WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.72の今回取り上げる単語は「dawg(ドッグ)」。
「仲の良い友達、仲間」という意味だ。日本のヒップホップシーンでも使われることがあるスラングだね。早速USラップでの使われ方をチェックしていこう!
まず紹介する曲は、Migos の Offset(オフセット)のソロ・アルバム「Father of 4(2019)」から「Lick」!
①Offset 「Lick(2019)」
(Hey) I took a couple of my dawgs on a lick. Do or die, gotta survive, pay the rent (Survive). I was so broke that I could cry, I was sick (Broke). Born in the wild, so many trials, I ain’t quit. All the people I robbed, I brought ‘em down, I repent (Down).
「オレのドッグス達を仕事に連れて行く。やるか、死ぬか。生き残らなくちゃいけない。家賃を払ってな。一文無しすぎて泣いていた。もううんざりだったんだ。狂った場所に生まれ、くぐり抜けた多くの試練。オレは諦めなかった。オレが襲ってきた全ての連中。オレはあいつらを潰してきた。今は悔いているよ。」
MigosのメンバーであるOffset(オフセット)、Quavo(クエイヴォ)、Takeoff(テイクオフ)は3人ともジョージア州ローレンスビル出身。クエイヴォとオフセットはいとこ同士で、テイクオフはクエイヴォのおいにあたる。「Lick」のリリックでは3人が生き抜いてきた過酷な環境が描かれている。
生き残るために”dawgs(仲間たち)と” lick(イリーガルな仕事)” に出かけていたオフセット。そんな過去の自分たちの行いを ” repent(後悔する)” という気持ちをさらけ出した、間違いなくリアルなリリックだ。
続いて紹介するのは、Lil Baby(リル・ベイビー) & Drake(ドレイク)による2018年のヒット・シングル「Yes Indeed 」!
②Lil Baby & Drake「Yes Indeed(2018)」
Brand new whip got no keys. Tailor my clothes, no starch, please. Soon as I nut, you can gon’ leave. Got M’s in the bank, like: “Yes, indeed”. Me and my dawg goin’ all the way. When you livin’ like this, they supposed to hate.
「ブランニューの車、鍵無しだぜ。服を仕立てる。のり付け無しでよろしくな。オレがイッたらすぐにお前は出て行けよな。Mが増えていく銀行口座。まぁ”その通り”て感じ。オレとオレのドッグはずっとやって行くぜ。まぁお前がこんな生き方したら、嫌われるだろうな。」
リル・ベイビーはジョージア州アトランタ出身。2018年リリースの「Harder Than Ever」がビルボード・チャート( R&B/Hip-Hop部門)で2位を獲得し、その後立て続けにリリースしたコラボレーション・アルバム「Drip Harder」、「Street Gossip」も大ヒットを記録。2018年のラップ・シーンの話題を完全かっさらったラッパーだ。
そんなリル・ベイビーがDrake(ドレイク)とコラボしたのが「Yes Indeed」。世界的なラッパーとして成り上がって行くリル・ベイビーはもちろんイケてる車、イケてる服を手に入れていく。”Got M’s in the bank” で出てくる “M’s”とは “ millions(数百万)”のこと。数百万ドル、つまり数億円を稼ぎ出すリル・ベイビーだが、彼のラップ・スキルからしたらそんなの当たり前、” Yes, Indeed(いかにも、その通り)” な事てわけだ。
お金も名声もゲットしたリル・ベイビーだけど、そんな彼が大事にするのは ” Me and my dawg goin’ all the way(オレとオレのドッグはずっとやって行くぜ。)” で歌われているように、やっぱり “ dawg(仲間)” 。リル・ベイビーと彼のドッグスが作り出す音楽が今後も楽しみだぜ。
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.72のトリを飾るのは、Kanye West(カニエ・ウェスト)。曲はChaka Khan(チャカ・カーン)の名曲「Through the Fire」をサンプリングした一曲「Through the Wire」!
③Kanye West「Through the Wire(2003)」
In the blink of a eye, his whole life changed. If you could feel how my face felt. You would know how Mase felt (Mason Betha!). Thank God I ain’t too cool for the safe belt. I swear to God, driver two wanna sue. I got a lawyer for the case, to keep what’s in my safe safe. My dawgs couldn’t tell if I… I looked like Tom Cruise in Vanilla Sky, it was televised.
「一瞬の瞬きの間に、彼の全人生は変わってしまった。神に誓うよ。相手のドライバーは訴えたがってる。弁護士を雇ってる。金庫のものを守るために。オレのドッグスは気づかないだろうな。もしオレが…オレがバニラ・スカイのトム・クルーズみたいになって、テレビ放映されたらさ。」
2002年、カニエ・ウェストはレコーディング・スタジオからの帰り道に車で交通事故を起こし重傷を負うんだけど、その結果、アゴに “ wire (ワイヤー)”を通さなければいけなくなったんだ。そんな大怪我からのリハビリを行なっている時期に作ったのがこの曲。つまり「Through the Wire(ワイヤーを通して)」歌った曲なわけだ。
チャカ・カーンもまさか自分の名曲「Through the Fire(炎をくぐり抜けて)」が「Through the Wire(ワイヤーを通して)」という形でサンプリングされるとはびっくりだよね。
「オレがバニラ・スカイのトム・クルーズみたいになって」の箇所ででてくる「バニラ・スカイ」は2001年公開のトム・クルーズ主演の映画。主人公のトムは交通事故で、顔に傷を負った青年という設定だ。カニエは事故で重傷を負った自分の顔はまるでバニラ・スカイのトム・クルーズみたいで、ドッグスたちもカニエだと気づかないだろうと言っているんだ。
ちなみ今では日本でもメジャーになったスラング ” dawg(ドッグ)” なんだけど、一説には、元々アメリカ南部地域のスラングだった言われている。カニエも、オフセットとリル・ベイビーと同じアメリカ南東部のジョージア州の出身。
同じスラングを使っているラッパー同士を調べてみると、実は地元が同じだったという事はよくあることなんだ。リリックに出てくるスラングからラッパー達が生きてきたバックグラウンドをディグってみるのもラップの楽しみ方の一つかも?