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WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」。Vol.348の今回取り上げる表現は「pimp(ピンプ)」。「ポン引き(娼婦の斡旋をする人)」を意味するスラングだ。言葉だけ聞くと良くない印象を受ける人もいるかもだけど、実はこの言葉、アメリカのヒップホップシーンでは非常に重要なワード。
元々奴隷制以降、なかなか仕事に就労できなかった黒人の人々はやむを得ずイリーガルな仕事に従事することがあったのだけど、その中でも成功すれば大金を得ることができるとされていたのが、このピンプという職業。もちろん真っ当な仕事とは言えないかもしれないけど、一つの成功のシンボルでもあったんだ。
そして、そのイメージは近代において次第にエンタメ作品の中で取り入れられていき、1970年代に生まれた“Blaxploitation(ブラックスプロイテーション)”という黒人の人々が活躍する映画のジャンルでは、ピンプの破天荒でバブリーなライフスタイルがテーマの映画が人気を博すことになる。ブラックスプロイテーションの映画には、白人主導の映画界で差別的に描かれてきた黒人の人々をカッコよく、人間らしく描くという思いも込められており、このブラックスプロイテーションのムーヴメントで、“ピンプ”を白人が支配する社会への反逆や、貧困からの成り上がりの象徴として捉えるというイメージが広まったんだ。
そしてそのイメージはヒップホップへと引き継がれ、ラップ・ミュージックにおいてもピンプは富の象徴、成り上がりを意味する言葉として使われるようになっていく。
そんなヒップホップシーンにおいての最重要ワードである“pimp”の定義、今回もUSラッパーたちのリリックからチェックしていこう!
まず紹介するのは、2000年代を席巻したラップ・スター、50 Cent(フィフティ・セント)の大ヒットソング、「P.I.M.P.」!
50 Cent「P.I.M.P.(2003)」
I don’t know what you heard about me
But a bitch can’t get a dollar out of me
No Cadillac, no perms, you can’t see
That I’m a motherfuckin’ P-I-M-Pオレのことをどう聞いてるか知らねぇけど
ビッチはオレから1ドルも搾り取れない
キャデラックもパーマもかけていない。だからわかんねぇだろ?
オレがマザー・ファッキン・ピンプだってことはな
NY・クイーンズのドラッグ・ディーラーから成り上がったラッパー、フィフティ・セント。「P.I.M.P.」は彼のファースト・アルバム『Get Rich or Die Tryin’ 』収録の大ヒットソングだ。元々ピンプのステレオタイプなイメージというのはブラックスプロイテーションの映画でアイコニックになった“パーマをかけて、キャデラックに乗っている”といういわゆる1970年代ファンク、ディスコファッションなのだけど、フィフティはそういう格好はしていない。でも彼は間違いなくリアルな現代の“ピンプ”。12歳からドラッグディーラーをしていたというサグなバックグラウンド、9発の銃弾を受けながら生き残り、全米トップのラッパーになったフィフティは間違いなく本物の成り上がりってわけだね。
続いてはカリフォルニアをレペゼンするラッパー、Snoop Dogg(スヌープ・ドッグ)の「Drop It Like It’s Hot」!
Snoop Dogg「Drop It Like It’s Hot ft.Pharrell Williams(2004)」
When the pimp’s in the crib, ma
Drop it like it’s hot, drop it like it’s hot, drop it like it’s hotピンプが家に来る時は、
ホットにケツを落として踊ってくれよ、ホットにな
タイトルの「Drop It Like It’s Hot」は腰を落として、お尻を揺らす女性のダンスを意味するフレーズ。LAのギャング、クリップスのメンバーだったスヌープは、Dr.Dre(ドクター・ドレー)のプロデュースで大ヒット。アメリカを代表するラッパーの一人となった正真正銘の成り上がり。そんな現代の“ピンプ”的アイコン、スヌープが家に来たら、ギャルたちは踊り出すって感じだね。
「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.348のラストはサウス・ヒップホップ・シーンのクリエイティビティーを全世界に知らしめたOutkast(アウトキャスト)の4thアルバム「Stankonia」から「B.O.B.」からBig Boi(ビッグ・ボーイ)のリリックをチェック!
OutKast「B.O.B.(2000)」
Uno, dos, tres, it’s on
Did you ever think a pimp rock a microphone?ウノ、ドス、トレス、さぁ始まりだ
マイクをロックするピンプて考えたことあったか?
ハイスピードでアップテンポなビートに、ゴスペルのボーカルを取り入れたフックで幅広いリスナーの支持を受けたアウトキャスト最大のヒット曲の1つである「B.O.B.」。音楽メディア「ローリング・ストーンズ」が選ぶ史上最も素晴らしいヒップホップ・ソング50にも選ばれている一曲だ。”Did you ever think a pimp rock a microphone?(マイクをロックするピンプて考えたことあったか?)で歌われているのは、昔の時代と現代の比較。
ブラックスプロイテーションの映画で描かれているようなピンプが活動していた数十年前やそれ以前には黒人がマイクを持って大金を稼ぐなんて考えられなかった。でも今、彼らは自分たちの力で状況を変えて、マイク一本で大金を稼いでいる。まさにその姿はマイクをロックする“ピンプ”ってこと。かっこいいぜ。
【歌詞出典元】Genius
*訳は全て意訳です。
こんなスラングも知ってる?
番外編
2020年 J-Hip Hop パンチライン特集

straight up
その通り、間違いない

neighbor
お隣さん
