きっかけはIce Cubeのいかついラップ!? 元陸上選手・野口みずきがヒップホップヘッズになった原点

陸上の才能に目覚める一方で音楽にも夢中になった日々とは

ライター:ほりさげ

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについて全4回に渡ってインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。
今回のゲストは、アテネオリンピック女子マラソン・金メダリストの野口みずきさん。現在はマラソンのアドバイザー/講師として各地を巡る一方で、陸上の大会でDJを務めるなど、ヒップホップ好きとしても知られる野口さん!陸上の世界に飛び込んで頭角を表す一方で、ヒップホップやR&Bにハマっていった青春の日々を振り返っていただきました!

前回の記事はこちら → レース直前までラップを聴いて気持ちを高めていた!?アテネ五輪金メダリスト・野口みずきが語るヒップホップ愛

バトンパスが下手すぎて
短距離から長距離へ転向!?

レペゼン :
幼少期~学生時代の思い出もお聞きしたいと思います。ご出身はどちらなんですか?

野口みずき :
生まれたのは横浜なんですけど、2~3歳の時に三重県の伊勢に引っ越したんです。だから出身を聞かれたら「伊勢です」と言ってますね。

レペゼン :
三重県で子ども時代を過ごされたんですね!どんなお子さんだったんですか?

野口みずき :
インドアよりもアウトドアという感じの子どもでした。もう男の子たちとめちゃめちゃ走り回るような子で。人形遊びをしているよりも、どちらかといえば鬼ごっことか体を動かすような遊びが多かったですね。

レペゼン :
ではスポーツも幼い頃から何かされていたんですか?

野口みずき :
いや、小さい頃はスポーツは特にやってなくて、中学校に入って部活選びの時に陸上を選んだのが始まりです。

レペゼン :
中学からだったんですね!はじめは何の種目を選ばれたんですか?

野口みずき :
短距離ですね。でも途中から長距離に移りました。というのも、まずバトンパスが下手だったんです笑
あとは、市内の駅伝の練習に参加した時に、一緒に走っていた先輩たちよりもタイムが早かったんで、「これは長距離の方が向いているのかもしれない」ということで長距離に転向しました。それが中1の冬ぐらいです。

レペゼン :
長距離の選手になったのは、偶然でもあり必然でもあったんですね!笑
すぐ結果が出ていったんですか?

野口みずき :
いえ、そんなこともなかったですね。どちらかというと中学時代は全然目立たない選手でしたね。最終的に県で8番ぐらいでした。

レペゼン :
いやいや、中学から始めて、県8位は十分凄まじい実力ですよ!笑

3,000mは脅威の9分台!
頭角を表し始めた高校時代

レペゼン :
高校も陸上の推薦で進まれたんですか?

野口みずき :
そうですね。短距離をはじめ陸上全般が強い三重の高校から声をかけていただいて、推薦で進みました。そこの陸上部で頑張っているうちに、2年生くらいから急に成績が上がり出したんです。きっと当時の先生の指導とマッチしたんでしょうね笑

レペゼン :
才能が開花したんですね!高校時代は種目は引き続き長距離だったんですか?

野口みずき :
そうですね。メインは3,000メートルで、駅伝とかもやっていました。
で、高校3年になってからは、男子と一緒に練習するようになったんです。顧問の先生から「もう男子と一緒にやってもええやろ」って言われて笑

レペゼン :
当時から目を引くものがあったわけですね。
ちなみに高校生の頃は、3,000メートルのタイムはどれぐらいだったんですか?

野口みずき :
うーん、ベストタイムは9分40秒(*)だったかな?

※ … 現役中距離ランナーが運営するランニングブログ・『Unattached Runner』によると、2022年の都内の高校陸上女子の3000mの平均タイムは11分42秒。9分台の選手は実に3%!

レペゼン :
すごい!当時から凄まじいポテンシャルをお持ちだったんですね。

野口みずき :
でも、それぐらいのタイムだとなかなか大会の上位には食い込めないんですよね。だからインターハイの全国には、2年と3年で行きましたけど、どちらも予選落ちで終わりました。

レペゼン :
シビアな世界だ……。
でも2年連続で全国大会までは行かれたわけですよね。

野口みずき :
でも強豪がいっぱいいる中、スタートしてすぐに先頭をバーンと走ってしまうタイプだったんですよ!周りの選手に良いようにペースメーカーとして使われて、途中からズルズル落ちていくことも多かったです笑

レペゼン :
じゃあ中学から高校にかけては、すごく目立つような選手ではなかったんですか?

