番外編 スパイク・リー映画サントラ特集|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?  Vol.40

ヒップホップの歌詞からストリートで使える英語を学ぼう

ライター:TARO

今回紹介するスラング

番外編

スパイク・リー映画サントラ特集
紹介アーティスト
Public Enemy, The Crooklyn Dodgers, Mau Maus
番外編 スパイク・リー映画サントラ特集|ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?  Vol.40
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WHAT’S UP,  GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャーTAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.40は、「 スパイク・リー映画サントラ特集」!!
先日の第91回アカデミー賞では、「BlacKkKlansman(ブラック・クランズマン)」で、脚色賞を受賞、ついにオスカーを手にしたスパイク・リー監督だが、実はこれまで、ヒップホップテイストの強い名作映画をたくさん作ってきた。そんなスパイク・リー監督のアカデミー賞受賞にRespectを込めて、過去の作品に使われている音楽をディグるぜ!

まず紹介する映画は「Do the Right Thing (1989)」。舞台はブルックリン。猛暑が続く夏のある1日の話。
主人公のムーキー(スパイク・リー)が働くイタリア系親子が経営するピザ屋に、バギン・アウト(ジャンカルロ・エスポジート)がやってくる。バギン・アウトは店内の壁の写真がイタリア系の有名人ばかりで、黒人の有名人の写真が一枚も貼られていないことに怒り、ピザ屋を後にする。やがてそれが大きな問題に発展していく。
当たり前の日常が、人種問題という火種によって、一瞬の内に狂気と化す。そんなヒリヒリするような夏の日をヒップにホップに描いたスパイク・リーの代表作だ。今回紹介するのは、そんな「Do the Right Thing」からの1曲。

①Public Enemy「Fight the Power (1989)」

Most of my heroes don’t appear on no stamps. Sample a look back you look and find. Nothing but rednecks for 400 years if you check. Don’t worry be happy. Was a number one jam. Damn if I say it you can slap me right here. (Get it) lets get this party started right.
「オレのヒーロー達はアメリカの切手には出てこねぇ。調べたらわかるだろ。400年の歴史で切手になってんのは白人野郎だけさ。”Don’t worry Be happy”なんて曲がナンバーワンになったけど、オレがそんな事いったら、ぶっ叩いてくれよな。さぁパーティを始めようか!」

Chuck Dのパンチライン。まさに映画「Do the Right Thing 」のストーリーとも被る内容だね。アメリカの歴史は結局は白人が支配層として君臨してきた歴史であり、切手を見ても白人の有名人ばかり。そんな力(the power)を持った連中と戦おうというチャックの強い気持ちが現れているね。

続いて紹介する映画は「Clockers(1995)」。クロッカーズはスパイク・リーとマーティン・スコセッシが手を組んだクライムサスペンスだ。ブルックリンのプロジェクトに住むストライク(メキー・ファイファー)は”クロッカー(ドラッグの売人)”。

ある日、ボスであるロドニー(デルロイ・リンドー)に、売り物のドラッグを掠め取っていた売人を殺せと命令されたことを発端に彼の人生、そして彼の周りの人々の人生が一変していく。ブルックリンのプロジェクトのリアルな人間模様を描いた名作だ。そんな「Clockers」から紹介するのはこの1曲、Chubb Rock や Jeru The Damajaらが組んだユニット”The Crooklyn Dodgers”の「Return of the Crooklyn Dodgers」!!

②The Crooklyn Dodgers「Return of the Crooklyn Dodgers(1995)」

Now clock kids, who got the cocaine? Don’t tell me it’s the little kids on Soul Train. The metaphor sent from my brain to my jaw. It comes from other places, not the tinted faces.
「Yo、クロック坊主、誰がコカイン持ってんだ?ソウル・トレインのちびっ子達だなんて言うなよ。このメタファー、脳みそからアゴに送られてきたのさ。こいつは他の場所から来てんのさ、色付きの顔からじゃねぇよ。」

Chubb Rockのパンチライン。「Clockers」の作中で描かれているような90年代のニューヨークにおけるクラック(吸引しやすくしたコカインの塊)の流行を嘆いているリリックだ。「Clockers」が描かれた背景には80年代後半から90年代初頭のCrack epidemic(クラック・エピデミック)と呼ばれるコカインの大流行がある。若者達は皆コカインの売買に手を染め、街は中毒者で溢れかえり、ドラッグのディールによるトラブルでギャング同士が抗争を繰り広げるという荒れた時代だった。

でも実はこのコカインのアメリカへの大量流入、招いたのはアメリカ政府の責任という説があるんだ。それが「こいつは他の場所から来てんのさ 色付きの顔からじゃねぇよ。」のパンチラインに込められているメッセージ。色付きの顔(有色人種)ではなくて、お偉い白人さんに責任があるだろ?てことだね。
80年代にアメリカへコカインが大量流入した経緯はトム・クルーズ主演の映画「バリー・シール アメリカをはめた男(2017)」でも描かれている。

事の始まりは中米のニカラグアという国がアメリカに対抗する社会主義政権を樹立したこと。ニカラグアはメキシコとコロンビアの真ん中あたりに位置する国で、アメリカにとってはご近所さん。そんな国が自分たちに対抗する政権を作ったとなっては、”世界の警察”アメリカさんとしては面白くない状況だよね。そこでアメリカ側が考えたのがニカラグアの政府に対抗する反政府ゲリラ”コントラ”の支援だったんだ。

