Nujabesと共に楽曲制作!?異色のキャリアを持つAI研究者、徳井直生とは?

ダンスミュージックの新たな地平を切り拓く徳井氏の原点とは?

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについてインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月はAIを使ってアートや音楽の可能性を広げる株式会社Qosmo代表取締役であり、メディアアーティストの徳井直生(とくい・なお)さんにお話を伺いしました。日本を代表するトラックメイカー、Nujabes氏とも親交があり、共に音源制作も行っていた徳井さんのヒップホップ・キャリアとは?

前回までの記事はこちら→どん底から芸人人生をかけ、東京へ。ゆんぼだんぷ・カシューナッツの成り上がりストーリーとは?

AI研究者であり、DJ。異色のキャリアを持つクリエイター、徳井直生とは?

レペゼン:
自己紹介をお願いします。

徳井直生:
AIの研究をしている徳井直生(とくい・なお)です。AI技術を音楽やアートの分野に活かすための研究を2000年代前半からずっとやっていて、今は株式会社Qosmo(コズモ)という会社を立ち上げ、音楽制作のためのAIツールや企業向けのAIシステムの開発を行っています。
ヒップホップやテクノなどの音楽も昔から大好きで、DJもしていて、ジュンさん(Nujabes)とも昔一緒に音楽を作ってました。

レペゼン:
なにやらすごい回になる予感しかしないです。
Nujabesさんとのエピソードも色々伺いたいのですが、まず会社でされている事業について教えて頂けますか?

徳井直生:
主に企業にAIの技術を提供しています。
例えば、Pioneer DJの「rekordbox」っていうソフトウェアがあるんですが、その中の曲を解析するAIシステムの一部はうちが作ってます。
あとはUSENさんが運営している店舗への音楽配信システム。AIが店舗のオーナーさんやレストランの雰囲気、客層を判断して、合った曲を選曲するアルゴリズムを作っています。

レペゼン:
すごい次元の話です….
私たちが普段の生活で接している様々なシステムを開発されているんですね。

徳井直生:
ありがたいことに、色々と携わらせて頂いてます。
ただ僕は結構DJとして世界中あちこち行ったりしてるんですけど笑

レペゼン:
その辺、めちゃくちゃ興味があります。
今回は音楽面から徳井さんの人生を振り返っていきたいんですけれど、そもそもヒップホップやDJにはいつ頃から興味を持たれたんですか?

徳井直生:
ヒップホップに興味を持ったのは高校生ぐらいですかね。一番最初にグッときたのは、高3の時に買ったNasの「ILLMATIC」。あのいなたい音にやられました。

レペゼン:
間違いないです。
そこからヒップホップにハマっていった感じですか?

徳井直生:
そうですね。
そこからA Tribe Called Questの「Midnight Marauders」やMobb Deep「The Infamous」辺りを聴き出して。それで大学入ってすぐターンテーブルを買ってDJを始めました。

レペゼン:
まさにヒップホップ黄金期。
その後はヒップホップDJとして活動されていったんですか?

徳井直生:
最初はヒップホップだったんですが、次第に実験的なダンスミュージックにハマっていって。
Aphex Twin(エイフェックス・ツイン)、Autechre(オウテカ)とかそっち系の、当時IDM(インテリジェント・ダンスミュージック)と言われていたジャンルです。

【Aphex Twin】

​【Autechre】

レペゼン:
わかりやすくいうとテクノみたいな感じですか?

徳井直生:
そうですね。
なので大学4年生ぐらいの時には完全にテクノ系のDJとして活動してました。で、自分でも曲を作りたいなって思い始めて。ジュンさん(Nujabes)と出会ったのはその辺りですね。

Nujabes氏との出会い

レペゼン:
Nujabesさんとはどのように出会ったんですか?

徳井直生:
音源制作を始めた時期に、大学でAIの研究室に入ることになったんです。昔からプログラミングとか科学技術みたいなものが好きで。
それで自分のやっている楽曲制作と、プログラミングをうまく結びつけられないかなと思っていて。

レペゼン:
90年代にそんなことを考えている人がいるとは。

徳井直生:
当時はあまりいなかったと思いますね。
で、その頃僕が好きだったテクノ・アーティストのAutechre(オウテカ)がプログラミングで音楽を作ってるという話を聞いたんです。どうやら「Max/MSP」というソフトウェアを使って、プログラミングで音楽を作ってるらしいぞと。

レペゼン:
なるほど。

徳井直生:
それで僕もそのソフトを学びたいと思って勉強を始めて。そしたらどうやら岐阜県の山の中にあるIAMAS(情報科学芸術大学院大学)という大学で、「Max/MSP」の勉強会が開かれるらしいという噂を聞いて。

レペゼン:
なんというマニアックな笑

Max/MSPのセミナー(2001年)

徳井直生:
実際に岐阜の山中まで行ったんですけど、「Max」を使っている人が30人ぐらいいて。ほとんど男でしたけど。

レペゼン:

徳井直生:
それでなんとなく空いてる席に座ったら、隣に小柄で人当たりのよさそうなお兄さんがいて。彼も何かの音楽を作ってるみたいな感じで仲良くなったので、飯でも食いに行こうってなったんです。

レペゼン:
なるほど。

徳井直生:
一緒に味噌カツ食べに行こうって彼の車でご飯屋さんまで乗せてくれたんですけど、その道中、彼が「最近こういう曲を作ってて」って聴かせてくれたのが、まだリリース前の「Luv(sic) 」でした。

【Luv(sic) 】

レペゼン:
ヤバすぎる…!
Nujabesさんだったんですね…!

徳井直生:
「なんだこれ!」と。僕も正直、それまで彼のこと知らなくて。
彼もまだまだアンダーグラウンドで、ヒップホップ通には知られている存在という時で。
もうとにかく、「Luv(sic) 」を聴かされてぶっ飛びましたね。

 

次回はNujabesさんとの交流、そして徳井さんのAIを使ったクリエイションついて聞いていくよ!お楽しみに!

 

プロフィール

  • 徳井 直生

    徳井 直生

    アーティスト/研究者。AIを用いた人間の創造性の拡張を研究と作品制作の両面から模索。アーティスト、デザイナー、AI研究者/エンジニアなどから構成されるコレクティブ、Qosmo(コズモ)を率いて作品制作や技術開発に取り組むほか、23年7月設立のNeutone(ニュートーン)では、AIを用いた新しい「楽器」の開発を手がける。2021年1月には、これまでの活動をまとめた『創るためのAI — 機械と創造性のはてしない物語』(BNN)を出版し、2021年度の大川出版賞を受賞した。慶應義塾大学SFC特別招聘准教授。博士(工学)。

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