ヒップホップ好きイングリッシュティーチャーTAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」。先週に引き続き、先日26歳という若さでこの世を去ったMac Miller追悼特集の後編をお届けしたい。
前編ではマックの生い立ちやキャリア前半の作品を紹介した。後編ではメジャーデビューから亡くなるまでのキャリアを辿る。
ピッツバーグが生んだ偉大なアーティストと、彼が生んだ素晴らしい音楽に敬意を込めて。
スターダムへ
2011年、US音楽業界は一人の天才青年の登場に湧いていた。ピッツバーグ出身の当時19歳、マック・ミラーだ。前編で紹介したファーストアルバム「Blue Slide Park(2011)」がセールス第1週目に14万枚超のロケットスタートを記録。そのままビルボード1位を獲得したからだ。
これは快挙だった。
マック所属のレーベル「Rostrum Records」はインディペンデントレーベル(大手レコード会社系列ではない小規模のレコード会社)。インディペンデントレーベルから発売されたデビュー作品がビルボード1位を獲得したのはTha Dogg Poundの「Dogg Food」が1995年にDeath Row Recordsから発売されて以来のことだった。
そのままマックはミックステープ「Macadelic(2012)」をリリース。2012年には全米、ヨーロッパを回る「Macadelicツアー」を行う。これにより名実ともにスターラッパーの仲間入りをしたマック。否が応にも高まる周囲の期待の中で、マックが次にリリースしたのが名盤の呼び声が高いセカンドアルバム「 Watching Movies With The Sound Off(2013)」だ。追悼特集、後編の1曲目はその「 Watching Movies With The Sound Off(2013)」から、Flying Lotusのトラックがクソ気持ち良い名曲「S.D.S.」を紹介する。
①「S.D.S.(2013)」
I’m no God, I don’t think that I’m a human, though cause I’m so odd. People selling drugs cause they can’t find no job. Wonder if Christ made a million off selling the cross.
「オレは神じゃないけど、自分のことを人間とも思わない。人間にしたら、イカれすぎてるからな。みんなドラッグ売って金稼いでる。仕事が無いんだよ。その一方でキリストは十字架売ってがっぽり稼いでんじゃねぇの?」
エミネムは自らの事を「Rad God」と呼んだ。でもマックは自分の事を神だとは思わないらしい。でも人間だとも思わないんだって。確かに。人間にしては、” genius “ すぎるよ。
そして皆が仕事なくて、薬売ってる時に、キリストが十字架売って金稼いでるって?要は、宗教が「ビジネス」になりすぎだろて話。「十字架」はキリスト教のシンボル。本来は売ったり、買ったり、ビジネスに利用するものじゃないはず。でもそれを売って金にしてる奴多すぎじゃね?てこと。まさに”Jewish Buddhist consuming the views of Christianity(クリスチャンの視点を持ったユダヤ系仏教徒)”ならではのリリックだね。
さて、その後もマックは精力的に作品をリリース。ミックステープ「Faces(2014)」、サードアルバム「GO:OD AM(2015)」など毎回どんだけ曲作りの幅広いねん!とつっこみたくなるよう作品ばかりだ。着実にアーティストとしてのキャリアを積み重ねていく一方で、ドラッグへの依存については度々メディアに取り上げられた。
アリアナ・グランデ
そして、2016年夏。びっくりするようなニュースが飛び込んでくる。な、な、なんとあのAriana Grande(アリアナ・グランデ)とマックが付き合ってると…!!まさにヒップホップドリーム。ピッツバーグのヒップホップヘッズがおっぱいからロケット弾を出す世界的歌姫と付き合えるなんて(Break Free MV参照)!!あまりにもサクセスストーリーすぎるぜ…!まさにプライベートも絶好調なマック。そんなマックが出した4枚目のアルバムが「The Divine Feminine(2016)」だ。そこから次のパンチラインを振り返ろう。
②「Stay(2016)」
The way you walkin’ to the room, oh oh oh. All I think about is what I wanna do to you. I don’t wanna be polite no more. Make yourself at home, where the fuck you gon’ go?
「君が部屋にやってくる時の歩き方。僕が考えているのは君にしたいことばかり。もうお行儀良くするのは嫌なんだよ。まぁゆっくりしていけよ。おい、どこへ行くんだよ?」
お気づきのように、アリアナに向けて歌っている曲。「The Divine Feminine(2016)」ではこの他にもアリアナとのコラボ曲「My Favorite Part」が収録されていたり、マックのアリアナへの愛が込もったアルバムとなっている。さてそんなマックとアリアナだが、2018年に破局を迎える。出会いあれば、別れあり。その後、アリアナは新しいパートナーとの婚約を発表。2人は別々の道を辿ることになる。
ラスト・アルバム
アリアナと別れたマックは5枚目となるアルバム「Swimming(2018)」を発表する。まさかこれがラストアルバムとなってしまうとは…
2回に渡ったマック・ミラー追悼特集、ラストを締めくくるのは、マック・ミラー生前最後のアルバム「Swimming」から彼の内面の葛藤をさらけ出した1曲「2009」を聞いてほしい。
③「2009(2018)」
Take my time to finish, mind my business. A life ain’t a life ‘til you live it. I was diggin’ me a hole big enough to bury my soul. Weight of the world, I gotta carry my own. My own, with these songs I can carry you home.
「自分の事を片付ける時間が必要なんだ。人生に意味なんてないんだ。君が生きようとしない限りね。僕は自分の中に大きな穴を掘っていたのさ。自分の魂を埋めるのに十分な大きさのね。世界の重さを、僕は一人で抱えて、この歌たちと共に、君を家に送っていくよ。」
「Swimming」をリリースした約1ヶ月後の2018年9月7日。マックはドラッグのオーバードーズによって26歳というあまりにも短すぎる生涯を閉じた。彼の死については未だにいろんな憶測が飛び交っている。
ただ一つだけ確かな事はマックを知る多くのアーティスト達が彼の人柄について語ってる言葉。
「He was a super sweet guy.」
この特集を俺たちにたくさんの素晴らしい音楽をもたらしてくれた” super sweet guy ”に捧げます。
Rest in Peace, Mac Miller.
TARO
訳は全て意訳です。
索引:Genius https://genius.com/
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