目 次
ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。
今回のゲストは、鋳造メーカー・佐野政製作所(さのまさ せいさくじょ)の代表を務める佐野秀充(ひでみつ)さん。
伝統産業の勢いを盛り返すべく取り組んでいる自社ブランドの商品開発。ワクワク感や遊び心を感じさせるアイデアや、佐野政製作所だからこそ可能なものづくりの秘密に迫ります。
前回の記事はこちら →育てているのは見えない根。地元・高岡で新たなものづくりに挑む佐野秀充の胸を打ったパンチライン
日常の煌めきを閉じ込めた
プロダクトブランド「U,」

レペゼン :
佐野政製作所のオリジナルブランドを2つ立ち上げられたということで、改めてお聞きしたいと思います。まず「U,(ユウ)」からご紹介いただけますか?
佐野 秀充 :
これは日常の煌めきを閉じ込めたプロダクトブランドですね。代表的なプロダクトは先ほども紹介したキャンディケースです。これはロリポップ型のキャンディがぴったりはまるケースで、大事な人にサプライズする時に使ってもらいたいですね。キャンディを入れてサプライズしても良いし、道で摘んだお花を入れても良いし、いつかは指輪なんかを入れてプレゼントしても良いですし。自分の大切な人を幸せにするためのプロダクトなので、そういうことに使って欲しいなと思います。

レペゼン :
最高ですね!やっぱり発想がモテ男に感じます笑
佐野 秀充 :
いや、モテ男じゃなくて、“モテたい男”なんだと思います笑
レペゼン :
形状や材質など、注目ポイントはどこにありますか?
佐野 秀充 :
材質は仏具にもよく使われている真鍮(しんちゅう)ですね。鉄だと長年置いていると錆びていっちゃうんですけど、真鍮のように銅から作っている合金は永年性があるんです。何千年前のものが出土したというニュースがたまにありますが、ああいうのも真鍮が使われることが多いんですよ。

レペゼン :
なるほど。ではこのキャンディケースも一生愛用できそうですね。
佐野 秀充 :
そうですね。こう見えてけっこう真面目に作っているんです。くびれの部分のアール(角の丸み、曲線)がどれくらいが良いかを何パターンも試して。おじさんが集まって「この角度が一番良いね」と話しながら仕上げていきました笑
アートピースとして飾ってもらっても良いかなと思います。
レペゼン :
小さくてキュートなキャンディケースに、こだわりと技術が詰まっているんですね。
鋳造技術を使って
好奇心を掻き立てる「HELE」

レペゼン :
もう1つが、「HELE(ヒレ)」ですね。こちらはどんな特徴のブランドなんですか?
佐野 秀充 :
はい。こちらは高岡の鋳物の技術を使って、好奇心を掻き立てるようなものを作っていきたいというブランドです。例えば、クジラの形をしたバターケースが代表的な商品です。胴体はアルミでできていて、つまみの部分は真鍮でできている商品です。高岡市主催のマッチング企画で繋がったデザイナーさんから、ご提案いただいて作りました。


レペゼン :
こちらもかわいいですね!それこそバター以外のものも入れられそうです。
佐野 秀充 :
そうなんです。「HELE」のプロダクトは、こういうかわいらしい見た目の物が多くなっていくと思うんですけど、このアルミと真鍮のように異素材を組み合わせるというところは、あんまり他ではやっていないことなんです。これも自社で作れる強みですね。
レペゼン :
素敵です。ちなみにこれまで「商品化には至らなかったけど、こういうアイデアも出た」という物もあるんですか?
佐野 秀充 :
案はいっぱい出ましたね。自分が出したものでいうと、「イエスノー枕」(*)のアイデアをベースにした、全部イエスになるサイコロとかですね笑
※ … 夫婦の寝室で、その日の夜のスキンシップに対する気分(yes or no)を、言葉ではない手段で相手に伝えるために使用する枕。
レペゼン :
どう転がしても「イエス」になるサイコロ!それはまた大胆な発想ですね笑
佐野 秀充 :
はい笑
そのアイデアをデザイナーさんが綺麗にまとめてくださったんですが、実現はしなかったですね笑
でもアイデアの種としては残っているので、どこかで違うアイテムにその要素を入れたりとかはしたいなと思っています。
生産効率をある程度無視して
深いニーズに刺さるものを

