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「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのはマーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演のNetflixドラマ『アイリッシュマン』!
『アイリッシュマン』とは?
老人ホームで暮らす車椅子の老人フランク・シーラン(ロバート・デ・ニーロ)。実は彼は1950年代から80年代アメリカでその名を轟かせたマフィアのヒットマンであり、数々の抗争や犯罪に関わってきた。自分について語り始めたフランクの記憶は1950年代のアメリカに遡る。トラック運転手だったフランクは、ある日トラック組合の弁護士であるビルから従兄弟、ラッセル(ジョー・ペシ)を紹介される。人当たりの良い紳士に見えるラッセルは実はペンシルバニアの裏社会を仕切るバファリーノ・ファミリーの大物だった。ラッセルに気に入られたフランクは次第に組織の仕事を任されていくようになる。
①デ・ニーロ、ペシ、アル・パチーノ。
マフィアたちのイカつすぎる同窓会!?
まず何と言ってもこのドラマの最も大きな見所は名作マフィア映画に出演してきた大物俳優たちが勢揃いしていること。ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ジョー・ペシという、ハリウッドのマフィア映画でお馴染みの激渋な顔ぶれが集結。そして監督がマフィア映画を撮らせたら天下無双の名監督、マーティン・スコセッシなのだ。これで面白くないわけないでしょって話だよね。特にアル・パチーノの出演は歴史的なこと。実はスコセッシ監督とアル・パチーノがタッグを組むのは意外にもこの『アイリッシュマン』が初めて。スコセッシ監督とアル・パチーノは同時期に映画界でキャリアを積んできた業界仲間もあり、何度か一緒に映画を撮る話も出ていたみたいなのだけど、これまではタイミング的に実現しなかったようなんだ。
特にスコセッシ監督の代表作『グッドフェローズ(1990年)』では、ロバート・デ・ニーロが演じたマフィア“ジミー”の役は元々アル・パチーノに話が行っていたのだけど、当時のアルは自分のキャラがギャングに固定されるのが嫌で断ったと言われているんだ。
そんな歴史も経てとうとう集結したこの最強メンバー。数々の名作映画に出演してきた激渋“マフィア”たちが画面内で揃っている絵を観るだけでも必見の価値ありだ。
②実話に基づくストーリー。
米社会で大きな影響力を持ったマフィアたち
このドラマは実在のアメリカのトラック運転手、フランク・シーランの証言を基に書かれたノンフィクション『I Heard You Paint Houses』のストーリーをベースに作られたもの。
“アイリッシュマン(The Irishman)”というニックネームで呼ばれたフランク・シーランは、トラック運転手であり、全米トラック運転手組合の支部長という立場でありながら、イタリア系マフィアとの繋がりを持ち、ヒットマンとして動いていたとされる人物だ。
フランクが活動した1950〜80年代のアメリカはマフィアの力が強大であり、政治、経済などあらゆる分野において大きな影響力を持っていた時代。作中にもジョー・ペシ演じるマフィアのボス、ラッセル・ブファリーノの発言で、ジョン・F・ケネディをマフィアが当選させたという話が出てくる。実はこれは“ケネディ大統領はマフィアの力を借りて当選した”というアメリカで長らくささやかれている説。さらにブファリーノはケネディ家に対して、“Don’t forget who the fuck he owes(誰か恩人か忘れるな)”という恐ろしい言葉も…。
エンタメ作品として面白いのはもちろんだが、実在のマフィアたちの物語ということで、裏社会から見たアメリカ近代史を知ることもできるかも?
③『シンドラーのリスト』『ハンニバル』の
脚本家が手掛ける至極の会話劇
マフィア映画と聞くと、派手な撃ち合いやアクションを期待する人も多いかもだけど、実は『アイリッシュマン』はそういったシーンは少なめ。むしろベテラン俳優たちの重厚な会話劇や、マフィアたちの人間模様が物語の中心だ。そんな物語の核となる脚本を担当しているのは『シンドラーのリスト』や『ハンニバル』、『アメリカン・ギャングスター』などで脚本を手掛けたハリウッドを代表する脚本家の一人、スティーヴン・ザイリアン。
特に実話を基にした作品で脚本を手がけることが多い作家であり、登場人物や映画のコンセプトへの徹底した考察から生み出される繊細かつパワフル、そして美しいワーディングやオシャレな会話展開はまさに唯一無二。この『アイリッシュマン』もパンチラインが多い作品に仕上がっている。普通のアクション映画やギャング映画に飽きた人こそ、ぜひチェックして欲しい作品だ。
④脅威の先端技術「ディエイジング」で
ロバート・デニーロが若返り!?
主演を務めるロバート・デ・ニーロは主人公であるフランク・シーランの30代から80代までを演じている。撮影当時のデ・ニーロの年齢は70代後半であり、さすがに30代を演じるのは無理があるのでは?って思うよね。ただそこはハリウッド、脅威の映像加工技術「ディエイジング」で70代のデ・ニーロを画面上で数十歳も若返らせているんだ。映像加工チームは『グッドフェローズ』、『カジノ』など過去のデ・ニーロの出演作から、数千のシーンを集めて、それをベースにAIシステムを構築、撮影後に編集で若返えらせる技術を開発したんだって。共演しているジョー・ペシやアル・パチーノも同じくこの加工によって若返っており、この先端技術「ディエイジング」による登場人物たちの顔の変化もこのドラマの見所の一つになっているんだ。
⑤ウイスキー片手にゆっくり楽しみたい映画
この『アイリッシュマン』、なんと3時間29分という超長尺ドラマ。家でちびちびウイスキーでも飲みながら、味わいたい作品だ。猛暑が続く夏。アウトドアや旅行に行くのも良いけど、たまには家でじっくりと激渋なマフィアたちの横顔と重厚な言葉のやり取りに酔いしれてみては?