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「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのはアメリカにおける大麻の歴史を取り上げたドキュメンタリー、『グラス・イズ・グリーナー 大麻が見たアメリカ』!
『グラス・イズ・グリーナー 大麻が見たアメリカ』とは?
マリファナ、ウィード、ガンジャ… 様々な名前で呼ばれ、世界で最も議論を呼ぶ嗜好品である大麻。危険なドラッグとして厳しく取り締まられてきた背景を持つ一方、医療や娯楽目的で多くの人に親しまれているものであるよね。『グラス・イズ・グリーナー 大麻が見たアメリカ』ではそんな大麻の歴史に注目。 『Yo! MTV Raps』の司会としても知られるヒップホップ・レジェンド、Fab Five Freddy(ファブ・ファイヴ・フレディ)がナレーターとなり、ブラック・ミュージックが切り開いてきた大麻の可能性、そして厳しい取締りの背景にあった黒人に対する差別と偏見の歴史をアーティストや専門家へのインタビューを通して紐解いていく。
①アメリカにおける大麻問題とは?
日本でも昨今さまざまに議論がなされる大麻。ヒップホップミュージックからの影響、またCBDなどの普及もあり、少しずつ関心や認知度は高まってきており、「アメリカでは合法なのに、日本では厳しく取り締まり過ぎ」という意見を聞くことも多くなってきてるんじゃないかな?
ただ一見先進的に見えるこのアメリカの大麻事情には、一概に日本の状況と比較できない深刻な問題が隠されている。それがアメリカが抱える最大の社会問題、人種差別だ。実はアメリカでは長きに渡り、有色人種への「取締りの口実」として大麻が利用されてきた背景がある。アメリカにおける大麻の所持率は黒人と白人で大差がないにも関わらず、黒人は白人に比べ、逮捕される可能性は3.6倍以上。あきらかな“レイシャル・プロファイリング(人種を理由にした差別的な取締り)”によって多くの黒人が逮捕され、人生を台無しにされるケースが今でも日々起きているんだ。
『グラス・イズ・グリーナー 大麻が見たアメリカ』はそんなアメリカの大麻事情を徹底調査。大麻と差別の歴史、そして大麻文化に密接に関わってきたブラック・ミュージックについて学ぶことができる良質なドキュメンタリーなんだ。
②大学教授など幅広い識者への
徹底した取材から紐解く近代大麻史と人種問題
このドキュメンタリーの最大の見どころは、アーティストはもちろん、大学教授や作家など幅広い識者への丁寧なインタビューを通してアメリカにおける大麻の取り扱いについて知ることができること。特に専門家たちへのインタビューは非常に貴重。
ジョン・ジェイ刑事司法カレッジのバズ・ドライシンガー教授やコロンビア大学で神経精神薬学を研究するカール・ハート教授など、大麻研究における全米トップレベルの識者たちから大麻について学ぶことができるのはこのドキュメンタリーの大きな魅力だ。
例えば元々「カンナビス」と呼ばれていた大麻を「マリファナ」というスペイン語的な呼称で呼び始めたのは大麻文化をメキシコ移民と関連付け、移民に悪い印象を連想させることが目的だったという説など、目から鱗の知識に触れれること間違いなし。
専門家たちが語る近代アメリカのおける大麻文化と差別の歴史は必見の価値ありだ。
③ジャズ・ミュージシャン達が切り開いた
嗜好品としての大麻史
大麻文化の発展に最も大きな影響を与えたのが、20世紀初頭ルイジアナ州ニューオリンズで発祥したブラック・ミュージック、ジャズ。『グラス・イズ・グリーナー 大麻が見たアメリカ』ではニューオリンズのジャズ・ヒストリーも振り返りながら、大麻とジャズの関わりを詳細に解説している。
1920〜1930年代当時、ジャズは最新の音楽であり、人種を超えて多くの人がその圧倒的にオリジナルなリズムに魅了されていた。いわばジャズ・ミュージシャンは現在のラッパーのような立ち位置だったんだ。そんなジャズの生みの親とされるのがニューオリンズ出身のアーティスト、ルイ・アームストロング。史上最高のトランペッターとして称される彼が「ウィスキーの1000倍素晴らしい」とし、こよなく愛したのが大麻なんだ。
彼は生前に「銃携帯免許には興味がない。欲しいのは大麻の免許だ。ナシでは楽器は吹けない。逮捕を恐れ緊張するのは嫌だ。大麻のような些細なことで刑務所行きも嫌だ」という言葉を残している。実はこの言葉に含まれているのは、単に大麻愛好家としての思いだけではない。
彼が活動した1920年代〜1960年代は今よりさらに有色人種に対しての差別や偏見が厳しい時代であり、不当な取締りによって多くのブラックの人々が大麻に関する罪で逮捕され、厳しい量刑を課せられていた時代だ。そんな時期に大麻の使用に対してオープンであり、科学的根拠がないにも関わらず”心身に害をもたらす薬物”として禁止されることに対して反対の意思を表明するのはすごく勇気のいること。
今現在大麻が嗜好品としてアメリカを始め、一部の国で合法化されてきているのもルイのようなアーティストたちの先駆的な動きがあったからこそなんだ。
④ヒップホップが生み出した促進力
『ヒップホップはジャズの孫』と言われるように現代における最先端のブラック・ミュージックであるヒップホップはジャズから発展した音楽ジャンル。そしてその孫であるヒップホップが大きな役割を果たしたのが嗜好品としての大麻利用の認知拡大だ。
世界にマリファナ文化を広めた功労者・スヌープ・ドッグ、西海岸のストーナー代表、サイプレス・ヒルのB・リアル、90s Boom Bapシーンからウータン・クランのメソッド・マン、そしてレッドマン、昨今ではウィズ・カリファやバーナーなど多くの超人気ラッパーたちが大麻の使用を公言し、MVなどでチルする様子をオープンにしたことで、従来大麻にあったネガティヴなイメージを払拭することに繋がったんだ。
映画内では実際にスヌープやB・リアル、バーナーなども出演し、大麻についての意見を述べている。ヒップホップ好きならマストチェックだね。
⑤考えるきっかけに
昨今日本でも大麻で逮捕される若者が増えたり、使用した芸能人のニュースが大々的に報道されることがあるよね。もちろんこのドキュメンタリーにあるように日本とアメリカでは全く状況が違うので、一概に比較はできない。ただやはり科学的根拠に基づかない見解や批判は歴史を学ぶことで少しずつ変えることができる。“The grass is always greener on the other side.(隣の芝はいつも青い)”のことわざの通り、アメリカという国の“芝生”はいつも自分たちの国よりも輝いて見えるかもしれない。ただその歴史が辿ってきた道のりは決して平坦なものではないし、過酷な差別や偏見との長い戦いの上に今この瞬間も少しずつ作られていっているものなんだ。ただその歴史を知ることこそが、僕たちなりの “芝生”のあり方を考えるきっかけになるはず。僕たちにこの問題を考えるための大きな機会を与えてくれるドキュメンタリー『グラス・イズ・グリーナー 大麻が見たアメリカ』。ぜひこの機会にチェックしてみてね!
画像出展元:Netflix
