番外編 2000年代名盤特集『Reflection Eternal – Train of Thought 』|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.170

ヒップホップの歌詞からストリートで使える英語を学ぼう

ライター:TARO

今回紹介するスラング

番外編

2000年代名盤特集『Reflection Eternal - Train of Thought 』
紹介アーティスト
Reflection Eternal
番外編 2000年代名盤特集『Reflection Eternal – Train of Thought 』|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.170
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WHAT’S UP,  GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.170は2000年代名盤特集。取り上げるのは、ブルックリンのMC、Talib Kweli(タリブ・クエリ)と シンシナティ生まれのプロデューサー、Hi-Tek(ハイ・テック)が組んだReflection Eternal(リフレクション・エターナル)の「Train of Thought」。タリブのコンシャスなラップの魅力が詰まったアルバムだ。

 

まず紹介するのは「The Blast」!

「The Blast」

Yeah, you pronounce my name (Kweli), any questions? オレの名前、クエリを発音してみな。質問はあるか? I bring many blessings with my man Hi-Tek マイメン、ハイ・テックにたくさんの祝福を。 And he from the Natti (Natti) 彼はナティ出身さ。 We make the sky crack, feel the fly track 空を割って、このフライなトラックを感じな。 Get your hands up like a hijack まるでハイジャックみたくお前の両手をハンズアップ。 Fists in the air for (Kweli) 拳を上げな。クエリのために。 Keep ‘em there like そして上げ続けな、 Natural mystic or smoke when the spliffs lit ナチュラルで神秘的、もしくはスモークする、スプリフに火がついた時みたく。 It’s a revolutionary (Party) word それは革命的(パーティー)な言葉。 They ask me what I’m writin’ for みんなオレが何のために書いてるのかって聞いてくる。 I’m writin’ to show you what we fightin’ for オレはオレたちが戦っているものを君たちに見せるために書いてるのさ。

タリブの名前のレクチャーと相棒であるハイ・テックへの賛辞から始まる「The Blast」の1stヴァース。“Natti(ナティ)”はハイテックの出身地である“ Cincinnati(シンシナティ)”の短縮語だ。その後の“We make the sky crack, feel the fly track(空を割って、このフライなトラックを感じな。)”で出てくる“ fly(フライ)”は「イケてる」という意味のスラング。つまりここで表現されているのは、“spliffs(スプリフ)” を吸って、ハイになって “ fly ” な曲を聴こうぜてことだね。そしてタリブが歌詞を書く理由は、周りの人々に自分たちが何と戦っているのかを示すため。彼のファースト・ネームである “Talib(タリブ)” はアラビア由来の名前で「探究者、研究者」を意味し、ファミリー・ネームである “ Kweli(クェリ)” は「真実、知識」を表す。つまり「タリブ・クエリ」とは「真実や知識を探究するもの」を意味するんだ。だから彼は他の黒人の人々に彼ら戦うべきものを見せるためにリリックを書いているんだ。

続いて紹介するのは「Africa Dream」! 

「Africa Dream」

We stand over the Atlantic, looking broad like a man’s shoulders 大西洋に立って、見渡す。まるで男の肩みたいだな。 The fire is trapped in a belly, ready to pop like canned soda 炎は腹の中に囚われていて、缶のソーダみたく弾ける寸前だ。 We outlasting, from middle passage オレたちは生き続けている、ミドル・パッセージの頃から。 Touched down in New York ニューヨークに到着して、 Cincinnatay! Big Ohio status what you thought シンシナティ、ビッグ・オハイオ、君が考えてた通りの身分さ。 Money it’s classic these bastards try to treat us like cattle マネー。クラシックさ。あのクソ野郎どものはオレ達を家畜同然に扱った。 So life has been a constant battle, battle だから人生は絶え間ない戦いの連続だったんだ、戦いのな。 Rising above the crabs in the barrel 樽の中のカニから這い上がる。 Way too used to living in death’s shadow 死の影の中で暮らすことに慣れすぎちまったよ。

