みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。
今回取り上げるのは映画『オール・アイズ・オン・ミー』。さまざまなラッパーにいまなお影響を与えてるヒップホップアイコン・2パックの生涯を描いた伝記映画だ。
『オール・アイズ・オン・ミー』ってどんな映画?
25歳の若さで亡くなった伝説のラッパー、2パックの生涯を映画化した作品。ブラック・パンサー党のメンバーだった母親のもとに生まれ、ラッパーを志した2パックは1991年にデビュー。ある日スタジオで強盗に襲われ5発の銃弾を浴び、急死に一生を得た2パックは、かつて親交を深めていたノートリアス B.I.Gの仕業だと思い込む。この事件をきっかけにヒップホップ東西抗争が勃発し…。
『オール・アイズ・オン・ミー』を観るべき5つの理由
①2パックの視点で、彼の生涯を追体験
波乱万丈な人生を歩み、25歳という若さでこの世を去った2パックは、さまざまなラッパーに影響を与え、いまも伝説として君臨している。そんな彼に関する映画は多く作られているが、本作の特徴は徹底的に「2パックの声」を映画に落とし込んだこと。
プロデューサーのL・T・ハットンは、2パックの過去のインタビューでの発言をすべて集めてデータベース化することからはじめ、それをもとに脚本を組み立てていった。
だからこの映画は他人が語る2パックではなく、2パック自身による伝記映画となった。彼の視点から幼い頃の体験や、女性暴行事件逮捕の裏側、東西海岸ヒップホップ抗争の真実が語られているんだ。死後20年経って公開されたこの映画は、2パックを語る上では欠かせない作品になっている。
②2パックに影響を与えた女性の存在
2パックの表現に、大きな影響を与えた2人の女性。それは母親のアフェニ・シャクールと親友のジェイダ・ピンケットだ。
彼の母親と義父はブラックパンサー党のメンバーで革命家だった。ブラックパンサー党はアフリカ系アメリカ人を人種差別や暴力から守るために立ち上がった自衛集団。母親は逮捕と収監を繰り返し、2パックを妊娠中も刑務所に収監されていたほどアクティブなメンバーだった。警察と対立していたブラックパンサー党のメンバーだった両親が、警察に抑圧される姿を見ながら、2パックは育ったんだ。
この経験が彼の表現の基盤になり、アメリカの黒人たちの過酷な現実を歌うリリックにも現れていく。やがて革命家の両親に育てられた2パックは、ヒップホップの革命児として君臨することになる。
そして女優のジェイダ・ピンケットは、ボルチモアの美術学校で2パックとともに演劇を学び、現在はウィル・スミスの妻でもある人物。2パックと彼女は恋愛関係にはならなかったが、唯一無二の親友としてお互いを高めあっていった。家庭の事情で引っ越すことになった2パックが、ジェイダに向けた詩が素晴らしく、のちの彼のラップの才能を感じさせるものになっている。冒頭を紹介しよう。
You are the omega of my heart.
君は心の終着駅
The foundation for my conception of love.
愛を教えてくれた人
When I think of What a black woman should be.
It’s you that I first think of.
理想の黒人女性は俺にとって君のこと
続きは映画で確かめてみてね。
③2パックの遺作アルバムが映画タイトルに
タイトルの「オール・アイズ・オン・ミー(All Eyez On Me)」は、2パックの遺作となった4枚目のアルバムタイトルから引用されている。このアルバムは、ファン女性への性的暴行で有罪判決を受けて刑務所に収監されていた2パックが「デス・ロウ・レコード」と契約し、保釈後にわずか2週間で作り上げたアルバムだ。
「オール・アイズ・オン・ミー」は、「すべての視線が俺に注がれている」という意味で、まさにその時の2パックの状態を表した言葉。警察や敵対する連中には常に目をつけられ、2パックを賞賛する人たちも常に彼の動向を追っている。みんなが自分の動きに注目(または監視)していることから付けられたタイトルだった。
結果的に遺作となったこのアルバムは、これまで1000万枚を超えるセールスを記録しているメガヒット作品になった。才能があるがゆえに人々の注目の的となり、誹謗中傷も賞賛も同じくらいたくさん浴びてきた2パックの生涯を、映画としてもよく表しているタイトルだよね。
④まるで生写し!? 2パックを演じた無名の新人
主人公の2パックを演じたのは、ディミートリアス・シップ・Jr。ライブシーンでエキストラたちは彼が登場すると涙したほど、顔と身のこなしが2パックにそっくりの人物。
彼はなんと演技未経験だったが、4000人のオーディションでまさかの主役に大抜擢。無名の俳優を起用したことについて、ベニー・ブーム監督は、まっさらな俳優が2パックを演じることで、余計な情報を入れることなく彼を2パックとして見ることができると語っている。
そんな彼の父親は、実は2パックと関わりがある。2パックのアルバム『The Don Killuminati:The 7 Day Theory』の制作に関わっていたり、2パックが俳優として覚醒した映画『ジュース』のいくつかのサントラ曲もプロデュースしていたんだ。顔もそっくりな彼が2パックを演じたのは必然だったかも?
2パックと敵対してしまうノトーリアスB.I.G.を演じるジャマール・ウーラードは、映画『ノトーリアスB.I.G.』でも彼を演じている人物。他にもシュグ・ナイトやドクター・ドレなど、2パックを語る上で欠かせない人たちになりきった役者たちがたくさん出てくるよ。
⑤ついに2パック襲撃の犯人が逮捕!?
2023年9月30日に、世界に衝撃のニュースが駆け巡った。それは27年越しに2パックを射殺した犯人が逮捕されたというニュース。
25歳の若さで亡くなった2パックは、1996年9月7日に、横付けされたキャデラックから発砲を受けて、16日に帰らぬ人となった。殺人罪で起訴されたのは、ギャングの元リーダー、ドウェイン「キーフィー・D」デイヴィス被告。デイヴィス被告自身が2018年に発表した回顧録で2パック殺害事件の有力情報があったことがきっかけになった。
目撃者たちもみな口を閉ざしていたことから、27年もの間犯人逮捕に至っていなかったため、このニュースはアメリカでも大きく取り上げられることに。ヒップホップファンたちにも大きな衝撃をもたらした。
いまもヒップホップアイコンとして、人々の心の中に生き続けている2パックの伝記はマストウォッチだよ!
画像出典元:パルコ
配信先:U-NEXT