WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.68の今回紹介する単語はすでに日本でもポピュラーなスラング、「ill(イル)」。ご存知「ヤバいくらいイケてる」という意味だ。早速USラップのリリックから使い方をチェックしていこう!
まず紹介するのは、先日大坂なおみとの交際宣言で話題になったYBN Cordae(YBN コーディ)の最新アルバム「The Lost Boy」から「Broke As Fuck」!
①YBN Cordae 「Broke As Fuck(2019)」
A Bentley coupe, yeah, I’m wearin’ Prada‚ I like Fendi too. Grandma passed, had a heart attack, only 62. My cousin shot‚ got me paranoid, who to trust or not. Gave my brother 25 years, that really sucked a lot. Post-traumatic stress is building up, you niggas so dramatic. Fuck these other niggas, I’m the illest, I’m the coldest at it (Yeah, uh).
「ベントレーのクーペ、着てる服はプラダ、お気に入りのフェンディ。おばあちゃんは心臓発作で死んだ。たった62歳だった。いとこが撃たれ、オレはおかしくなった。誰が信用できて、できないのか。兄弟は25年くらった。マジで終わってた。PTSDレベルのストレスが重なる。お前らはマジでドラマティックだよな。あいつら全員クソだぜ。オレこそが最高にイルで、冷酷な男さ。」
コーディが育ってきた過酷な環境が伺い知れるリリック。「Genius」でのコーディ自身のコメントによると、彼のいとこは友人とサイコロ・ゲームをしていた時に、言い合いになり、その友人に銃殺されたらしい。あまりにもショッキングな内容だけど、それがコーディが生きてきた現実。
そんな過酷な環境から成り上がってきた今、コーディはプラダ、フェンディを着こなすラップスターだ。まさに最高に ” ill “ の中の “ ill “、” illesnt(イレスト)” な男、” Young Boss Niggas “、YBN コーディ。そら大坂なおみちゃんも惚れてまうで。
続いて紹介するのはヒップホップ・クリエイティヴ集団「BROCKHAMPTON(ブロックハンプトン)」。曲は2017年リリースの「ALASKA」!
②BROCKHAMPTON 「ALASKA(2017)」
Back when I was hustling, ain’t get no love from them (uh)
(A whole new life)I paid my own bills and came up with the illest shit (uh)
(A whole new life)I was tryna find a way to get my family out of it (uh)
(A whole new life)Spent my days in basements tryna write a motherfuckin’ hit
「オレがハスリンしてた頃は愛情なんて受けたことなんてなかった。 (全く新しい人生)
自分の支払いを払って、最高にイルなシットを思いついた。 (全く新しい人生)
自分の家族をあそこから抜け出させるために。 (全く新しい人生)
地下室で過ごした日々。マザーファッキンなヒットを書いてたんだ。」
ブロックハンプトンのリーダー、Kevin Abstract(ケビン・アブストラクト)が駆け出しの頃のリアルな心情を歌ったリリック。Kanye West(カニエ・ウェスト)やKid Cudi (キッド・クディ)に特に影響を受けたというケビンが、カニエのファンサイト” KanyeToThe “ で出会ったメンバーを中心に結成したのがブロックハンプトンだ。ブロックハンプトンはクルー内にシンガー、ラッパー以外にもDJやフォトグラファーなど様々なスキルを持ったメンバーが在籍する新世代ヒップホップ・クリエィティブ集団。ケビンが地下室で考えたイルなシットが現実になった、まさに” the illest(最高にイル )” なクルーて訳だね。
「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.68のトリを飾るのは” ill “といえば、やはりこの人、そしてこのアルバムでしょう。The Illest、Nasのファースト・アルバム「Illmatic」から「It Ain’t Hard to Tell」を紹介。
③Nas 「It Ain’t Hard to Tell(1994)」
School a fool well, you feel it like Braille. It ain’t hard to tell, I kick a skill, like Shaquille holds a pill. Vocabulary spills, I’m Ill plus Matic. I freak beats, slam it, like Iron Sheik.
「バカをしっかり教育。まるで点字みたいな感覚。難しいことじゃねぇよ。スキルをキック。まるでシャキールが持ってるピル。ヴォキャブラリーをスピルする。オレなら ”イル ” プラス “ マティック “。ビートをビビらせて、叩きのめす。まるでアイアン・シーク。」
アルバム・タイトルの「Illmatic(イルマティック)」はナズの地元、Queensbridge(クイーンズ・ブリッジ)のスラングで「最高にイル」という意味。
ナズはでアルバムタイトルに「Illmatic」を選んだ理由として当時収監されていた友達、「Illmatic Ice」に捧げるという意味を込めたためとリリース当時のインタビューで話している。またナズの大親友であり、ナズが駆け出しの頃に銃撃に巻き込まれ亡くなってしまった「Ill Will」の名前も「Illmatic」の楽曲の中で何度も挙げられている。ナズにとって「ill」という単語は本当に特別な意味を持つものだったんだ。