目 次
ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。
今回のゲストは、鋳造メーカー・佐野政製作所(さのまさ せいさくじょ)の代表を務める佐野秀充(ひでみつ)さん。夜の飲食店の経営を経て、現在の職に就いた佐野さん。鋳造の職人としての腕前を磨きつつ、2代目社長として挑戦したあることとは?
前回の記事はこちら →ヒップホップからパラパラまで!ホストクラブから鋳造メーカーまで!幅広い世界に触れてきた佐野秀充のメモリーレーン
やってみて初めて痛感!
鋳造技術の奥深さ

レペゼン :
同級生と立ち上げたホストクラブを卒業し、ご実家の家業である佐野政製作所に入社されるまでのお話を聞きました。世界がガラッと変わったと思うのですが、入った時に特に大変だったことはありますか?
佐野 秀充 :
まず作業自体の難しさには苦労しました。素材を削ったりする作業も、横で見ていると簡単そうなのに実際にやってみるとすごく難しくて。かなり年配の職人さんがスイスイやっちゃうんですが、いざ自分でやってみると最初は全然うまくいかなかったですね。
レペゼン :
そうなんですか!やはり歴が問われるんですね。
佐野 秀充 :
はい。とても悔しくて、ずっと削る作業の練習をしていました。
レペゼン :
高岡の鋳造のシーンというか文化自体は、どういった雰囲気なんですか?やはり昔カタギの厳しい世界なんでしょうか?
佐野 秀充 :
もちろん入った当初は僕が分かっていないことも多く、怒られることもあったんですけど、今は全然そんな雰囲気はないですね。「職人」というと気難しいイメージがあるかもしれないですが、割とフランクな職人さんが多いですし、最近では工場見学を受け入れている会社もたくさんあるんですよ。なので話せる職人さんが多いなって思います。
レペゼン :
めっちゃ良いですね。我々もぜひ見学しに行ってみたいです!
難しい依頼もやってみる!
復活の兆しを生んだマインド

レペゼン :
業界全体の盛り上がりというか、需要はどういう状態なんですか?
佐野 秀充 :
1990年代くらいがこの業界のピークで、一番売上が高かった時期だったんですが、そこからずっと右肩下がりで衰退産業だったんです。うちの会社も、業界と一緒にずっと売上が下がっていくという状態で。でも、ここ数年はちょっとずつ盛り返してきたかなという状態ですね。
レペゼン :
おお!そうなんですか。何か工夫というか、新しく挑戦されたことがあったんですか?
佐野 秀充 :
特注品の受注を始めたのが変わったところです。以前からやってはいたんですが、メインで扱っているのは仏具だったんです。ある時、「高岡のいろんな業者に依頼したけど、できないって言われたんだけど、できますか…?」と相談を受けた依頼があって。見てみると「頑張ればできそう!」と思い、話を受けたんです。
レペゼン :
他は断りたくなるような難しそうな案件だけど、挑戦してみたわけですね。インタビュー第一回目でも少しお聞きしましたが、佐野政製作所にとってターニングポイントになった「特注品」というと、どういったものだったんですか?
佐野 秀充 :
企業のイベントなどで使われるトロフィーだったり、ゴルフの大会のカップなどですね。例えば、ちょうど「五郎丸フィーバー」くらいの時に、ラグビーの大会のトロフィーを作らせていただいたこともあります。ちなみにこの時は、納期の3日前くらいまでロゴが縦向きか横向きか決めてもらえず、めちゃめちゃ大変でしたね笑
レペゼン :
それは相当大変ですね笑
でもそれもなんとか対応してみせたわけですか。
佐野 秀充 :
なんとか納品できましたね。大会当日はテレビで見ていたんですが、トロフィーを持っているのを見て「優しく扱って……!」って思ってました笑
もちろんビス留めなどの仕上げの作業はきちんと行なってたんですが、なにしろ納期がギリギリだったので笑
レペゼン :
たしかにハラハラしますね笑
でも、そういう大きい仕事や小回りが利くような仕事をコツコツ受けていくことで、業界内でのプロップスをより強めてこられたんですね!
自社で作業するからこその柔軟性と
フッドの仲間との連携が生むスピード感

