criteria|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.86

ヒップホップの歌詞からストリートで使える英語を学ぼう

ライター:TARO

今回紹介するスラング

criteria

(判断、決断の)基準、尺度
紹介アーティスト
Gang Starr, Nas, The Black Eyed Peas
criteria|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン? Vol.86
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WHAT’S UP,  GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.86の今回紹介する単語は「criteria(クライテリア)」。

「(判断、決断の)基準、尺度」という意味だ。毎年のように新しいスタイルのラッパーが現れ、トレンドが目まぐるしく変化していく現代ヒップホップ・シーン。そんな中で最も大事なのは自分の中に明確なクライテリアを持つこと。今回は“本物の基準”とは何かを長年に渡って示し続けてきたレジェンド・アーティスト達のリリックから、クライテリアの使われ方をチェックしていくぜ!

まず紹介するのはGang Starrの16年ぶりのアルバム「One Of The Best Yet」から「Bad Name」!

①Gang Starr 「Bad Name(2019)」

Nowadays it’s like everybody’s losin’ it. Instead of them preservin’ this gift, they’re all abusin’ it. It’s mad drama, they want us reachin’ for the llamas. Causin’ hysteria, the new hip-hop criteria. And they forgot about the blood, sweat and tears. Now we see the results of all the blunts, chicks and beers.
「今じゃ、みんな失くしちまってるみてぇだな。あいつらはこの贈り物を大切に守る代わりに、乱用してる。狂ったドラマさ。オレ達をラマに辿りつかせたいのさ。狂気を引き起こす、新しいヒップホップのクライテリア。あいつらは忘れちまってる、血と汗と涙を。今やオレ達が見てるのはブラントと女と酒の結末さ。」

Guru、間違いなさすぎやろ。

このグールーの声はグールーが生前親交があったDJ Solarが保管していたもの。それをDJ Premierが再編集してリリースしたのが16年ぶりの新アルバム「One Of The Best Yet(未だに最高の1人)」だ。まさにタイトルの通り今のヒップホップシーンでも最高のアルバムの一つに間違いなし。特にこの曲「Bad Name」のリリックは超絶イケてるのだ。

まずグールーが斬るのは今のヒップホップシーン(グールーは2010年に癌で亡くなってしまったので、2000年代後半のヒップホップシーンのことを指していると思われる。)。今のラッパーはヒップホップというgift(贈り物)を間違って扱っていると。llamasはスラングで「銃」の意味。現代のヒップホップは、ブラントや女や酒、そして銃を見せびらかすものばかりだけど、本当のヒップホップはゲトーの血と汗と涙でできている。それを忘れるなという間違いないメッセージだぜ。

続いて紹介するのはNas、「Hip Hop Is Dead(2006)」から 「Where Y’all At」!

②Nas 「Where Y’all At(2006)」

In the Rolls Royce like the King of Nigeria. My criteria, smoke cigars. Change rap like Jimi Hendrix changed Rock and Roll. With a broke guitar, diamonds flashing. Almost put a million cash in my mommy casket. Seen more green than St. Patrick, trick.
「ロールス・ロイスの中。まるでキング・オブ・ナイジェリア。オレのクライテリア。スモークするシガー。ラップシーンを変える。ジミ・ヘンドリクスがロックンロールを変えたみたいに。壊れたギターと輝くダイヤモンド。母さんの棺に100万ドルのキャッシュをぶっこんじまうところだぜ。聖パトリックの日よりも多くの緑色を見たぜ。」

デビューから20年以上経った現在でもヒップホップ史上最高のリリシストとして絶大なプロップスを得るナズ。ナズのクライテリアはラップというものを根本から変えてしまうもの。そのカリスマ性はギターを壊すパフォーマンスがトレードマークだったロックロールのレジェンド、ジミ・ヘンドリクスを彷彿とさせる。そしてジミヘンが愛用していたと言われるのが、アメリカの老舗弦メーカー、Black Diamond Strings(ブラック・ダイヤモンド・ストリングス)社製の弦。つまり壊れたギターと共に、輝くダイヤモンドとはブラック・ダイヤモンド社の弦の事だね。そして2002年に亡くなったお母さん、Annの事に触れつつ、その棺に100万ドルの現金を入れようとしたナズ。最後の一節で出てくるSt.Partrick, trickとはキリスト教の祝祭日である「聖パトリックの日」のこと。その日にはみんな緑色の物を身につけてお祭りに出かけることがルールになっている。緑色の物を身につけていないとレプリカンという妖精にtrick(いたずら)されてしまうんだ。

緑色は、前の一節でナズがお母さんの棺に入れようとしたドル紙幣の色。つまり、

「聖パトリックの日よりも多くの緑色を見たぜ」

とはお母さんの棺に入れようとした100万ドル分のお札のこと。さらに言うと、冒頭で出てきた「Nigeria(ナイジェリア)」のナショナルカラーは緑。

そしてアメリカで流通する「cigar(シガー)」には緑色の巻き紙のものがあり(特にHolt’s Cigar社の「Candela」ブランドのシガーは淡い緑色の巻紙で知られ、1950年代から1970年代初めにアメリカで最も多く吸われたシガーの一つと言われる)、またジミー・ヘンドリクスが愛用したブラック・ダイヤモンド・ストリングス社の創業当時からの看板商品であるアコースティックギター用の弦「Acoustic Electric Silverplated」のパッケージは緑色だ。

つまりこのリリックは冒頭からラストまで緑色に関連した言葉が散りばめられているということ。だからこそ「聖パトリックの日よりも多くの緑色を見たぜ」てわけだ。さすが最強リシシスト、ナズ。このレベルのクライテリアで来られたら、そらラップそのものの定義すら変えてまうわ。

「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.86のラストを飾るのはThe Black Eyed Peas の名曲「Where Is the Love?」。2016年リリースのリミックス・バージョンのMVと共にリリックをチェキ!

③The Black Eyed Peas 「#WHERESTHELOVE ft. The World(2016) 」

I feel the weight of the world on my shoulder. As I’m getting older, y’all people gets colder. Most of us only care about money-makin’. Selfishness got us followin’ the wrong direction. Wrong information always shown by the media. Negative images is the main criteria. Infecting the young minds faster than bacteria. Kids wanna act like what they see in the cinema.
「僕の肩に乗るこの世界の重さを感じる。歳を経るにつれて、人々はみんな冷たくなっていく。僕たちの金稼ぎの事だけ気にしてる。自己中心的な考えが僕たちを間違った方向へ導く。間違った情報を常に映し出すメディア。ネガティヴなイメージが主なクライテリア。バクテリアよりも速く若い精神に伝染する。子供たちは映画で見た事を真似したがるんだ。」

The Black Eyed Peas からApl.de.apのヴァース。もはや説明不要の名リリックだよね。

原曲のリリースは2003年。あれから17年が経ったけど、アップル・デ・アップがこのリリックで歌ってる状況は少しは良い方向に変わったのかな?正直になかなかそうとは言えないよね。紛争は相変わらず世界各地で起きてるし、TVの代わりにメインメディアとなったSNSはフェイクニュースを拡散し、インターネットは平気で人を貶めるコメントや暴力的な動画で溢れている。そんな社会で大事なのは自分の中にポジティブなクライテリアを持つこと。それこそが次の時代を切り開く最も大切な鍵なのかもしれない。

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