはロクに接客もせずにダベってばかり。でも剃刀を手にするとその技術はピカイチで、未熟な従業員に代わって客の髭剃りをしながら「尊敬されたきゃ力をつけろ」と、口だけは立派な若者に対して喝を入れる。

古い人間が築き上げた良いものを、ドブに捨てることはするなと説くエディだが、その姿勢はカルビンの父から教わったものだ。カルビンの祖父の時代から始まったバーバーショップで、カルビンの父は利益度外視で客を受け入れ、チンピラでも理髪師として雇い一人前へと育てあげていた。

髪を整えてもらえる場所として、誰でも受け入れてもらえる場所として、バーバーショップは街の人の生活に欠かせない場所になっていったんだ。

利益や効率を重視していたら、決して得られなかったみんなの場所。そんな店を果たしてカルビンは手放してしまうのか…? 人間にとって本当に大切なものは何かを教えてくれる映画だ。

④アフリカ系アメリカ人スターが集結!

『バーバーショップ』の個性豊かなキャラクターたちを演じているのは、アフリカ系アメリカ人のスターたち。

街の憩いの場を守る床屋の店主にふさわしい風格をもって演じたアイス・キューブをはじめ、ドジでマヌケな強盗を茶目っ気たっぷりに演じたコメディ俳優アンソニー・アンダーソン、映画に深みをもたらした古株エディを演じたセドリック・ジ・エンターテイナーなどが出演。さらに当時デビューして間もないラッパーのEveも、バーバーショップの理髪師の紅一点として出演している。

その他の俳優たちも、負けず劣らずの存在感で映画を盛り上げていた。気になる俳優さんがいたらぜひチェックして観てみてね。

⑤全米大ヒットシリーズへ!

全米で大ヒットしたこの作品、実は日本では未公開。アフリカ系アメリカ人の歴史を知らないと楽しめないシーンも多いから、当時の日本では合わないと判断されたのかもしれない。でも歴史を知らなくても群像劇として十分楽しめるし、陽気なキャラクターたちの生きた会話や流れる音楽は、間違いなく君のバイブスをあげてくれるよ。

シリーズとして3作まで制作されている『バーバーショップ』。あったかい気持ちになれるコメディが観たいなって時にぴったりだから、ぜひチェックしてみて!

 

画像出典元:20世紀スタジオ

配信先:AmazonPrime