目 次
ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。
今回のゲストは、栃木県足利市在住の僧侶・西田稔光(にしだ しんこう)さん。大学時代にヒップホップの魅力に触れ、現在はお寺の副住職を務めるかたわら、日本語ラップのリリックを、仏教の視点から考察するYoutubeチャンネルを運営中。じわじわと注目を集めています。そこで、僧侶のライフスタイル、その独自の活動のワケ、そして仏教的にもヘッズ的にも推せる渾身の1曲を聞いてみました!
前回の記事はこちら → フッドの仲間と上がっていく。鋳造メーカー2代目社長・佐野秀充の今後のビジョンと忘れられない“言葉”
洗濯物干すのも修行!
生活全てを大切にする曹洞宗

レペゼン :
稔光さんのYoutube動画を以前から拝見していたので、直接お話できてとても嬉しいです!本日はよろしくお願いします。改めて自己紹介をお願いします。
西田稔光 :
よろしくお願いします。西田稔光と言います。仏教の曹洞宗という宗派の僧侶で、今は栃木県足利市にある「明林寺(みょうりんじ)」で副住職を務めています。坐禅会や食事作法のワークショップなどを通して仏教を伝える活動をしつつ、『僧侶しんこうのHIPHOP仏教』というYoutubeチャンネルで、仏教の視点からヒップホップカルチャーを解釈するという発信を行なっています。
レペゼン :
非常に興味深い活動をされていますね。まず曹洞宗というのは、どういった宗派なんでしょう?
西田稔光 :
大きく言うと「禅宗」という、坐禅を修行の中心とした宗派に分類されます。坐禅を生活の中心に置き、生活の中心にあるものを大切にするために他の生活も大切にしていこうという考えですね。食事、掃除、寝ること、トイレに入ることも全部坐禅に繋がっていくことなのだから、どれもおざなりにせず全てを修行として捉えよう、ということを説いています。
レペゼン :
ZORNさん的に言えば、「洗濯物干すのも修行」というわけですね!
お寺の掃除から都内の坐禅会まで。
副住職の多忙な日常

レペゼン :
現在副住職をされている「明林寺」は、どんな歴史や背景があるお寺なんですか?
西田稔光 :
そんなに観光向けの寺とかでもないので、厳密に全ての歴史を1から暗記しているわけでもないんです笑
お寺が開かれたのは1536年で、今の住職、私の父で21代目です。ただ、お寺ってなんとなく、代々家族経営していると思われることが多いんですが、本来お坊さんが世襲して継いでいくというものではないんですよ。うちも血が繋がっているのは祖父からです。
レペゼン :
そうなんですね!稔光さんは副住職ということですが、1日のルーティンはどんな感じなんですか?
西田稔光 :
やることが日によって変わるので、ルーティンらしいものはないんです。人が亡くなることには予定があるものではないので、葬儀が急遽入ることもあります。なので本当に日によってバラバラです。でも、だいたい週末は午前中に法事をやることが決まっていますね。
レペゼン :
毎週法事があるということは、お檀家さん(*)がかなりの数いらっしゃるんですね。
※ … そのお寺で先祖や故人を弔う家族や親族、関係者のこと。
西田稔光 :
お寺の規模としては、小さくもなく大きくもなく、中規模くらいですね。毎週法事といっても件数は多くありません。
レペゼン :
なるほど。では法事を行ったり仏教の教えを広めたりするのが稔光さんの主な業務なんですね。
西田稔光 :
はい。それから実は留守番も業務の1つと言えるんです笑
お寺にいないと、人が亡くなった連絡や法事の申し込みの連絡を受けられないので、家にいることも副住職の務めなんです。その間は、普通にプライベートのことをしたり、お寺の掃除をしたり、それこそYoutubeを観たり、動画編集をしたりしています。
「ヒップホップ×仏教」の
発信を続ける2つの理由

