WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」。Vol.386の今回はWu-Tang Clan(ウータン・クラン)来日記念特集。 2026年5月24日に開催されるウータン最後の来日ツアー「Wu-Tang Forever: The Final Chamber」を記念して、ヒップホップ史上における最強のラップクルーのリリックを彼らの1stアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』の収録曲から紹介していくよ!
まずチェックするのはウータン・クランを生み出した男・RZA(レザ)。ニューヨーク・スタッテン・アイランドの荒くれ者たちをまとめあげ、ヒップホップ史上最強のラッパー集団を作り上げた稀代のプロデューサーのリリックを『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』収録の「Wu-Tang Clan Ain’t Nuthing ta Fuck Wit」からチェックしてみよう!
「Wu-Tang Clan Ain’t Nuthing ta Fuck Wit」
I be tossin’, enforcin’, my style is awesome
かましてく、力でねじ伏せていく、オレのスタイルはヤバいぜI’m causin’ more family feud than Richard Dawson
家族間の確執を起こしている、リチャード・ドーソンよりもなAnd the survey said, “You’re dead!”
調査結果が言ってると、“お前はもう死んでいる”ってなFatal Flying Guillotine chops off your fuckin’ head
フェイタル・フライング・ギロチンがお前の頭を切り落とすぜ
“family feud”は「家族間の確執」という意味。実はこれ、アメリカの人気テレビ番組『Family Feud』のタイトルでもあり、リチャード・ドーソンはそのMCの名前だ。番組では、2つの家族が賞金や景品を獲得するために、クイズで激しく競いあう企画が人気。つまりレザの過激なラップスタイルはシーンに動乱を巻き起こすということを示唆してるって感じだね。“the survey said(調査によれば)”も 『Family Feud』内で使われている決め台詞なんだ。
”Fatal Flying Guillotine(フェイタル・フライング・ギロチン)”がレザが愛するカンフー映画からのサンプリング。1976年公開の香港映画『Master of the Flying Guillotine(邦題:片腕カンフー対空とぶギロチン)』が元ネタだ。なんとこの映画の中に、投げて、人の頭を切り落とすという空飛ぶギロチンという武器が出てくるのだ。つまりレザのハードなライミングはまるで空飛ぶギロチンみたくお前をやっつけちまうぜって言ってる感じだね。
続いては『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』の収録曲の中でも屈指の人気曲であり、90年代ヒップホップを代表するクラシック、「C.R.E.A.M.」から”シェフ”、Raekwon(レイクォン)のリリックをチェック!
「C.R.E.A.M.」
But it was just a dream for the teen who was a fiend
ただの夢だったんだよ、10代のヤク中にはStarted smokin’ woolies at 16
16でWooliesを吸い始めたAnd runnin’ up in gates and doin’ hits for high stakes
ゲートを走り抜け、一か八かぶっ込んでみるMakin’ my way on fire escapes
非常階段に逃げ道を作り出すNo question I would speed for cracks and weed
間違いねぇよ、オレはクラックやウィードを攻めたThe combination made my eyes bleed
その組み合わせはオレの目を血走らせたNo question I would flow off and try to get the dough all
間違いねぇよ、オレは現ナマをゲットするために飛び回ってたStickin’ up white boys in ball courts
バスケのコートで白人のガキ共から巻き上げたMy life got no better, same damn ‘Lo sweater
でも人生は良くならなかった、同じポロのセーターを着回してたTimes is rough and tough like leather
あの時代のラフさやタフさはまるでレザーFigured out I went the wrong route
オレは道を間違えていたって気づいたんだSo I got with a sick-ass clique and went all out
だからクソかっこいいクルーと一緒に抜け出してきたんだ
貧困の中で育ったレイクォンの少年時代の回想が聴く者の心を揺さぶるリリックだ。ブルックリンで生まれ、ニューヨーク・スタッテン島の貧困地域でタフな生活を送っていたレイクォン。そんな彼がゲトーから抜け出すために参加した“clique(クルー)”こそが後にヒップホップ史上最強のラップクルーとして音楽史にその名を刻む事になるウータン・クランだったんだ。
ラストはクルーきってのテクニカル・ラッパー、Inspectah Deck(インスペクタ・デック)のリリックを「Bring da Ruckus」からチェック!
「Bring da Ruckus」
I rip it, hardcore like porno-flick bitches
切り裂く、ハードコア、まるでポルノ映画のビッチたちI roll with groups of ghetto bastards with biscuits
ビスケットを持ったゲットーの連中とぶらつくCheck it, my method on the microphone’s bangin’
チェックしな、マイクを使いこなすオレのメソッドは超イケてるWu-Tang slang’ll leave your headpiece hangin’
ウータンのスラングがお前の頭をぶった斬るBust this, I’m kickin’ like Seagal: Out for Justice
ぶっぱなす、かましてくぜ、まるでスティーブン・セガールの「Out for Justice」The roughness, yes, the rudeness, ruckus
荒々しく、そう、無礼に、騒ぎを巻き起こすRedrum, I verbally assault with the tongue
レッドラム、オレはバーバルに舌を使って襲撃Murder One, my style shocks your knot like a stun gun
また一人ぶっ殺す、オレのスタイルがお前のノットに与える衝撃はまるでスタンガン
インスペクタ・デックのハードコアかつスキルフルなリリック。
彼の仲間たちは“ビスケット(リボルバー式の銃)”を持ってゲットーをぶらついてるが、インスペクタ・デックが持つのはマイクロフォン。彼の武器は銃ではなく、マイクの上で紡ぎ出される彼のラップの“メソッド”ってわけだね。そんなラップで使われてるウータンのスラング(リリック)は君の頭をぶった斬るレベルで切れ味抜群。
そして90年代のハリウッドを代表するアクション俳優、スティーブン・セガールのように敵対する連中をボッコボコにしていくインスペクタ・デックは次のライムでもかましまくり。
続いて登場する単語、“redrum”は“murder(人殺し)”を後ろから書いた言葉。1980年公開のサイコホラー映画「シャイニング」で出てきた言葉であり、映画内では主人公たちが扉に描かれた“redrum”という言葉を鏡で見て、初めて“murder(人殺し)”であると理解するというシーンがあるんだ。
このリリックが素晴らしいのは、このRedrumという言葉と対になる形で、次のラインでMurderという言葉を出しているところ。つまりリリック内で鏡文字を成立させてるんだ。まさに “verbally assault with the tongue(バーバルに舌を使って襲撃する)”という表現という言葉を体現するウルトラ・テクニカルな仕掛けだね。
そしてそんな半端ないリリックをかましてくるインスペクタ・デックのスタイルはヘイター達の “knot(ノット:スラングで「頭」という意味)” に、まるでスタンガンで一撃を食らわせたかのように衝撃を与えるってわけだ。
【歌詞出典元】Genius
*訳は全て意訳です。
こんなスラングも知ってる?
stack
札束、(札束を)積み上げる

hard
困難な、難しい、激しい

gotta
〜しなければいけない



