chosen|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.342

ヒップホップの歌詞からストリートで使える英語を学ぼう

ライター:TARO

今回紹介するスラング

chosen

選ばれた、選ばれし者
紹介アーティスト
Common, Kanye West, Gang Starr
chosen|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.342
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WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」。Vol.342の今回取り上げる表現は「chosen」。「選ばれた、選ばれし者」といった意味の言葉だ。今回もUSラッパーたちのリリックから「chosen」の使い方をチェックしていこう!

まずはUSラップシーンを代表するリリシスト、Common(コモン)の 「Be (Intro) 」!

Common 「Be (Intro) ( 2005 )」

The chosen one from the land of the frozen sun
Where drunk nights get remembered more than sober ones

凍りついた太陽の大地から来た選ばれし者
そこは酔っ払った夜がシラフな夜よりもよく覚えていられる場所

詩的すぎるぜ…!
“the chosen one (選ばれし者)” とはコモン自身のことであり、“ the land of the frozen sun(凍りついた太陽の大地)”は彼の地元シカゴを表現した文章だ。
シカゴは年間を通して夏が短く、冬が長い。1月の平均気温は−10度くらいになるほどで、とても寒い地域なんだ。だから“the land of the frozen sun(凍りついた太陽の大地)”という表現でラップしているんだね。

そして、その地元、シカゴがどんな街かを説明しているのが、 where から後の文章。

そこは“drunk nights (酔っ払った夜)”が“ sober ones(シラフな夜)”よりも“get remembered more(よく覚えていられる)”場所ってことだね。

みんなも友達と遊んで酔っ払った夜って、意外によく覚えてたりするよね。

さすがリリシスト、コモン。地元を表現する歌詞が最高に美しいぜ。

続いて紹介するのはコモンと同じくシカゴ出身のラッパー、Kanye West(カニエ・ウェスト)の「POWER」!

Kanye West「Power(2010)」

The system broken, the school’s closed, the prison’s open
We ain’t got nothing to lose, motherfucker, we rolling
Huh? Motherfucker, we rolling
With some light-skinned girls and some Kelly Rowlands
In this white man world, we the ones chosen
So goodnight, cruel world, I’ll see you in the morning

システムは壊れてて、学校は閉鎖、でも刑務所は営業中さ
オレたちには失うものなんて何もない、かましてくだけ
かましてくだけさ
ライトスキンの女の子たちと、ケリー・ローランドみたいな子たちと一緒にな
この白人社会で、オレたちは選ばれたんだ
だから、おやすみ、残酷な世界。また朝に会おうぜ

ラッパー、作詞家としてのカニエの側面が見れるリリック。
カニエはアメリカの社会制度、教育制度が機能していないことを指摘しており、
そのせいで犯罪に手を染めてしまう貧困層の人が多いことに言及しているんだ。

そしてさらに彼が取り上げる問題が、黒人の方の肌色のトーンの問題。実はアメリカの黒人の方の中では肌色がlight-skinned(明るめの肌)か、dark-skinned(暗めの肌)かによって、周囲の人からの対応が変わったり、学校などではいじめを受けるなどの問題に発展することがあるということが言われており、非常に深刻かつセンシティブな問題として取り扱われているんだ。

カニエは彼の表現として、元々ビヨンセも所属していたガールズ・グループ、Destiny’s Child(デスティニーズ・チャイルド)で、グループの他のメンバーと比べると比較的dark-skinnedだったケリー・ローランドを例に挙げ、彼はどんな肌のトーンの女性も好きだということを言っているんだ。

そしてそういったシステム的問題、そして人種、肌の色による差別などがずっと続いているアメリカにおいて、彼は“自分たちこそが選ばれた存在( we the ones chosen)”と歌う。

So goodnight, cruel world, I’ll see you in the morning(だから、おやすみ、残酷な世界。また朝に会おうぜ)のラインには、“残酷な世界(cruel world)”に、一旦、“おやすみ(good night)”を言い、自分たちで新しい世界を作り上げようという力強いメッセージが込められているんだ。

「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」Vol.342のラストを飾るのはGang Starr(ギャング・スター)の「Family and Loyalty(2019)」から、フィーチャリングで参加しているJ.Cole(J・コール)のリリック!

Gang Starr「Family and Loyalty ft. J.Cole(2019)」

Meant to be protected, mentally we let this
Poison of Western philosophy make us sloppy
We forgot we are the chosen
From hip-hop to astronomy, they copy what we showed ‘em

守られるべきものなのに、オレたちは許してしまったのさ
西洋哲学の毒がオレたちを怠惰にさせることをな
オレたちは選ばれた者であることを忘れてしまったのさ
ヒップホップから天文学まで、あいつらはオレたちが見せてきたものをコピーしてる

J・コールがラップしているのは、西洋人によって破壊されてしまったアフリカ系の人々の文化のこと。

近世以降、ヨーロッパ諸国のアフリカ侵略と奴隷制によって、アフリカでは古代から築きあげてきた伝統的社会が破壊され、現在に至るまでの貧困と混乱が生み出された。

さらに多くの人が強制的に奴隷としてアメリカに連れていかれ、長きに渡り搾取され、虐げられために、アメリカ社会におけるアフリカ系コミュニティの貧困率の高さという深刻な問題が今も続いている。

ただJ・コールがアフリカ系の人々のことを“the chosen(選ばれし人々)”と歌っているように元々古代世界においてアフリカの人々は世界的に見ても、非常に独自性の高い芸術感覚や先進的な科学の知識を持っていたと言われている。

もちろん現在ではアフリカ系の人々はヒップホップという文化を生み出し、芸術の分野で素晴らしい活躍をしているよね。

だからこそコールが歌っているのが “From hip-hop to astronomy, they copy what we showed ‘em(ヒップホップから天文学まで、あいつらはオレたちが見せてきたものをコピーしてる)”の部分。つまりアフリカ系の人々が作り上げた文化を他の人種の人々が安易に外側だけ真似をしているということ。

もちろんヒップホップは今やユニバーサルなものになっているのだけど、やっぱり元はアフリカ系の人々の苦難の歴史から生まれているもの。

だからこそ安易な真似でなく、きちんと文化に敬意を払って、表現しないといけない。

文化を表現する上で最も大事にしたい意識をJ・コールは伝えているんだ。

【歌詞出典元】Genius

*訳は全て意訳です。

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