レペゼン :
Youtubeチャンネル『僧侶しんこうのHIPHOP仏教』についてもお聞きしたいと思います。改めてどんなチャンネルか教えていただけますか?
西田稔光 :
僕が仏教の視点の面白さを伝えたくて始めたチャンネルです。グラフィティやDJ、ダンスなど、ヒップホップカルチャー全般に触れたいと思いながらも、基本的にはラップのリリックを仏教の視点から考察することが中心になっています。
レペゼン :
他にはない活動ですよね。紹介するアーティストや曲はどのように選ばれているんですか?
西田稔光 :
「僧侶がグッときた言葉」というテーマなので、まさに自分が聴いていてグッときたワードがあった曲を挙げています。そのなかでも見ている人からの反応が良いなと感じるのは、KREVAさんやZORNさん、あとはSUSHI BOYZさんですね。歌詞を気にしているリスナーが多いアーティストなのかもしれません。
レペゼン :
たしかにKREVAさんやZORNさんはリリック考察に反応する層が多そうですよね。そもそも、なぜヒップホップカルチャーを仏教的視点から取り上げようと思ったんでしょうか?
西田稔光 :
これには公的な理由と私的な理由の両方があります笑
公的な理由から言うと、仏教のことだけを話していても届く範囲って限られているんですけど、世間にあるものに対して「仏教ではこういうものの見方をするんだよ」と言うことで、仏教の魅力が伝わりやすいんじゃないかなと考えたんです。これが公的な理由です。
レペゼン :
仏教の教えを広めるためのアプローチの1つですね。もう1つの私的な理由というのはなんですか?
西田稔光 :
それは僕の師匠である父親の存在です。僕はブレイクダンスをやっていた時期があるんですけど、父は昔ながらの考えの人なので、ダンサーとかラッパーの服装などに抵抗があるんです。だから「ダンスとかヒップホップとかは大学までだからな」と言われたりして。でも、僧侶として勉強していくほど自分にとってヒップホップカルチャーから受けたものは無駄じゃないと思うようになったんです。それに、これをちゃんとお坊さんになったうえで良い方に活かしていけば何も言われないんじゃないかと思ったんですね。つまり住職である父に対するアンチテーゼみたいなところが自分の中の私的な理由ですね。ある種の反骨精神と言いますか笑
レペゼン :
そういう背景もあったんですね。
でも、こうして取材をすることで我々も仏教を学ぶ機会になっているので、素晴らしい活動だと思います!
KREVAのアティテュードは
僧侶にも刺さりまくる!?
レペゼン :
そんな稔光さんが最近ハマっている曲を教えていただけますか?
西田稔光 :
最近だと、1つはKvi BaBaさんとKREVAさんの「BPM」ですね。
【 Kvi Baba / BPM feat. KREVA 】
レペゼン :
おお!今年リリースの話題曲ですね。なぜこちらの曲なんでしょう?
西田稔光 :
今年4月にAfrika Bambaataa(アフリカ・バンバータ)(*)が亡くなりましたが、その後にリリースされたこの曲は「Planet Rock」をサンプリングしていて、しかもめちゃくちゃ今の曲として成り立たせているんです。僕はKREVAさんがずっと大好きなので、KREVAさんがカマすと自分の青春も輝く感覚があるんです笑
※ … ニューヨーク出身の伝説的DJ。1980年代初頭に、ヒップホップの4大要素(DJ、ラップ、ブレイクダンス、グラフィティ)を定義づけた重要人物。
【 Afrika Bambaataa & The Soulsonic Force – Planet Rock 】
レペゼン :
客演とはいえ、Kvi BaBaさんに遠慮することなく、カマしまくっていますよね!中でも特に気に入っているリリックはありますか?
西田稔光 :
KREVAさんの
外してった世間の耳栓
っていうリリックですね。僕らが10代の頃なんかは「KREVAが好き」って言うと、OZROSAURUS好きな人から「あんなのヒップホップじゃねえよ」って言われてることがあったんですよ。実際、MACCHOさんとKREVAさんの間にはビーフが起こっていたわけですが、それが2023年に「Players’ Players」で一緒に曲をやるという関係性にまで繋がっていきました。長い活動を通して世間からの評価を覆す、まさに「世間の耳栓を外した」と言えるんです。そういうKREVAさんの強さを感じますね。
レペゼン :
ありがとうございます。KREVAさんの曲や活動内容が仏教の教えとリンクすることはありますか?
西田稔光 :
KREVAさんに関しては、ずっと続けてきてるということが一番大きいと思うんですよ。KICK THE CAN CREWから、ソロになり、またKICKも再始動して……と、常に更新をし続けているアーティストだと思うんです。仏教の修行もまさに積み重ねていくものなんですけど、惰性で続けるものではなく、常に初心を抱いて、毎度初めてのつもりでやるのが大事なんです。
レペゼン :
なるほど。まさに続けるだけでなく更新し続けるKREVAさんも同じですね。
西田稔光 :
はい。KREVAさんは「夢追人 feat. PUNPEE」の中でも
ずっと生み続けている初期衝動
とラップされているんですが、そういう初心と向上心の持ち方がとても素晴らしいと思います。「僕たちも慣れきっちゃいけないよな」と改めて考えさせられました。
レペゼン :
稔光さんが若い頃から聞かれていたKREVAさんを、今、僧侶としての立場からプッシュされているというのはめちゃくちゃ面白いですね!
次回は稔光さんの子ども時代からの思い出をスローバックしていきます。学生時代に衝撃を受けたある曲のパンチラインは、僧侶になった今も胸に響き続けている!

