映画 『X-MEN』を観るべき5つの理由|ストリートヘッズのバイブル Vol.63

ヒーローアクションと思いきや、テーマはマイノリティ迫害!? 異端のマーベル超大作!

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。

今回取り上げるのは映画『X-MEN』。20年以上も続いているヒーロー・アクション・シリーズだ。

『X-MEN』ってどんな映画?

遺伝子の突然変異によって、超能力を持って生まれた「ミュータント」。彼らは見た目や能力によって人間に恐れられ差別されていた。そんな人間社会を超能力で支配しようとする過激なテロ組織「ブラザーフッド」が現れる。人間社会との共存を目指す「X-MEN」は、彼らの恐ろしい野望を阻止しようとするが…。

『X-MEN』を観るべき5つの理由

①一見するとヒーローアクションだが..?

ヒーローといえば超人的な能力で人々を救う人気者というイメージだが、X-MENで描かれるヒーローたちは能力を持ってるがゆえに差別される対象だ。ミュータントを守るために、超能力を正しく使い人間社会との共存を目指す「X-MEN」と、逆に超能力で人間社会を支配しようとする「ブラザーフッド」の正反対のミュータント組織が対立する世界。

ミュータントの超能力は、天気や炎を操れるものがいたり、人の意志を操れたり、目からビームが出たりとさまざま。「ブラザーフッド」が人間社会を憎み支配しようとするのは、「X-MEN」のミュータントよりも、青い肌をしていたり牙が生えてたりとひと目で人間ではないことがわかるところが起因している。外見が原因でよりひどい差別を受けたことによって、憎しみを膨らませていったんだ。

特別な能力を持っていたり、肌の色や外見が違ったりで差別を受けることは、現実世界でも起きていることだよね。肌の色での隔離と言えば、南アフリカで黒人と白人の隔離が合法的に行われたアパルトヘイト制度とも重なる。そう、実は『X-MEN』は現実世界に対する痛烈な風刺映画。人種差別や障害者差別をテーマにした作品なんだ

②キング牧師とマルコムXがモデル!?

『X-MEN』はマーベル・コミックの代表的な原作者スタン・リーが生み出した物語。彼の物語づくりにおけるポリシーは「人種や性別、宗教に関わらず、誰でも楽しめる物語」であること。そして「憎み、不寛容、偏見」を許さないこと。そのポリシーがもっとも色濃く出ていたのが『X-MEN』なんだ。

原作コミックが発行された1963年は、アメリカで公民権運動が行われていた時期。1922年生まれのスタン・リーはもろに公民権運動の影響を受けてX-MENの物語を作ったため、対立する「X-MEN」と「ブラザーフッド」のリーダーは、公民権運動で名を馳せたリーダーたちがモデルだと言われている。「X-MEN」のリーダー、プロフェッサーXは非暴力を掲げたキング牧師、「ブラザーフッド」のリーダー、マグニートーは差別と戦うためなら暴力もいとわないとしたマルコムXだ。

差別と戦う目的は同じだが、アプローチが違った2人の指導者。キング牧師とマルコムXは親交を深める前にマルコムXが暗殺されてしまったが、プロフェッサーXとマグニートーはもともと友人同士。お互いのことをよく知ってるがために、お互いの思想が相入れないことを認めている。

シンプルな勧善懲悪ではなく、お互いの違いを認め合いながらどう生きていくかを問うたこの作品は、それ以前のアメコミ映画とは違った新しいヒーロー像を打ち出したんだ。

③ヒュー・ジャックマンの出世作

X-MENはちゃんと観たことないけど、長い鉤爪で戦うミュータント、ウルヴァリンは知っているという人も多いかもしれない。そんなウルヴァリンを演じたのは、本作がハリウッドデビュー作だったヒュー・ジャックマンだ。

凄まじい肉体改造をして、どこか影があるヒーローを演じたヒュー・ジャックマン。『X-MEN』をきっかけにスターダムを駆け上がり、それ以降ずっとウルヴァリンを演じている。彼にとって『X-MEN』は出世作でもあり代表作にもなった。

『X-MEN』以降も『レ・ミゼラブル』や『グレイテスト・ショーマン』などのヒット作に出演。ヒーローを演じると、どうしてもイメージが固定されてしまうため、「ヒーローを演じると他の作品では成功しない」という、ハリウッドのジンクスを打ち破っている名俳優だ。

2017年の『ローガン』でウルヴァリン引退を宣言していたが、『デッドプール3』(2024年公開予定)でまさかの復活が発表された。これは観るしかないよね!

 

④X-MENがなければアベンジャーズもなかった!?

現在、アベンジャーシリーズなどのアメコミ映画が人気を博しているが、『X-MEN』の公開以前、アメコミ映画はニッチな層に向けての映画とされていた。『X-MEN』も失敗に終わるとささやかれていたが、蓋を開けてみれば大ヒット。

その背景には監督のブライアン・シンガーと、原作者のスタン・リーのやりとりがあった。映画化にあたり原作者であるスタン・リーに相談したブライアンは、スタンから「自分なりにキャラクターを掘り下げるといい」とアドバイスを受けて、出来上がっていた脚本をイチから書き直したそう。

その結果、複雑な背景と想いを持つミュータントたちの個性が描かれ、マイノリティの迫害をテーマにした本作は、これまでのアメコミ映画にはなかった作品が生まれることに。そしてアベンジャーシリーズへと続く、マーヴェル映画ブームを作りだしたんだ。

⑤20年以上愛される人気シリーズ

ハリウッドでは人気が出ないとされていたアメコミ映画『X-MEN』も、今や大人気シリーズに。X-MENの過去やキャラクターを掘り下げたスピンオフ作品などが制作され、今もシリーズが続いている。

さらに2022年に公開された、同じマーベルコミック原作のアベンジャーシリーズの『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』でプロフェッサーXが登場。X-MENの世界とアベンジャーズの世界がこれから交わっていくのか!?という期待が高まった。マーベルファンからすると、まさに夢の共演。

20年以上続いている人気シリーズの第1作目「X-MEN」は単体作品としてもおもしろさ抜群。ぜひ観てみてね!

画像出典元:20世紀スタジオ

配信先:Disney+