マーティン・スコセッシ監督が描く新しいマフィア像。映画『グッドフェローズ』とは?

マフィア映画の概念を覆した不朽の名作!

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。

今回取り上げるのは映画『グッドフェローズ』。一人のマフィアの人生の栄光と転落までを描いた、実話を基にした作品だ。

『グッドフェローズ』ってどんな映画?

ヘンリー・ヒルは子供の頃からギャングに憧れ、学生の頃から大物ギャングポーリーの小間使いとしてキャリアをスタート。悪事を働き捕まった際も口を割らず仲間の信頼を得たヘンリーは、正式に仲間になり、ジミーやトミーと一緒に犯罪を重ねていく。やがて米犯罪史に残る600万ドル強奪事件を起こす彼らに、CIAの捜査の手が忍び寄り…。

『グッドフェローズ』を観るべき5つの理由

①マフィア映画の革命作

『グッドフェローズ』が公開される1990年以前のマフィア映画といえば、『ゴットファーザー』に代表されるような、マフィアのロマンや美学が重厚な人間ドラマとともに描かれるものだった。そんなマフィア映画の常識を覆したのがマーティン・スコセッシ監督の『グッドフェローズ』だ。

監督がこだわったのは「マフィアの姿をリアルに描く」こと。映画で描かれるマフィアたちは喧嘩を売られたからと場当たり的に人を殺したり、口封じのために仲間でもバンバン殺す。理想もへったくれもなく、自分の利益のために麻薬にも平気で手を出す。

ドキュメンタリーのような映像を繋げたとスコセッシが語る通り、地元の狭い交友関係の中でのマフィアのストリートともいうべき姿を映し出した本作は、これまで神格化されていたマフィア像をぶち壊し、これまでのマフィア映画の概念を覆したんだ。

②一人の男の転落と栄光の人生

この映画は実在したマフィアを描いた作品。映画の原作であるニコラス・ビレッジ著の『ワイズガイ〜わが憧れのマフィア人生〜』を読んだスコセッシ監督が「自分が求めていた本だ!」と感動しニコラスに連絡。一緒に脚本を練り上げて作られた映画だ。

主人公のヘンリーは大統領よりもマフィアに憧れて小間使いから組織に入り込み、やがて飛ぶ鳥を落とす勢いで金を稼ぎ、周りからも一目置かれる存在になるが、麻薬に手を出してしまったためにボスにも愛想を尽かされ、仲間に殺されと怯える日々を送ることになる。

ここで華々しく散らないのが、ヘンリーのおもしろいところ。証人保護プログラムを受け、仲間を売って助かる道を選んだんだ。

華々しい栄光だけではなく、その後転落まで描かれたこの作品は、のちのスコセッシ監督の『ウルフ・オブ・ストーリー』にも通ずる。かつてマフィアに憧れた少年が、富と名誉と仲間をすべて捨てても生きることを選んだ人間臭い姿には、思わず心をグッと掴まれるはず。

③スコセッシ監督のセンスが光る音楽の選曲

音楽の使われ方もこの映画の魅力。場面ストーリーや時代背景に沿った音楽ではなく、シーンがより引き立つような音楽がスコセッシのセンスによって選曲されている。

特に評価が高いのはエリック・クラプトンの名曲『いとしのレイラ』が流れるシーン。600万ドルを強奪した米犯罪史に残るルフトハンザ航空事件を実行した仲間たちの死体が無惨に流れる映像との対比がとても印象に残る名シーンだ。

他にもポップ、ロック、R&Bなどの曲が大量に流れているから、映像とともに音楽も楽しんでみてね。

 

④本物のマフィアみたいにヤバい役者たち

役者たちの演技も光る。主人公のヘンリーを演じたレイ・リオッタは、一人の男の栄光と転落までをリアルに演じ、本作が彼の出世作となった。ヘンリーは麻薬によって身を滅ぼしたが、2022年に亡くなったリオッタの遺作『コカイン・ベア』では麻薬王を演じていたよ。

スコセッシ監督と何度もタッグを組むロバート・デニーロは、静かな狂気を内面に携えるジミーを演じる。存在するだけで緊張感が走る演技はさすがだ。中でも強烈な印象を残したのが、キレると手をつけられない狂犬トミーを演じたジョー・ペシだ。

映画の序盤に、笑い話をするトミーを「本当におもしろいやつだな」と言ったヘンリーに対して、彼は突然「俺の何がおもしろいんだ?」とキレ出すシーンがある。それまで和やかだった場に一瞬で緊張が走り、マフィアの怖さが顔を出した名シーンだが、このシーンは実はジョー・ペシのアドリブから始まっていたんだとか。彼は本作でアカデミー助演男優賞を受賞している。

他にもヘンリーの妻カレンを演じたロレイン・ブラッコや、マフィアのボス・ポリーを演じたポール・ソルヴィノなど、名役者がたくさん出てるからチェックしてみてね。

⑤後世に残る名作へ

『グッドフェローズ』は世界的にも評価され、アカデミー賞では作品賞、監督賞、助演女優賞にノミネートされ、ヴェネツィア映画祭では銀獅子賞(監督賞)を受賞。

さらにアメリカ映画協会が2008年に発表したアメリカ映画名作ランキング・ギャング映画編では『ゴッドファーザー』に次ぐ第2位に選ばれている。マフィアを重厚に描いた『ゴットファーザー』と対をなす『グッドフェローズ』が、いかに人々の心に響いたかがよくわかるよね。

今なお新作映画を発表し続ける巨匠マーティン・スコセッシ監督による、マフィアを新解釈した『グッドフェローズ』。マフィア映画の中でも必見の一作だよ!

画像出典元:ワーナー・ブラザーズ
配信先:Netflix