映画『スタイル・ウォーズ』を見るべき5つの理由」|ストリートヘッズのバイブル Vol.99

ヒップホップカルチャーの黎明期を捉えた伝説的ドキュメンタリー

ライター:TARO

What’s up!みんな文化ディグってる?
『ストリートヘッズのバイブル』では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!
今回取り上げるのは『スタイル・ウォーズ』。1980年代初頭のニューヨークで、黎明期の ヒップホップカルチャーをフィルムに捉えた伝説的ドキュメンタリーだ。

『スタイル・ウォーズ』ってどんな映画?

1980年代初頭のニューヨーク。経済の低迷から失業者が街に溢れ、治安が悪化。
特にブロンクスやブルックリンなどのマンハッタン周辺地域は暴力やドラッグが蔓延、荒廃しきっていた。ただ、そんな見捨てられた地域で、若者たちが熱狂していたカルチャー。それがDJ、ラップ、ブレイクダンス、そしてグラフィティを要素とする「ヒップホップ」という新しい文化だった。

『スタイル・ウォーズ』を観るべき5つの理由

①ヒップホップ文化の黎明期を捉えた貴重なドキュメンタリー

今では世界中に広がったヒップホップ・カルチャーだけど、1980年代当時はまだまだニューヨークの一部を中心とするサブカルチャー。今のように多くの人がラップで大金を稼いだり、ブレイクダンスでオリンピックに出場するなんて考えられない時代だった。
ただ自分が一番かっこいいアートをかませることを証明するために、電車にスプレーでグラフィティを描いたり、ストリートでブレイクダンスやラップに夢中になる若者たち。そんな黎明期のヒップホップシーンを捉えた『スタイル・ウォーズ』はヒップホップ文化のルーツを知ることができる貴重なドキュメンタリーであり、ヒップホップファンなら必見の映画だ。

②グラフィティはアートか、落書きか

映画で中心的に取り上げられるのが、グラフィティのカルチャー。今でも街中で見かけることもあるグラフィティだけど、元々のルーツは70年代や80年代のニューヨーク。

この時代に建物や電車にグラフィティを描くというカルチャーが発展、特に電車は街中を走るので、自分の作品が多くの人の目に触れるということで、多くの若者が電車にグラフィティを描いていたんだ。

ただもちろん公共のものに勝手に絵を描くことは犯罪行為。アートとして認める人も一方、行政や多くの人たちは治安を見出す落書きとしてグラフィティを批判していたんだ。

今でもバンクシーなどアートとして認められているアーティストがいる一方で、治安を見出す落書きとして、論争を呼ぶことの多いグラフィティ。『スタイル・ウォーズ』ではそのルーツを知ることができる。

リアルなグラフィティ・ライターたちの映像

この映画を唯一無二のものにしているのは、やはり当時のグラフィティ・ライターたちへのリアルなインタビューだ。基本的に犯罪行為のため、顔を出すことが少ないグラフィティ・ライターだが、この映画では実際に顔を出して、インタビューに答えている。後に有名になったライターも多く出演しており、「グラフィティ界のゴッドファーザー」として知られるSEEN (シーン)や、コンピュータ・ロック・スタイルを生み出した片腕のライター、 KASE 2 (ケイス・ツー)、そして現在も世界のファンからプロップスを得るZephyr(ゼファー)など多くのレジェンドたちの若かりし頃の映像やインタビューが収められているんだ。

④今ではオリンピック競技のブレイキンの黎明期

今年のパリ五輪では大きな盛り上がりを見せたブレイキンが始まったのもこの時代。
当時は街のキッズたちが公園などに集まって段ボールの上で踊るダンスだった。それが今はオリンピック競技になっているんだから、すごいことだよね。

グラフィティと同じく、レジェンドダンサーたちが出演しており、特にロック・ステディ・クルーのCrazy Legs(クレイジー・レッグス)は今見ても半端ないフットワークとフリーズをかましまくってるよ。

④金のためではなく、自己証明のためのカルチャー

この時代のヒップホップのプレーヤーやアーティストに共通して言えるのは、誰もお金を稼ぐためにやってないということ。もちろん結果的にグラフィティやダンスがお金になって、それで食っていける人も出てくるのだけど、基本的にはみんな自己証明のためにやっている。「自分が一番イケてる」ということを認めさせるためにやっているんだ。

ヒップホップ・カルチャーの本質は間違いなくそこにあるし、改めてそれを学べる『スタイル・ウォーズ』。まだ観たことがない人はぜひチェックしてみてね!

画像出典元:PBS

配信先:Abema

 

 

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