みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きならマストチェックの映画を、作中に登場するパンチラインを通して紹介していくよ!
今回取り上げるのは、黒人監督&黒人主人公の映画として異例の大ヒットを記録した『ブラックパンサー』。
アフリカにある架空の国「ワカンダ」を舞台に、ワカンダ国王であり、影でワカンダの平和を守るヒーロー・ブラックパンサーでもある主人公の葛藤を描いたこの作品は、アメコミ映画では初のアカデミー賞作品賞にノミネートされた。
スーパーヒーローといえば白人だったハリウッドにおいて、黒人の監督による黒人のスーパーヒーロー映画が大ヒットを記録したのは、まさに歴史的快挙。
今回は『ブラックパンサー』から、君のマインドをインスパイアする“パンチライン”を見ていくよ!
『ブラックパンサー』ってどんな映画?
アフリカにある「ワカンダ」は、ヴィブラニウムというダイヤモンドよりも硬くウラニウム以上のエネルギーを秘めている最強の鉱石が採れる鉱山があり、世界一文明が発達した国。だが、世界の均衡が崩れるのを防ぐため、表向きは途上国を演じ本当の姿は隠したままだった。
主人公のティ・チャラは、ワカンダ国王だった父をテロによって亡くしたため王位を継ぐことに。その裏では「ブラックパンサー」としてヴィブラニウムを守るために活動しながらワカンダの平和を保っていた。
ヴィブラニウムを狙う悪党や、ワカンダを乗っ取ろうとする王族のエリックに翻弄されるティ・チャラ。そんな彼が、国王として、そしてひとりの人間として、どう世界と向き合っていくかを描いた映画だ。
『ブラックパンサー』のパンチライン
ワカンダ国王になったティ・チャラは、いままでどおりヴィブラニウムの存在を隠しながらワカンダの平和を守っていくべきか、世界に公表して困っている人のために分かち合うべきか、葛藤していた。
どんな国王であるべきかもがくティ・チャラは、周りの人たちからの言葉によって、進むべき道をみつけていく。
そんな、ティ・チャラの心を動かしたパンチラインを3つ紹介していくよ!
①「あなたが何者か示しなさい」
国王だった父が亡くなったため、王位継承のための儀式を執り行うことになったティ・チャラ。ワカンダには5つの部族があり、それぞれのリーダーは王の座をかけた決闘をティ・チャラに申し込むことができる。唯一の挑戦者となったのは、山に篭り他との交流を絶っているシャバリ族のリーダー・エムバク。
大勢が見守るなか、激しい戦いを繰り広げるふたり。エムバクは大きい体とたくましい腕力を駆使してティ・チャラを追い詰める。窮地に立たされたティ・チャラに、母である女王が声を張り上げて届けたパンチラインがこちら。
Show him who you are!
あなたが何者か示しなさい!
母の叫びは強し。
王族のプライドが全部のっかってるセリフに、ティ・チャラもハッとなる。
「私はティ・チャラ、ティ・チャカの息子だ!」と叫び、そこからティ・チャラの反撃がはじまった。
ワカンダ人は正式に自分の名を名乗る時、「私は〇〇。〇〇の息子だ。」と自己紹介をする。これは先祖を重んじており、脈々と続く歴史の中で自分たちは生きていると承知しているからだ。代々王族として国を治めていた先祖の遺志を受け継ぐように、ティ・チャラはこの戦いに見事勝利する。
②「どんな国王になるか自分で決めるの」
国王となったティ・チャラは、ブラックパンサーとしてヴィブラニウムを奪おうとする悪党を追い詰める。だが、助けにきた悪党の仲間によって、間一髪のところで逃してしまった。しかもその仲間のひとりが、自分と同じ指輪を首から下げているのを目撃する。それはかつて国王だった祖父からもらった指輪であり、王族しか持っているはずのない指輪だった。
父の側近だったズリに真相を問うと、行方不明とされていた叔父(ティ・チャラの父の弟)は、実はワカンダに裏切り行為を働いたため父によって殺されていた。叔父の子供で王族の血を持つエリックが大人になり、ワカンダを乗っ取ろうと企てていたのだ。
殺された叔父の裏切り行為も、ヴィブラニウムで困っている人を助けたいという想いからだった。
父の行動に疑問を感じ、国王としての務めをどう果たしていくべきか悩むティ・チャラは、かつて恋人だったナキアに相談する。その時に、ナキアが応えたパンチラインがこちら。
You can’t let your father’s
mistakes define who you are.
You get to decide what kind of king
you are going to be.
父親の過ちとあなたは関係ない
どんな国王になるか自分で決めるの
めちゃくちゃティ・チャラ自身のことを見てくれていて、本当にありがたいね。「こんなやつに国王が務まるのか?」「ブラックパンサーの力がなければたいしたことないだろ」と、バカにされることもあっただけに、理想の国王とは何かを問い続けていたティ・チャラ。
国王として崇めていた父も完璧ではなかった。自分ももちろん完璧ではない。だからこそ、どんな国王でありたいかは自分で決め、その責任をまっとうしていくべきだと、ナキアに気づかされたんだ。
ナキアの言葉に勇気づけられたティ・チャラ。ちゃんと自分をみてくれて、自分を認めてくれている人がそばにいるだけで、人ってこんなに勇気をもらえるんだね。
③「先祖は鎖より死を選んだんだ」
我こそが国王にふさわしいと、ワカンダに乗り込んできたエリック。王族である権利を振りかざし、ティ・チャラに王位継承の決闘を申し込む。スパイとして数々の政府を転覆させ、大勢の人を殺してきたエリックに、なんとティ・チャラは負けてしまう。
川に流され、死んだかに思ったティ・チャラ。だが、実は生きており、ヴィブラニウムを世界中に届け、世界を混沌と恐怖に陥れようとしているエリックに再び立ち向かう。死闘を繰り広げ、見事エリックに勝利したティ・チャラは、エリックを夕日がみえる場所に連れてきた。エリックは父から、ワカンダは世界一夕日が美しい国だとおとぎ話のように聞かされており、いつかワカンダにやってくることを楽しみにしていたからだ。
「美しい」と沈みゆく夕日にみとれるエリックに、傷の手当てを提案するティ・チャラ。だが、エリックは「投獄するためか?」と問い、続けて言ったパンチラインがこちら。
Just bury me in the ocean…
with my ancestors that jumped from the ships.
Cause they knew death was better than bondage.
海に沈めてくれ
先祖は船から身を投げた
鎖より死を選んだんだ
悲しすぎる…!かつて奴隷として囚われたアフリカ人の先祖がとった行動を、自らもなぞらえようとするエリック。
ワカンダ人は先祖を重んじていたが、アフリカ人としてのプライドを一番持っていたのはエリックだった。
エリックが子供の頃にちゃんとワカンダに連れて帰ってきてもらっていたら…と、別の世界線を考えずにはいられない。エリックも父と同じように、恵まれない同胞のためにヴィブラニウムを届けたかっただけなのだ。
胸に刺さった剣を自ら抜き、息絶えたエリック。国王へと復活したティ・チャラはその遺志をつぐように、ワカンダにとっていままでにない決断をくだす。
国王という重責を背負いながら、世界と向き合うことを決めたティ・チャラを支えたのは、間違いなく周りの人がいてこそだった。
この物語の続きである「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」は2022年11月現在公開中。主人公を演じていたチャドウィック・ボーズマンの死とリンクした物語が紡がれている。
次はティ・チャラの妹であるシュリが、王女としてどうワカンダを導いていくのか。その姿をぜひ見届けてほしい。
画像出典元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーションピクチャーズ
配信先:Amazon prime