「コントラに武器をたくさん与えてニカラグアの政府をやっつけさせよう。」そう考えたアメリカは武器輸送にうってつけの人材を見つけ出す。それがバリー・シールだ。映画ではトム・クルーズが相変わらず爽やかに演じてるけど、実際は小太りでお調子者な感じのおっちゃん。このおっちゃんが実は天才パイロットでアメリカから大量の武器をニカラグアに飛行機で運ぶことになる。そして、そこに目をつけたのがNetflixのドラマ「Narcos」でもお馴染みのコロンビアの麻薬王、パブロ・エスコバルだ。エスコバルが考えたのは「アメリカから武器を積んでニカラグアに降ろした後、飛行機はカラになるやん。ほな、そこにコカイン積んでアメリカに持って帰ったらええやん!」という密輸方法だ。ホンマかいなて感じだけど、これがホンマの話やねんな。

そこでバリーはアメリカから武器をニカラグアに運び、帰りはコカインを大量に持ち帰るという前代未聞の仕事を引き受ける事になり、その報酬で巨万の富を得ていく。その一方でアメリカにコカインが大量流入し、Crack epidemic(クラック・エピデミック)に繋がっていく。このコカイン流入の動きをアメリカ側は知っていたが、バリーの役割がアメリカにとっても必要だったので黙認していたのでは?と言われているんだ。

Cubb Rockがラップしてるのはそこんとこ。「コカインがアメリカに入ってきたのはアメリカ政府に責任あるやろ!クラックの大流行を黒人達のせいばっかにせんといてや!」て事だね。

最後に紹介するのはスパイク・リー最大の過激作「Bamboozled (2000)」。

”Bamboozled”とは「騙された、煙に巻かれた」という意味。アメリカのショー・ビジネス史上最大の汚点とされている”ミンストレル・ショー”をテーマにした作品だ。ミンストレル・ショーは19世紀のアメリカで生まれ、20世紀半ばまで続いた白人が顔を黒く塗って黒人を演じる劇のこと。白人が顔を黒く塗ることは”ブラック・フェイス”と呼ばれた。ショーの中では、黒人は無知で、ずるくて、間抜けな存在として描かれ、顔を黒く塗った白人たちが黒人を演じ、それを白人の観客が見るというものだった。あまりにも差別的なショーであり、現在では”ブラック・フェイス”自体タブーとされている。

「Bamboozled」はそんなミンストレル・ショーを現代のアメリカのTVで放映するという話。
主人公のドラクア(デーモン・ウェイアンズ)はニューヨークのTV局に勤めるエリート・プロデューサー。ある日、ドラクアは上司のダンウィット社長(マイケル・ラパポート)から面白い企画を作るように責められる。悩みに悩んだドラクアが思いついたのは、なんとTVでミンストレル・ショーを放送するというとんでもないアイディアだった。

”ブラック・フェイス”というアメリカ社会最大のタブーに切り込み、黒人差別とショー・ビジネスという問題に真っ向から向き合った作品だ。今回はそんな「Bamboozled」で度々流れる挿入歌であり、Mos Def(現在、Yasiin Bey)やMC Serchら組んだユニット「Mau Maus」 の1曲「Blak Iz Blak」を紹介。

③Mau Maus 「Blak Iz Blak(2000)」

Yo, you fucked up in the game now. It’s Big Black, Mr. Chairman of the Mau Mau. I hear the world in all-black surround sound. Barricaded so you can’t move around now. Doin this for my clan that ain’t around now. Buried six feet deep beneath the ground now.
「YO,お前なら既に終わってる。ビック・ブラックの登場さ。マウ・マウ・クルーのリーダーだ。世界はブラック・サウンドに包まれているぜ。バリケードで塞がれて、お前は動くことすらできやしねぇよ。今はこの場にいない仲間達のためにやってんだよ。6フィート下に埋まってる仲間達のためにな。」

トップバッターでかましているMos Defのバース。「6フィート下に埋まってる仲間達のためにやっている」Mos DefのHip Hopメンタリティを象徴するリリックだ。アフリカからアメリカに連れて来られ、奴隷として過酷な労働を強いられ、人としての尊厳を与えられずに亡くなっていった多くの黒人達。奴隷制廃止後も、公民権運動の時代から現代に至るまで、黒人は不当に差別されて続けて来た。アメリカ社会の中で勇敢に戦い、生き抜いた同胞達のためにMos Defはラップしているんだ。

常に見る者を考えさせる映画を発信してきたスパイク・リー監督。そんなスパイク・リー監督の最新作が2019年3月22日(金)から日本公開される。

タイトルは「BlacKkKlansman(ブラック・クランズマン)」。冒頭にも紹介した通り、アカデミー賞脚色賞をとった作品だね。
なんと、あの悪名高い白人至上主義団体「KKK(クー・クーラックス・クラン)」に黒人刑事が潜入捜査するというストーリーだ。これだけ聞くだけでも、もはやMust WatchのVibesがガンガン出てるんだけど、なんとこれは実話を元にした話。激アツすぎでしょ。

ヘッズのみんなは是非とも劇場でチェックしよう!!

RESPECT FOR ALL RAPPERS!
SEE YA!

TARO 

訳は全て意訳です。(索引:Genius https://genius.com/ )

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日本のストリートレペゼンしよう。

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