野口みずき :
そうですね。ただ、 2年か3年の時にいろいろ実業団の方が練習を見に来てくれたりしましたね。そして最終的に、6つか7つぐらいの実業団の方々が声をかけてくださいました。

レペゼン :
やっぱり相当注目されていたんですね!ご自身の中では、どういったところが評価を受けたんだと思いますか?

野口みずき :
物怖じしない走り方ですかね。さっきも言ったように、全国の大会でもスタート直後から先頭を走るようなタイプだったんで、そういうところが評価されたのかなって思います笑

レペゼン :
強気なマインドが評価されたんですね。

攻撃的でいて軽快なIce Cube
を聴いてヒップホップの虜に

レペゼン :
ヒップホップとの出会いについても改めてお聞きしたいです。これも中学からという話でしたね。

野口みずき :
はい。ラジオで聴いたり、兄が持っていたCDをこっそり聴いたりしたのがヒップホップとの出会いです。そのCDがIce Cube(アイス・キューブ)『Kill At Will』だったんですけど、そのアルバムが衝撃で。「これ、めっちゃかっこいい!」って思ったのを覚えています。そこからずっとアイス・キューブは大好きですね。

レペゼン :
ではヒップホップの入り口は、日本語ラップというよりUSからだったんですね。

野口みずき :
そうですね。その後スチャダラパーとかも好きになりましたが、はじめはUSのヒップホップの方が好きでした。

レペゼン :
アイス・キューブのどういうところに惹かれましたか?

野口みずき :
あのガツガツラップする感じですね。あとギャングスタラップってずっしりして、全体的にダークな雰囲気の曲も多いじゃないですか。でもアイス・キューブのあの踊れそうな感じの曲は、特に気に入ってリピートしていましたね。ブレイキンができそうな軽快なテンポと言いますか笑

【Ice Cube – Endangered Species】

レペゼン :
え!野口さんはブレイキンにも興味があるんですか?

野口みずき :
あります!パリ五輪の時とか、めっちゃ見てました。

レペゼン :
そうだったんですね。それこそ学生時代に、ブレイクダンスを真似て踊ることもあったんですか?

野口みずき :
いやいや、まさか!ただ見るのが好きなんです笑
最近、自分なりに踊ったりすることもありますけど、それはもうめちゃくちゃな自己流のダンスです笑

レペゼン :
それはそれで最高ですね笑

ソウル、R&B、ロックにユーロビート。
幅広い音楽に愛着を持つように

レペゼン :
お兄さんの影響でヒップホップに触れたということでしたが、ご家族も音楽好きだったんですか?

野口みずき :
そうですね。特に父がレコード好きだったこともあって、私が幼い頃から音楽がそばにありましたね。

レペゼン :
めっちゃ良いですね!お父様が集められていたレコードで印象的なアーティストはいますか?

野口みずき :
父親がよく聴いていたのは、Lionel Richie(ライオネル・リッチー)とかでした。

【 Lionel Richie – All Night Long (All Night) 】

レペゼン :
おお!渋いですね。
ではヒップホップ以外にもいろいろと聴かれていたんですね。

野口みずき :
そうですね。学生時代はロックとかユーロビートも流行っていたので、よく聴いていました。
それからR&Bのアーティストも好きで、Boyz II Men(ボーイズ・トゥー・メン)は、音楽好きな友達に教えてもらって聴いていました。

【 Boyz II Men – Doin’ Just Fine 】

レペゼン :
お話を聞いていると、野口さんの周りには音楽好きが多い印象がありますね。

野口みずき :
そうなんですよ。実業団に行った後も、音楽好きな後輩と出会ったりして。周りの人に恵まれています笑

次回は、いよいよ実業団チームの仲間入りを果たし、輝かしいキャリアを積み重ねる頃のお話。マラソンの大事な局面に頭の中で流れたのは、映画『ワイルド・スピード2』のサントラとしても知られるあのラップソング!?

プロフィール

  • 野口みずき

    野口みずき

    三重県出身の元陸上競技選手。2004年アテネオリンピック女子マラソン金メダリスト。2005年のベルリンマラソンで樹立した2時間19分12秒の日本記録は、その後19年間にわたり破られることのないタイムに。小柄な体躯から生み出すダイナミックなストライドで世界の頂点を極めた。ヒップホップ好きとしても知られ、練習前や試合前の集中を高める場面ではラップソングを好んで愛聴するほど。現役引退後も、解説者/アドバイザーとして日本各地で幅広く活躍中。

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