レペゼン :
佐野政製作所のものづくりの強みや魅力は、どういったところにあると思われますか?
佐野 秀充 :
そうですね。生産効率みたいなところをある程度無視したものづくりができるというか。より深いニーズにはまるものを作れるのが魅力だと思っています。今は身の回りに物が溢れていますが、ほとんどが効率や使い勝手を重視して作られたものじゃないですか。そういう社会だからこそ、深いところに刺さるものを作ることに価値があるんじゃないかなって思ったりします。
レペゼン :
大量生産が当たり前になっているからこそ、「効率から離れる」という発想は注目されそうですね!でも今までにない素材の組み合わせやフォルムの案を持って、職人さんに「これできますか?」って相談しに行く時は、勇気がいるんじゃないですか?
佐野 秀充 :
でも自分も作る側でもあるので、全然そこはハードルがないですね。特注品を作る時もそうですが、自分が間に入ることでその間のコミュニケーションもスムーズに進むんじゃないかと思っています。
レペゼン :
なるほど。商品開発と作り手の両方の視点を持たれている佐野さんは、改めて高岡という街にとって大きい存在だということが分かります。
伝統産業にも当てはまる!?
YOU THE ROCK★のパンチライン

レペゼン :
伝統産業をこうやって盛り上げていきたいなど、今後のビジョンはありますか?
佐野 秀充 :
「欲しくなるものを作る」ということをしていきたいですね。これまでは、いわゆるザ・置き物を作っていて、それが時代に合わなくなったという背景があると思うので、ニーズに合わせて商品開発をしたり、逆にニーズを生み出すための商品を提案したりといった動きを積み重ねていくことで、産業の盛り上がりにつながるんじゃないかなと思っています。そういう自社の商品や特注品を作れるのも、仲間がいるからこそなので、みんなで上がっていきたいと思っています。
レペゼン :
フッドの仲間と上がっていく。これもヒップホップに似たドラマを感じますね。
佐野さんにとって、まさに「上がっていく!」というマインドになれるラップソングを教えていたけますか?
佐野 秀充 :
これ、曲ではないんですが紹介したいのがあって。YOU THE ROCK★さんの「OUTA HERE REAL SHIT PART 1」という、僕が中学生くらいの時に出会った音源ですね。これはアルバムにトラックとして入っているんですが、ライブ中のMCを収録した音源なんです。
レペゼン :
いわばSkit的に収録されているわけですね。どういった内容なんですか?
佐野 秀充 :
まずYOU THE ROCK★さんの「今日のライブは勉強会だ!」という話から始まるんですけど、先輩たちが“Out here”していく(売れていく)なか、自分はシーンにしっかり残っていくよという内容なんです。MCの中で彼が、「これだけ盛り上がってるヒップホップがなくなっちまうことを考えたことがあるか?」って言うんですけど、そこでお客さんが「ない!」ってアンサーするんです。それに対して「なぜならば、俺たちがどんどん進めてるからだ!俺はオールドスクールだが、お前たちの目の前からどこにも行きやしないぜ!」って言って、会場がさらに沸き立つんです。それが当時、めちゃめちゃ心に残っていて、なんかこの鋳造という伝統産業とも重なる部分があるんです。前に進めていかないといけないなという。……曲ではないんですが、これはいまだに好きですね。
レペゼン :
めっちゃ良いですね!まさに伝統産業も、文化のバトンを代々受け継いで走ってきた方々がいたからこそ、今こうやって生活に浸透しているわけですよね。高岡のものづくりが世界中に根付いていくことを楽しみにしています。本日は貴重なお話をありがとうございました!
佐野 秀充 :
ありがとうございました。

