音楽をこよなく愛するAI研究者・徳井直生の原点とは?

日本を代表するトラックメイカー・Nujabes氏との楽曲制作のエピソードも紹介!

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月のゲストは、AIを使ってアートや音楽の可能性を広げる株式会社Qosmo(コズモ)代表取締役であり、メディアアーティストの徳井直生(とくい・なお)さん。VOl.2の今回は親交があったという日本を代表するトラックメイカー・Nujabes氏との楽曲制作や、AIを使ったクリエイションを行う徳井さんの原点についてお伺いしました。

Vol.1の記事はこちら→Nujabesと共に楽曲制作!?異色のキャリアを持つAI研究者、徳井直生とは?

音楽をこよなく愛するAI研究者・徳井直生のキャリアとは?

レペゼン:
現在は株式会社Qosmo(コズモ)の代表として、多くの企業にAIシステムを提供されてる徳井さんですが、若い頃からAIなどの先端テクノロジーには興味があったんですか?

徳井直生:
親が理科の先生だったのもあって、科学は好きでしたね。
ただ元々本当は車が好きで、車のエンジニアになろうと思ってたんです。
なので大学入った時はF1のエンジニアになりたいと思ってました。

レペゼン:
そうなんですね!

徳井直生:
ただ大学時代、音楽始めたての頃にちょうどインターネットが出てきて。
インターネットに触れるようになって、情報技術とかテクノロジーと文化みたいなものがぶつかる部分って面白いなと。そこからAIの研究に興味を持つようになりましたね。
DJはモテたいから始めたんですけど笑

レペゼン:

大学院を卒業後は、ソニーのコンピュータサイエンス研究所で研究員をされると思うのですが、いわゆる一般企業に就職とかは考えなかったんですか?

【研究員時代 パリにて】

徳井直生:
なんかどうも会社で普通に働いているイメージが沸かなくて。
結局会社が作りたい製品の開発とかいうことになるじゃないですか。それよりは、自分でテクノロジーと音楽を組み合わせてなにか作品を作りたいという気持ちが強かったので、仕事と研究を組み合わせられる仕事を選びましたね。

徳井直生が振り返る伝説のプロデューサー、Nujabesの素顔とは?

2003年、Nujabes氏が主催したイベントの様子。右がNujabes氏、左はNujabes氏の楽曲「Lady Brown」に参加したCise Starr。

レペゼン:
大学時代に、岐阜の大学で行われたプログラミングの勉強会でNujabesさんと出会われたわけですが、その後も交流は続いたんですか?

Vol.1はこちら→Nujabesと共に楽曲制作!?異色のキャリアを持つAI研究者、徳井直生とは?

徳井直生:
そうですね。東京に戻ってからも毎週会ってました。
僕は僕でテクノ系の音楽を作っていたのですが、一緒に何かやろうよってなって。彼のスタジオに毎週水曜日に行って、ずっと一緒に音楽を聴いて、実験してみたいな。

レペゼン:
楽しそう!

徳井直生:
当時ジュンさん(Nujabes)は「Guinness Records」というレコード店を経営してたのですが、お店は店長さんに任せて、普段は音楽制作に集中してて。
だから水曜日に彼のとこに行って、今週聴いた音楽で良かったものを言い合ったり、レコ屋にレコードを買いに行ったりしてましたね。

レペゼン:
Nujabesさんはどんな曲を買われてたんですか?

徳井直生:
僕といるときは、ヒップホップは買わなくて。
誰も知らないような古いジャズやブラジル音楽をサンプリング用に買ってましたね。もっと色々教えてもらっておけば良かったと後悔しています。あとは当時「エレクトロニカ」と呼ばれていた、プログラミングを使った複雑な音楽を一緒に買ってました。彼もそういう音楽に興味があったから、「Max/MSP」の勉強会に来てたんだと思います。
彼自身はそんなに「Max/MSP」のプログラミングができるようにはなってなかったけど、新しい刺激が欲しかったのかなと。

レペゼン:
実際どんなお人柄だったんですか?

徳井直生:
基本的にはすごくおおらかで、全然えらぶらない人でした。
ただ所々すごく完璧主義、めちゃくちゃ細かいところがあって。
なんかそこも面白かったですね。

レペゼン:
そうなんですね!

徳井直生:
例えば僕がプログラミングを使って曲を作ると、
「なんでこの音になるの?」とか「なんでこの音色を選んだの?」とか、
よく「なんで?」って聞かれました。
僕は別にそんなにこだわらなくてもいいじゃんみたいに思ってたんですが笑

レペゼン:
その音にした理由を知りたいって感じなんですね!

徳井直生:
あとご飯行く時も「なんで今日このレストランなの?」とかもよく言ってましたね笑
そこ!?みたいな笑

レペゼン:
なるほど笑
やはり何にでもすごくこだわる方だからこそ、ああいった素晴らしい音楽が作れたのかもしれませんね。

徳井直生:
そうですね。
でも基本的に本当におおらかな人で。
部屋にもいつもレコードが散らばってて。
出会ったのが、2001年だったので、3年くらいは本当に毎週会ってましたね。

Nujabes氏とのユニット「Urbanforest」

レペゼン:
実際に、一緒に曲を制作されたりはしたんですか?

徳井直生:
1曲だけ。
「Urbanforest / Nujabes & Nao Tokui – Rotary Park」という名前で出してます。

レペゼン:
「Rotary Park」は徳井さんがプログラミングされたんですか?

徳井直生:
そうですね。プログラムを組んで、あるルールに従ってリズムが変化するようにしてます。
当時、DJ KRUSHさんとかDJ Shadowさんが好きで。ちょっとそんな感じのテイストも意識してますね。

レペゼン:
確かにちょっとぽいですね。
Nujabesさんはどこを担当されたんですか?

徳井直生:
音色の選択とか、ボーカルサンプルを選んだりとか。
あと最終的なミックスもですね。プログラミングは一つの要素で、曲にまとめたのは彼です。

レペゼン:
なるほど。非常に興味深いです。

徳井直生:
当時は「Urbanforest」という名前で多分2、3回はライブしたんじゃないかな?
彼がDJして、僕は自分が作ったソフトでプレイしてましたね。

 

大学で研究に取り組みながら、プログラミングと音楽を組み合わせた楽曲制作に取り組んでいた徳井さん。次回はパリでの研究員時代の話やNujabes氏の秘蔵エピソードなどを聞いていくよ!お楽しみに!

 

プロフィール

  • 徳井 直生

    徳井 直生

    アーティスト/研究者。AIを用いた人間の創造性の拡張を研究と作品制作の両面から模索。アーティスト、デザイナー、AI研究者/エンジニアなどから構成されるコレクティブ、Qosmo(コズモ)を率いて作品制作や技術開発に取り組むほか、23年7月設立のNeutone(ニュートーン)では、AIを用いた新しい「楽器」の開発を手がける。2021年1月には、これまでの活動をまとめた『創るためのAI — 機械と創造性のはてしない物語』(BNN)を出版し、2021年度の大川出版賞を受賞した。慶應義塾大学SFC特別招聘准教授。博士(工学)。

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