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WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」。Vol.373の今回取り上げる単語は「box」。「箱、自分の殻、ぶち込む、ボクシングをする、ブーンボックス」など様々な意味になる「box」の使い方をUSラッパーたちのリリックからチェックしていこう!
まずは先日XGの JURIN とのコラボも話題になった西海岸を代表するリリシスト、RapsodyとMadlibの共作「Daddy’s Girl」!
Rapsody & Madlib「Daddy’s Girl(2025)」
You’re artificial, my art official like Basquiat
Y’all niggas in boxes while we just box a lot
Been fighting my way through for this culture we call hip-hopあなたは人工物で、私のアートはオフィシャル、まるでバスキア
私たちが殴り合いしてる間、皆は箱の中に閉じこもってるだけ
ずっと戦ってきた、私たちがヒップホップと呼ぶこの文化のためにね
まず圧巻は“artificial(人工の)”と “art official(本物のアート)”のライムプレイ。
真逆の意味合いの言葉である artificial(偽物・作り物) と、art official(本物のアート) を対比させたテクニカルなライミングをかました上で、そこにストリートから成り上がったアーティスト Basquiat(ジャン=ミシェル・バスキア) を引き合いに出すことで、自分のアートの本質性はまるでバスキアレベルってことを言っているわけだね。
さらに続く“box” を使ったラインも秀逸。「箱の中に入る、枠にとらわれている」という意味と「殴り合う、ボクシングをする」という意味で “ box ” を使い分け、「周りの連中は型にはまってるが、自分は戦っている」というアティチュードを示してるんだ。ヒップホップ文化のためにラッパーとして戦ってきたラプソディだからこその説得力のあるリリックだ。
続いて紹介するのは、Kendrick Lamar の「Bitch, Don’t Kill My Vibe(2012)」!
Kendrick Lamar「Bitch, Don’t Kill My Vibe(2012)」
you can remain stuck in a box
I’ma break out and then hide every lock君は箱の中に閉じこもったままでいればいいさ
オレは抜け出して、すべての鍵を隠すから
周りのラッパーたちが“box(箱)”の中に留まり、トレンドに乗ったラップだけを作っているのに対し、ケンドリックはその箱を抜け出して、新たな世界を作り出す。そして箱の“lock(鍵)”を隠し、もう他のラッパーたちも一つの価値観の中に閉じこもることなく、より個性豊かで、オリジナリティのある楽曲を作ることができるようにするってことだね。
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」Vol.373のラストを飾るのはNasの「N.Y. State of Mind」!
Nas「N.Y. State of Mind(1994)」
The smooth criminal on beat breaks
Never put me in your box if your shit eats tapesビート・ブレイクス上のスムース・クリミナル
君のボックスにオレを入れんなよ、もしそいつがテープを食っちまうなら
「Smooth Criminal」はMichael Jacksonの名曲。ミュージック・ビデオの中でマイケルが見せた華麗なダンスや滑らかなムーンウォークのように、ナズもビート・ブレイクスの上でライムという“ステップ”をスムースに踏む。ただそんなナズの楽曲は取り扱い要注意。安い“boombox(ラジカセ)”にカセットを入れると、テープが絡まってしまう。つまり自分のスムースな楽曲が収録されたカセットを安物の再生機器に入れて壊さないでくれよってことだね。このリリックを曲のブレイクス(間奏)に合わせて持ってきてることを含めて、さすが最強リリシスト、ナズだぜ。
【歌詞出典元】Genius
*訳は全て意訳です。
こんなスラングも知ってる?
underdog
期待されていない者、弱者、負け犬

fame
名声

boom bap
ブーンバップ



