WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」。Vol.357はこの8月に約10年ぶりとなる来日公演をビルボードライブで行う Common(コモン)特集。USラップシーン屈指のリリシストであるコモンのリリックを紹介していくよ!
まずはデビューアルバム『Can I Borrow a Dollar?』からの一曲「Take It EZ」!
「Take It EZ(1992)」
And it’s phat, sorta like Oprah before she lost weight
ファットな感じ、まるで痩せる前のオプラI put my rhymes in good hands, hey like All State
オレのライムなら心配無用、まるでオール・ステイトAnd I’m all in a state of ease, utopia.
めっちゃ気持ち良い感じ、ユートピアI’m the Spiderman, givin bug MC’s arachnaphobia.
オレはスパイダーマン。虫けらMCにくれてやる、アラクノフォビア
いや、ラップ上手すぎでしょ。
リリックに出てくる“オプラ”とはアメリカを代表する黒人女性司会者のオプラ・ウィンフリーのこと。オプラは貧困家庭に生まれ、若い時はめちゃくちゃ苦労した人なんだけど、そこから世界でもトップクラスの大富豪に成り上がっためちゃくちゃかっこいい人。
そんなオプラなんだけど、体重の増減をネタにされることもしばしば。つまり” fat (太ってる)” であると同時に “ phat(イケてる)”てことだぜ。アーイ。
「オール・ステイト」とはアメリカ最大の保険会社、オールステイト保険のこと。オールステイト保険のスローガンで ” You’re in good hands with Allstate(オールステイトなら心配ご無用)”があり、それを引用したリリックだね。
そして特に”ファット”なのが “I’m the Spiderman, givin bug MC’s arachnaphobia(オレはスパイダーマンさ、虫けらMCにくれてやる、アラクノフォビア)”のパンチライン。
「arachnaphobia(アラクノフォビア)」はクモ恐怖症のこと。そして「bug MC’s」の「bug」とは「小さな昆虫」を意味する。クモが主食として食べるのは小さな昆虫だよね。つまりコモンは ”スパイダーマン” なのでその辺の ”虫けらMC ” にとっちゃ捕食者てこと。そして、コモンのヤバ過ぎるスキルにビビった” 虫けらMC ” はアラクノフォビア(クモ恐怖症)になっちゃうてわけ。いやはや。座布団100億枚です。
続いては2000年3月にリリースされた名盤「Like Water For Chocolate」からDJ プレミアがプロデュースした「The 6th Sense」!
「The 6th Sense ft. Bilal(2000)」
I’d be lying if I said I didn’t want millions
金が欲しくないって言ったら嘘になるなMore than money saved, I wanna save children
でも金を貯めるより、子供たちを救いたいDealing with alcoholism and afrocentricity
アルコール中毒とアフロセントリシティを扱うA complex man drawn off of simplicity
シンプリシティから吐き出された複雑な男Reality is frisking me
現実がオレを刺激するThis industry will make you lose intensity
この業界はお前に激しさを失わせるThe Common Sense in me remembers the basement
オレの中のコモン・センスは地下室を思い出させる I’m Morpheus in this hip-hopMatrix, exposing fake shit
オレはこのヒップホップ・マトリックスのモーフィアス、フェイクを暴く
活動家としても知られるコモンがラップで稼いだお金を運用して取り組んでいるのがアフリカン・アメリカンの子供たちの将来のための支援活動。彼が立ち上げた子供の支援団体である“Common Ground Foundation”では、主にシカゴの貧困家庭の子供たちのための教育支援プログラムを提供しているんだ。 歌詞の中で出てくる “コモン・センス”は「社会人が持つべき概念や考え方」を指す言葉であり、コモンの初期のラッパー・ネームだ。そして“the basement(地下室)” は彼が20代前半に住んでいたアパートのこと。つまりコモン・センスという言葉は、彼をキャリア当初の気持ちに立ち返らせるということだね。 ラッパーとして常に社会的弱者の人々の立場に立、アフリカン・アメリカンの人々に対する差別や不平等について歌ってきたコモン。 そんなコモンのヒップホップ・シーンにおける存在は、まるで映画「マトリックス」で主人公ネオを導くメンターであるモーフィアスのようであり、業界にはびこるフェイクを暴くてわけだね。
「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.357 コモン特集のラストは「Be (Intro) 」!
「Be (Intro) (2005)」
The chosen one from the land of the frozen sun
凍りついた太陽の大地から来た選ばれし者Where drunk nights get remembered more than sober ones
そこは酔っ払った夜がシラフな夜よりもよく覚えていられる場所
詩的すぎるぜ…!
“the chosen one (選ばれし者)” とはコモン自身のことであり、“ the land of the frozen sun(凍りついた太陽の大地)”は彼の地元シカゴを表現した文章だ。
シカゴは年間を通して夏が短く、冬が長い。1月の平均気温は−10度くらいになるほどで、とても寒い地域なんだ。だから“the land of the frozen sun(凍りついた太陽の大地)”という表現でラップしているんだね。
そして、その地元、シカゴがどんな街かを説明しているのが、 where から後の文章。そこは“drunk nights (酔っ払った夜)”が“ sober ones(シラフな夜)”よりも“get remembered more(よく覚えていられる)”場所ってことだね。みんなも友達と遊んで酔っ払った夜って、意外によく覚えてたりするよね。
さすがリリシスト、コモン。地元を表現する歌詞が最高に美しいぜ。
【歌詞出典元】Genius
*訳は全て意訳です。
こんなスラングも知ってる?
flashy
派手な


slammin’
ピシャリと閉める、叩きつける、イケてる、半端ない
