目 次
ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。
今回のゲストは、鋳造メーカー・佐野政製作所(さのまさ せいさくじょ)の代表を務める佐野秀充(さのひでみつ)さん。伝統的な鋳造技術と現代の発想を掛け合わせた新しいものづくりに力を入れている佐野さんは、実はヒップホップ好きでもあるそう。そんな佐野さんの仕事ぶりやヘッズ遍歴に迫ります!前回の記事はこちら → 帽子を被った先のライフスタイルの豊かさを伝えたい。ハットメーカー・稲葉光亮が目指す境地
オーダーメイドから修理まで!
創業50年の佐野政製作所

レペゼン :
本日はよろしくお願いします!伝統産業に携わる一方でヒップホップヘッズでもある佐野さんにお話を聞けることを楽しみにしていました!改めて自己紹介からお願いします。
佐野 秀充 :
よろしくお願いします。富山県高岡市にある佐野政製作所の佐野秀充です。うちは1976年創業の会社なんですが、主に鋳造(ちゅうぞう)技術(*)を使って、特注品などを製作しています。またヒップホップも大好きで。小学校くらいにスチャダラパーを聴いたのが最初で、中学の時なんかはかなり熱心に日本語ラップを追っていました。
※ … 熱で溶かした金属を型(鋳型)に流し込み、冷やして固める加工方法。それによって作られる製品を、「鋳物(いもの)」と呼ぶ。
レペゼン :
日本語ラップが一気に広がりを見せた時代をリアルタイムで経験されていたんですね!
ところで、佐野政製作所で作られている「特注品」というのは、どういったものがあるんですか?
佐野 秀充 :
例えば、企業のイベントで使われるようなオリジナルトロフィーだったり記念品のご依頼をいただきますね。あとは、メーカーさんの部材作りや作家さんのものづくりのお手伝いをすることもあります。

レペゼン :
一口に「鋳造」と言っても、扱われるジャンルは幅広いんですね。
佐野 秀充 :
そうですね。あとは自社で作ったものじゃなくても、修理をさせていただくこともあります。「昔の物なんだけど、直せる?」という依頼もありますね。例えば、江戸時代に使われていた油を作るための鍋だったり。
レペゼン :
江戸時代の道具でも直せるとは!鋳造技術の歴史を感じます。
ルパン三世からヒントを得て
誕生したキャンディケース

レペゼン :
佐野政製作所では、オリジナル商品も作られているとお聞きしました。代表的なものがキャンディケースですね。「鋳造メーカー×キャンディケース」という組み合わせは不思議な感じがするんですが、製作の背景について教えていただけますか?
佐野 秀充 :
このキャンディケースは、コロナ禍の時に企画をしていた商品です。今ってよく「1人でも幸せになれる時代」と言われますが、自分の中では「本当にそうかな?」と疑問に思うこともあって。そこで、自分の大事な人を幸せにするためのプロダクトを作ろうと思ったんです。
レペゼン :
めっちゃ良いですね。「キャンディを入れる」というアイデアはどう生まれたんですか?
佐野 秀充 :
デザイナーさんといろいろ意見を出し合うなかで思い浮かんだのが、映画『ルパン三世 カリオストロの城』(*)です。
※ … ルパンと仲間が世界を裏で操る偽札組織の陰謀を暴き、囚われの王女・クラリスを解放すべく、カリオストロ伯爵に挑むアクション大作。
レペゼン :
おお!宮崎駿監督の名作ですね。
佐野 秀充 :
あの中で、ルパンがクラリスに小さい花をプレゼントして、そこから国旗が出る手品を披露するシーンがあるんです。「今のおじさんにはこれが精一杯」と微笑むという。
レペゼン :
分かります。とても良いシーンですよね。
佐野 秀充 :
はい。僕らもああいうのがやりたいと思って。自分たちが作るもので、日常の一瞬を演出して煌めきを持たせることができたら、とても価値があるんじゃないかと思って。なので、アイテム自体はすごくふざけているように見えるんですけど、実は真面目にアイデアを出して作ったという背景があります。

レペゼン :
なるほど。「大切な人を驚かせ、喜ばせる」というテーマがしっかりあるんですね。
さかのぼること400年。
鋳造文化が根付く高岡シティ

レペゼン :
高岡という街についてもお聞きしていきたいと思います。もともと鋳造が盛んな街なんですか?
佐野 秀充 :
とても盛んでした。高岡は、もともとは400年前くらいに前田利長という大名が興した街なんです。ただ、お城を建てたものの、その後取り壊しになってしまうんですよね。つまり「街は盛り上げていかないといけないけど城がない」という状態になってしまって。そこで、7社の鋳造会社の社長を7人呼び寄せて、この地の産業として根付かせていったと言われています。
レペゼン :
7人の技術者が高岡に集結したんですか!映画みたいでかっこいいですね。ちなみに当時は、具体的にどういったものを鋳造技術で作っていたんですか?
佐野 秀充 :
最初は鍋、釜、鍬(くわ)、鋤(すき)とかを鉄の鋳物で作るところから始まり、明治くらいになると装飾品、例えばデコラティブな香炉(こうろ)や像を海外に向けて輸出するようになりました。
レペゼン :
なるほど。そしてその鋳造の技術や文化を、佐野さんはじめ現代の職人さんが受け継いでいるというわけですね。
AK-69と¥ellow Bucksの
ラップが響く作業場!?
レペゼン :
佐野政製作所さんは1976年創業ということでしたが、佐野さんは何代目になるんでしょう?また普段の役職もお聞かせください。
佐野 秀充 :
父が会社を始めて、僕で2代目です。今はディレクションをメインでやっています。分業制といって、工程ごとに事業所が分かれていて、それをつなぎ合わせて物を完成させるという作り方なんですけど、それを取りまとめる仕事が多いですね。あとは自分で作業もしていて、工程の中では「仕上げ」という、不要な部分を削ったり表面を磨いたりする作業も行っています。
レペゼン :
ディレクターでもあり、職人でもあるわけですね。そこに加えてヒップホップヘッズの顔も持つ佐野さんですが、作業中にラップソングを聴くことはあったりしますか?またお気に入りの曲があれば教えてください。
佐野 秀充 :
作業中にも聴きますね。地味な作業が多いので、元気を出すための曲が多いかもしれません。1曲だけ選ぶのは難しいんですけど……特に好きなのは、AK-69さんと¥ellow Bucksさんの「Bussin’」ですね。
【 AK-69 – Bussin’ feat. ¥ellow Bucks】
レペゼン :
おお!名古屋を代表する2大アーティストの熱い曲ですね。普段から彼らの曲をよく聴かれるんですか?
佐野 秀充 :
めちゃめちゃ聴くわけじゃないんですけど、この曲はリズム的に気持ちがアガる感じが好きで、よく聴くんです。
レペゼン :
たしかにテンションが上がりそうです。リリック的なところで、刺さる箇所はありますか?
佐野 秀充 :
¥ellow Bucksさんのバースの
自分のケツなら自分で叩けるぜ
というリリックが好きです。怠けたりしてしまいそうになるのを律して、「しっかり頑張ろう!」という気持ちになります。
レペゼン :
ありがとうございます。それにしても、AKさんと¥ellow Bucksさんのラップが流れている現場、めちゃくちゃかっこいいです。
次回は佐野さんの幼少期〜学生時代について。日本のヒップホップシーンが一気に盛り上がりを見せた90年代後半をリアルタイムで駆け抜けた佐野少年。街のCDショップに通い詰めてチェックしていたアーティストとは!?

