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WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.265の今回は1990年リリース特集・西海岸編。1990年にリリースされた楽曲を東海岸と西海岸に分け、その年のベスト曲をリリックと合わせてTAROが独断と偏見で選んで紹介するよ。
今回は1990年の西海岸のリリース曲の中から3曲をピックアップ!
一曲目はやはりこちら、ラップ史上最も危険なラップグループ、N.W.A(エヌ・ダブリュー・エー)の「100 Miles and Runnin 」からMC Ren(MC レン)のリリックをチェック!
N.W.A「100 Miles And Runnin’(1990)」
I didn’t stutter when I said “Fuck Tha Police”
‘Cause it’s hard for a nigga to get peace“Fuck Tha Police”と言った時、オレはどもらなかったぜ
なぜなら黒人が平和を手にするのは難しいからな
グループのスターだった、Ice Cubeアイス・キューブの離脱を経て、新生N.W.Aとして再出発したMC レン、Dr. Dre(ドクター・ドレー)、Eazy-E(イージー・E)、DJ Yella(DJ イェラ)の4人。そんな彼らが1990年にリリースしたのがこの「100 Miles and Runnin」だ。当時からアメリカで社会問題となっていた警察のアフリカン・アメリカンに対する理不尽な暴力や強引な捜査からの逃避がテーマの柱となっている一曲だね。
Funkadelic(ファンカデリック)の「Get Off YOur Ass and Jam」をサンプリングしたドレーの疾走感溢れるビートの上に乗るのは、まさにN.W.Aの代名詞と言える力強いリリシズム。
特に今回紹介するMCレンのリリックは秀逸だ。88年にリリースした警察批判の曲「Fuck Tha Police」を引き合いに出し、police(警察)とpeace(平和)という、日々警察からの理不尽な扱いに悩まされているアフリカ系アメリカ人の人々にとっては最も結びつかない単語でライミングしながら、いかにアフリカ系の人々が平穏な日々を送ることが難しいか’Cause it’s hard for a nigga to get peace(なぜなら黒人が平和を手にするのは難しいからな)という言葉で伝えているんだ。
続いてはこの人を西海岸側に入れることには納得できない人もいるかも…、しかし1990年と言えば、外すわけにはいかない。存在が大きな物議を呼んだ白人ラッパー、Vanilla Ice(ヴァニラ・アイス)の「 Ice Ice Baby 」!
Vanilla Ice「 Ice Ice Baby(1990) 」
Alright stop, collaborate and listen
Ice is back with the brand new invention
Something grabs a hold of me tightly
Flow like a harpoon daily and nightlyオーケー、立ち止まって、聞いてくれよな
ヴァニラ・アイスが新しい発明とともに帰ってきたぜ
ガッチリ掴んでるぜ
オレのフローならまるで錨のように、毎日、毎晩流れるぜ
彗星のごとく90年代のヒップホップシーンに舞い降りた、踊れる白人ラッパー、ヴァニラ・アイス。時代はまさにニュー・ジャック・スイングの全盛期であり、猫も杓子もロジャーラビットで飛び跳ねていた時に突如として登場した金髪を振り乱して軽快なステップを踏む白人青年のラップソングは、あれよあれよと言う間にビルボード・チャートを駆け上り、まさかのラップ史上初のビルボードシングルチャート・1位を獲得。凄まじい偉業を成し遂げる。
しかし、残念ながら漂うなんとも言えない軽薄さ(きっと悪いやつではないと思うのだが)からいたるところから総攻撃をくらい、トラックのパクリ、経歴詐称など怒涛のディスでフェイク・ラッパー扱いされ、あっという間にメインストリームから転落。その後はドラッグ中毒に苦しむなど散々な目に。後にエミネムなどにもリリックでいじられるなど、恐らく史上最もディスられたラッパーになってしまったアイスだが、ラップ史上初のビルボードシングルチャート1位を獲得し、ヒップホップの浸透に大きな貢献をしたことは事実。彼のおかげでニュージャックスイングのムーヴメントやラップというものに触れた人もいるはずだ。
「 Ice Ice Baby」の大ヒット以降、マドンナと付き合ったり、ドラッグ中毒になったり、まさに波乱万丈の人生を歩んだアイスは現在55歳。アーティストや俳優としてエンタメ業界で活動する傍ら、SNSにも力を入れており、インスタグラムのフォロワーは50万人以上、TikTokではなんと100万を超えるフォロワーを持ち、日々ライブ映像などを発信しているよ。
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.265、1990年リリース特集・西海岸編のラストを飾るのは、「そんなのウエッサイじゃねぇよ!」とのお声も頂きそうだが、あえてこちらを紹介したい。Digital Underground(デジタル・アンダーグラウンド)のパーティーチューン「The Humpty Dance」!
Digital Underground「The Humpty Dance(1990)」
I’ll drink up all the Hennessy you got on your shelf
So just let me introduce myself
My name is Humpty, pronounced with an, “Umpty”君が棚に置いてたヘネシーを飲み干す
ちょっと自己紹介させてくれ
オレの名前はハンプティ、アンプティって発音すんだぜ
こういう方向性があっても良いじゃないと思わせてくれる楽しいパーティーチューン。デジタル・アンダーグラウンドは1987年、リーダーであるShock G(ショック・G)を中心にカリフォルニア・オークランドで結成されたグループだ。 Sly and the Family StoneやParliamentなど主に70〜80年代のファンクをサンプリングした踊りやすいアップテンポなサウンドに、ショック・Gのオルター・エゴである”Humpty Hump(ハンプティ・ハンプ)がファンキーで楽しいラップをするスタイルで、人気を博した。初期には2Pac(トゥー・パック)も一時的にメンバー在籍しており、この「The Humpty Dance」のMVにも出演しているね。
当時のウエストコーストラップと言えば、N.W.AやCompton’s Most Wantedなどのいわゆるギャンスタ・ラップ・グループが全盛の中、あえて誰もが気軽に楽しめるテイストを押し出した「The Humpty Dance」はビルボード・ラップ・シングル・チャートで1位を獲得。ピースフルなヒップホップの方向性を提
【歌詞出典元】Genius
*訳は全て意訳です。