ハタリブが見渡すのは、かつて奴隷貿易が盛んに行われた大西洋。 “ The fire is trapped in a belly(炎は腹の中に囚われていて)” が表しているのは、彼の心の中の怒りの炎。それはまるで振られた缶の炭酸飲料のように弾ける寸前だ。 “ We outlasting, from middle passage(オレたちは生き続けている、ミドル・パッセージの頃から。)” の部分で出てくる “ middle passage(ミドル・パッセージ)” とは、アフリカの黒人の人々を南北アメリカに運んだ奴隷船の航路を指す言葉。推定では約1200万人の黒人の人々がアフリカからこのミドル・パッセージを通って輸送され、内約200万人は輸送途中で亡くなったとされている。劣悪な奴隷船での航海を耐えて、なんとかアメリカに到着したとしても、そこで待ち受けているのは奴隷としての生活。黒人の人々は家畜同然に扱われる地獄のような日々を生き抜かなければならなかった。そして時代は下り、奴隷制が撤廃された現代でも黒人の人々の生活は楽になっているとは言えない。今だに貧困が原因による犯罪や薬物が蔓延した環境で生活している人も多い。 タリブがその次のヴァース、“ Rising above the crabs in the barrel(樽の中のカニから這い上がる。)” で歌っているのは、そんな状況の中でも自分を強く持って、這い上がることの大切さ。“ the crabs in the barrel(樽の中のカニ)” は心理学の用語で、「Crab Mentality(カニの心理)」と呼ばれる行動原理のこと。バケツの中にカニを数匹入れると、先に逃げようとするカニの足を他のカニが引っ張って、結局1匹もバケツから出ることができない現象が起きることから生まれた言葉だ。ゲットーやラップシーンでも足を引っ張ってくるやつはたくさんいるけど、自分はその中でも成り上がるぜという意味だね。 タリブがなぜそこまで成り上がりたいかというと、彼は “ Way too used to living in death’s shadow(死の影の中で暮らすことに慣れすぎちまった)”から。死が常に隣り合わせの社会を生き抜いてきたタリブのタフな現実を歌った1曲だ。

「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.170、2000年代名盤特集「Train of Thought」のラストを飾るのは「Memories Live」!

「Memories Live」

My remedy is ‘bringing back sweet memories’ オレの癒しはスイート・メモリーを思い返すこと。 Like the faces that are woven in the fabric of my consciousness 意識の布に織り込まれているフェイスたち。 From cities where making 21’s a big accomplishment 21歳になることが偉大な達成である都市から。 Like when my people understood their prominence オレの人々が自分たちの素晴らしさを理解したときみたく。 And my past life visions of the continent あの大陸のオレの過ぎ去ったビジョン。 Like the first time I saw KRS live, rockin’ it まるでKRSを初めて生で見た時みたいに、ロッキン。 I heard Resurrection by Common Sense コモン・センスの「レザレクション」を聞いた時。 Dominant in my psyche オレの精神を支配された。 I chose my direction like Spike Lee だからスパイク・リーのような道を歩むことを決めた。 To speak my life through mics, and I never take it lightly マイクを通してオレの人生を語って、絶対に軽んじることはないぜ。

人生を振り返っているタリブは21歳になったことを思い返している。 アメリカでは黒人男性が21歳になることは大きな意味を持つ。なぜなら多くは21歳になる前に犯罪に巻き込まれて亡くなってしまうから。アフリカン・アメリカンの若者が直面しているあまりに過酷な状況に打ちひしがれていたタリブだけど、その中で彼が希望を見出したのがヒップホップだ。KRS-Oneのライブを生で見て衝撃を受け、Commonのアルバム「Resurrection」を聞いて、大きな影響を受けた。だから彼はスパイク・リーのように差別や貧困に苦しむ多くのアフリカン・アメリカンの人々の現実をラッパーとして代弁することを決めたんだ。

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