『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』を観るべき理由|ストリートヘッズのバイブル Vol.180

アル・パチーノの“怪演”が光る90年代のクラシック

ライター:ほりさげ

「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!
今日紹介するのは、アル・パチーノ主演
『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』(1992年)。
ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)、『ジョー・ブラックをよろしく』(1998年)などでも知られるマーティン・ブレストが監督を務めた作品だ。

 

『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』とは

あらすじ

ボストンにある全寮制の名門・ベアード校に通うチャーリー(クリス・オドネル)は、アルバイトとして盲目の気難しい元軍人フランク(アル・パチーノ)の世話をすることに。しかし、出会った当初はまったく馬が合わない。「脳みそ入ってるのか!」「チンピラめ!」など理不尽に罵ったかと思えば、急に「一緒にニューヨークへ行くぞ」と旅への同行を求めてチャーリーを振り回すフランク。しかし旅の中で徐々にフランクが抱える孤独や心の傷が明らかになり、次第に心を通わせていく……。

大きなどんでん返しやアッと言わせる伏線回収、みたいな派手さはないものの、クリス・オドネルとアル・パチーノによる繊細な演技にじわじわと引き込まれる!見終わった時には、心が何か温かいもので満たされているはずだ。

『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』を観るべき理由

①バディドラマの王道

ニューヨーク滞在中に「俺はこの旅の最後に自死しようと思ってる」とサラッと告げるフランク。チャーリーは未熟ながらもなんとかそれを阻止しようと奮闘する。2人は次第に心を通わせ、フランクは少しずつ生きる希望を取り戻し、終盤では逆にチャーリーのピンチを救う。

出会い方こそ最悪だったものの次第に絆を深めて困難を乗り越えるというシナリオは、バッド・ボーイズ』『グリーンブック』『最強のふたり』など、その後の作品でもよく見られるバディドラマの王道ストーリー。『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』は、まさにバディドラマのクラシック的な作品なので、『バッド・ボーイ』などの映画が好きな方には強くおすすめしたい。

②アル・パチーノの
盲目の演技の凄まじさ

視覚障害者の役は、近年の日本のドラマでも多くの俳優が挑戦していてどれも素晴らしいものだけど、アル・パチーノのそれはちょっと別格だ。
手探りで周りのものを探すちょっとした仕草はもちろん、最も難しいであろう視線の角度も完璧に演じこなしている。しかも目が見えない役の中で、さらに細かい喜怒哀楽や、時にナーバスになってしまう繊細さを表現することにも成功している。そんな怪演っぷりが評価を受け、92年度アカデミー賞にて最優秀主演男優賞を受賞した

『スカーフェイス』『ゴッドファーザー』『HEAT』など、ギャング映画での渋くて悪い男を演じるイメージが強いアル・パチーノ。今作はギャング役ではないからこそ、彼の芝居の幅広さ、繊細さに触れられる。

③目が見えないからこそ
養われる感覚

視覚障害がある代わりに鼻が利くフランクは、香水を嗅いだだけで女性の出身地や性格を当ててしまう。女性を口説く時に香水や使っている石鹸を言い当てるシーンも有名だ。
またフランクの目が見えないことをいいことに、チャーリーが皮肉を込めてこっそり敬礼の真似をすると、ちょっとした空気の流れを察知して「利口なら2度とするな」と鋭く言い放つ。すごい察知能力だ…!視力を失うということはマイナスなことだけでなく、時に別の力を養うことに繋がるんだね。

ただ、使っている香水で女性をステレオタイプ的に捉えることはあまり褒められたことではない。そもそもフランクはむっちゃ女好きで、女性をもののように扱うような言動もまあまあ多い(90年代って感じがするよね)。頑張ってフォローを入れるとするなら、現代のコンプライアンスの感覚下では絶対に描けない90’sの空気感を味わえる作品と言えるだろうか。

④KANDYTOWNメンバーにも
影響を与えた映画

「セント・オブ・ウーマン」というフレーズを聞くと、KANDYTOWNのこちらの曲が思い浮かぶヒップホップヘッズも多いはず!

【KANDYTOWN – Scent of a Woman】

映画の内容がリリックに出てきたり、サントラがサンプリングされたりといった直接的な関連は特にないんだけど、どこか今作の空気感にも通じているような哀愁たっぷりの一曲。
ちなみにメンバーのDONY JOINTもインスパイアを受けた映画の1つとして今作を紹介している。曰く、「人生はどう生きるものかと教えてくれるような良い映画」とのことだ。

⑤中盤のダンスシーンにうっとり

今作の中でも特に印象的なのが、フランクがホテルのレストランにいた美しい女性・ドナとタンゴを踊るシーン。

「間違えることが怖いわ」と臆するドナに、「タンゴに間違いなんてないんだよ、人生とは違って」なんていう、素敵なパンチラインをさらっと残しながらダンスに誘うフランク……なんともにくい!

そんなタンゴのシーンは実に2分以上。『パルプ・フィクション』の伝説的なダンスシーンが1分40秒程度だから、今作のダンスもとてもじっくり描かれていることが分かる。
ちなみにこの記事の冒頭に載せている映像はフランクがダンスに誘うシーン。先ほど紹介したセリフも含めめちゃくちゃ渋いので改めてチェックしてみて!

出展元:Universal Pictures

配信先:U-NEXT

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