AI研究者でありDJ。経営者であり、ビートメイカー。いくつもの顔を持つクリエイター・徳井直生とは?

日本を代表するプロデューサー、Nujabes氏との友情や秘蔵エピソードも!

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは、AIを使ってアートや音楽の可能性を広げる株式会社Qosmo(コズモ)代表取締役であり、メディアアーティストの徳井直生(とくい・なお)さん。VOl.3の今回は徳井さんのAI研究者、そしてアーティストとしてのキャリアについて、また親交があった日本を代表するプロデューサー、Nujabes氏との秘蔵エピソードをお伺いしました。

Vol.2の記事はこちら→音楽をこよなく愛するAI研究者・徳井直生の原点とは?

2000年代初めにインターネット上で音楽の実験!?

【パリに引っ越した当時の写真 (2004年)】

レペゼン:
徳井さんは大学院を卒業された後、どういうキャリアを歩まれたのですか?

徳井直生:
卒業後の2004年から、フランスのパリにあるソニーのコンピュータサイエンス研究所で、客員研究員として働きました。就職先が見つからずどうしようかと悩んでいたところ、インターンの延長で拾ってくれたかたちです。

レペゼン:
具体的にはどんなことをされていたんですか?

徳井直生:
当時実験してたのは、ただインターネットで音楽をダウンロードするとかではなくて、インターネット上で、人と一緒に音楽を聴くとか、人と一緒に音楽を作るといったことを研究してました。例えば僕がリズムを、他の人がメロディを打ち込んで、同時にネット上でコラボレーションするとか。

レペゼン:
すごい…!
2000年代前半にそんなことを!

徳井直生:
今考えたら、AIってほどでもないんですが、一部自動的に音楽を生成するみたいな実験もやってましたね。

日本を代表するプロデューサー、Nujabes氏との友情

【徳井さんがDJを始めた頃の写真】

徳井直生:
僕は2004年から2年弱、フランスに住んでて。
だからジュンさん(Nujabes)とは時々連絡を取り合ってて、彼がファッションショーのDJでパリに来た時とか、一緒に遊んだりもしましたね。

Vol.1はこちら→Nujabesと共に楽曲制作!?異色のキャリアを持つAI研究者、徳井直生とは?

レペゼン:
その時代も交流は続いてたんですね!

徳井直生:
そうですね。2年ぐらいしてパリから帰ってきた後も、時々一緒にご飯行ったりしてたんですけど、お互いに仕事も忙しくて、そんなに頻繁には会えず。今考えたら、もう少し早く日本に帰ってきてたら、もうちょっといろいろやれたのかなと思ったりもします。あとはこれはすごく個人的なことですが、僕の結婚式の二次会のDJ、ジュンさん(Nujabes)がやってくれて。

レペゼン:
すごい!!

徳井直生:
その時にご祝儀、ポンって10万円くれたんですよ。ただ残念ながら僕離婚しちゃって。
離婚したよって彼に伝えたら、最初に言われたのが「大変だったね」じゃなくて「オレの10万円返して」。

レペゼン:

徳井直生:
彼なりのジョークなんですよね笑
細かいところにこだわるジュンさんらしいなって思って。
今となってはとてもいい思い出です。

名門レーベル・PROGRESSIVE FOrMからのアルバムリリース、そして音楽とテクノロジーの融合

レペゼン:
徳井さんは大学時代から楽曲制作に取り組まれていたと思うのですが、大学院時代の2003年にはDJ KENSEIさんや青木孝允さんが所属されていた日本のエレクトロニカシーンを語る上で外すことができないレーベル「PROGRESSIVE FOrM」*1からアルバムを出されてますよね?

*1
PROGRESSIVE FOrM ・・・2001年に発足したエレクトロニカのレーベル。青木孝允と高木正勝によるユニットSILICOMの「SILICOM」やDJ KENSEI、D.O.I、nikからなるグループ、INDOPEPSYCHICSでのリリースなど非常に実験的なサウンドを多く生み出した。

徳井直生:
そうですね、ありがたいことに2003年に「Mind The Gap​​」というアルバムを出させてもらってます。自分からデモテープを送ったら、気に入って頂けたみたいで。

徳井さんのアルバム『Mind The Gap​​』

レペゼン:
すごいですよね。
音楽だけでご飯を食べていこうとは思わなかったんですか?

徳井直生:
そこまではなかったですね。
僕は好きな音楽がだいぶ偏っているので笑
それだけで食っていくのは難しいかなと思ってました笑

レペゼン:
なるほど笑

徳井直生:
あと音楽はもちろん好きだけど、やっぱりテクノロジーと音楽を関連させたことがやりたくて。僕の人生のテーマはやっぱり「テクノロジーがどういうふうに人の創造性を変えていくか」なんですよね。

レペゼン:
テクノロジーが音楽制作も変えていくと?

徳井直生:
そうですね。やっぱりAIを使うことで、作曲家が予測できないようなリズムが生まれるんですよ。例えば、僕が好きなAutechre(オーテカ)というアーティストはプログラミングを楽曲制作に取り入れてますが、音色とかリズムコードとか、アーティストが全部コントロールできているかといったら、そんなことなくて。
システムを作っているのは本人なんだけど、そこで生まれてくるリズムとかって本人のコントロール外なんです。

レペゼン:
アーティストも予想しなかったものが出てくるということですか?

徳井直生:
そうなんです。それがめちゃくちゃ面白い。
ジュンさん(Nujabes)も多分それを考えてたんじゃないかな。彼と出会った「Max/MSP」というソフトウェアの勉強会もそういう目的意識で参加したんだと思います。

Vol.1はこちら→Nujabesと共に楽曲制作!?異色のキャリアを持つAI研究者、徳井直生とは?

徳井直生:
AIを使うことで、自分達が想像できないような新しいリズムであったり、音色だったりが生まれるんじゃないかという。その好奇心が自分のAI研究の根底にはありますね。

 

音楽とテクノロジーの融合をテーマに独自のキャリアを歩み始めた徳井さん。次回は現在経営されている株式会社Qosmoの仕事内容や、DJとしての新たな挑戦について聞いていくよ!お楽しみに!

プロフィール

  • 徳井 直生

    徳井 直生

    アーティスト/研究者。AIを用いた人間の創造性の拡張を研究と作品制作の両面から模索。アーティスト、デザイナー、AI研究者/エンジニアなどから構成されるコレクティブ、Qosmo(コズモ)を率いて作品制作や技術開発に取り組むほか、23年7月設立のNeutone(ニュートーン)では、AIを用いた新しい「楽器」の開発を手がける。2021年1月には、これまでの活動をまとめた『創るためのAI — 機械と創造性のはてしない物語』(BNN)を出版し、2021年度の大川出版賞を受賞した。慶應義塾大学SFC特別招聘准教授。博士(工学)。

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