レペゼン :
ほぼご家族で運営されていることや、佐野さん自身も職人として工場に立つというお話もありましたが、改めて佐野政製作所の強みはどういったところにあると思われますか?
佐野 秀充 :
まずは、自分で作業もするからこそ細かいところを詰められるし、早めの納期にも対応しやすいという点ですね。例えばスポーツの大会だと、「絶対にこの日に必要!」というのが決まっているじゃないですか。そういう時、分業制だと対応しづらいというか、うまくコントロールしていかないと間に合わせにくいという弱点があるんです。
レペゼン :
なるほど。その柔軟性を生むために、佐野さんもディレクター的ポジションに立ちつつ仕上げ作業なども施されるわけですね。
佐野 秀充 :
はい。あとは、「高岡伝統産業青年会」というのがあるんですが、そこでできた横のつながりとか人脈は、スピード感を持って作るのに役立ちますね。やっぱり見た目が重視される商品が多いので、「これくらいが基準」というのが言語化しにくいんです。そのあたりの感覚を共有できる仲間がいるのは強いなと思います。
レペゼン :
素敵です。歴史ある高岡のものづくりの力を感じますね。
思い通りに行かない時も
“根っこを育てている”

レペゼン :
高校時代、ヒップホップは少し遠ざかったという話がありましたが、再び熱心にヒップホップを聴くようになったきっかけはなんだったんですか?
佐野 秀充 :
Youtubeか何かでMCバトルを観た時ですね。もうびっくりしたんですよ。自分が学生時代に観てた日本語ラップのMCバトルって、もっとゆっくりだったんです。でも大人になってからまた観たら、めちゃくちゃ進化していて。
レペゼン :
ではその頃を境に、ラッパーの音源もチェックするようになったんですね。
そんな佐野さんが、佐野政製作所に入ってから大変だった時期に励まされたラップソングを教えていただけますか?
佐野 秀充 :
「大変」という意味では、今も大変というか頑張っているところなんですが笑
そういう意味では、ZORNさんの「Roots」は好きですね。「周りに追い越されていったりもするけど、自分は根っこを育ててる」というメッセージが特に好きですね。
【 ZORN – Roots 】
レペゼン :
ありがとうございます。ZORNさんはけっこうお好きなんですか?
佐野 秀充 :
好きですね。「My Life」で歌っているような内容がかっこいいのって、やっぱりZORNさんだからというか。「まさかそこを全面に出してくるとは」って思わされました。
レペゼン :
たしかに、あえて思い通りにいかない日々をさらけ出したうえで、「それでもこれが自分のヒップホップ」と言い切るかっこよさがありますよね。
佐野 秀充 :
はい。自分もそういう曲に励まされてきました。やっぱり自社でブランドを始めたりとか、いろんなものづくりを行なっていますが、「すごく儲かっています」とは言えないので、今の状況に対して「これからの土台を作っているんだ」って思いながらやっています。そういう意味では、「伝統産業もヒップホップ」って言えるんじゃないかなと思います。
レペゼン :
間違いないですね!
この「Roots」という曲の中で、特に惹かれるリリックがあればぜひ教えてください。
佐野 秀充 :
片や傍ら 月日を重ね
ずっしりと構える 随一のラッパーへ
でも俺の成果は地べたにねぇもん
育ててたのは見えない根っこ
ここが特に良いですね。曲の前半では周りのラッパーに追い抜かれていた過去を歌っていて、後半では、先に行った人が先にダメになるけど根っこを育ててた自分はどっしり構えている、という構成なんです。
レペゼン :
秀逸ですね!ZORNさん特有の「最後にオチがあるリリック」の真骨頂のような気がします。
次回はいよいよ最終回。佐野政製作所が挑む新しいものづくりとは!そして鋳造をはじめ伝統産業全体の活性化を目指す佐野さんが背中を押されるのは、誰もが知るラッパーの知られざる“曲”でした!乞うご期待。

