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WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.240。今回取り上げる英語は「wreck(レック)」。
「ぶっ壊す」という意味でUSラップでも頻出の単語だ。今回もレジェンド・ラッパーたちのリリックからスラングやフレーズの意味を学んでみよう!
まず紹介するのはNas(ナズ)の「One Time 4 Your Mind」!
Nas「One Time 4 Your Mind(1994)」
From day to night, I play the mic and you’ll thank God
I wreck shit so much, the microphone’ll need a paint job朝から晩まで、マイクを演奏してる、神さまに感謝しな
オレが激しくぶっ壊す、マイクは塗装作業が必要だな
朝から晩までラップをしまくるナズ。
そのライムは激しすぎて、マイクの塗装が剥がれてしまう。だからpaint job(塗装作業)が必要になるってわけだね。
続いてはWu-Tang Clan(ウータン・クラン)の「Wu-Tang: 7th Chamber」!
Wu-Tang Clan「Wu-Tang: 7th Chamber(1993)」
Murderous material made by a madman
It’s the mic wrecker, Inspectah, bad man
狂った男に作られた殺意の材料
それがマイク・レッカー、インスペクタ、ワルな男さ
ウータン・クランからInspectah Deck(インスペクタ・デック)の技巧派なリリック。
まず madman(狂った男)とはインスペクタ本人のこと。そんな彼に作られたMurderous material(殺意の材料)とは彼の攻撃力の高いリリックだと捉えることができるね。そしてその強すぎるリリックはマイクを破壊するほどの攻撃力を持った、まさに“mic wrecker(マイク・レッカー)ってわけだ。さすがスキル集団ウータンの中でも随一のテクニカル・ラッパーであるインスペクタ、さすがのライミングだぜ。
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.241のラストを飾るのは西海岸のレジェンド、Ice Cube(アイス・キューブ)のクラシック「Check Yo Self」!
Ice Cube「Check Yo Self(1993)」
You better check yo’ self before you wreck yo’ self
‘Cause I’m bad for your health
I come real stealth
Dropping bombs on your moms気をつけといた方が良いぜ、お前が自分の身を滅ぼす前にな
なぜならオレはお前の健康に悪いからな
こっそりとやってきて
お前らのママたちに爆弾を落としてやるぜ
アイス・キューブから敵対する連中に向けての痛烈なメッセージ。
キューブをディスってくるやつは、自分の安全に気をつけないといけない。
なぜならキューブはマジで”bad(ワル)”。 “stealth(こっそりと)”やってきて、お母さんたちに爆弾を落とされちゃうってわけだね。
実はこの「相手をディスりたい時に、お母さんの悪口を言う」という手法は英語ではかなり昔からある手法。
例えば「クソ野郎」を意味する“motherfucker”には“mother”が入っているし、「いけ好かないやつ」意味する“son of a btich”は直訳すると「ビッチの息子」という意味でお母さんをディスる意味合いがある。これは子供にとって何よりも大事な存在であるお母さんをディスることで本人にダメージを与えるという悪口のやり方なんだ。
Eminem(エミネム)の自伝的映画『8 Mile』内のラップバトルでも、エミネム演じるB-Rabbit(B・ラビット)が相手をディスる際のパンチラインで “I’ll get the seven digits from your mother for a dollar tomorrow(明日お前の母ちゃんの電話番号、1ドルでもらってやるよ)”とラップしており、「てめぇのお母さんは1ドルで呼べるくらい尻軽な女だぜ」という意味で相手をディスってるよ。
【歌詞出典元】Genius
*訳は全て意訳です。