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「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのはドイツのレジェンド・ラッパー、Xatar(カター)の半生をモデルにしたドイツ映画『Rhinegold(ラインゴールド)』。
『Rhinegold(ラインゴールド)』とは?
実在のクルド系ドイツ人ラッパー、“Xatar(カター)”ことジワ・ハジャビの成り上がり人生をモデルにした伝記ドラマ。物語の始まりは1980年代初期の中東。迫害され続けてきたクルド系のジワ家は命からがらヨーロッパへの亡命に成功、ドイツに居を構える。高名な音楽家である父と教育熱心な母のもと一時は落ち着いた生活を送っていたジワだが、やがて両親は離婚。母親に引き取られた後は次第に荒んだ日々を送るようになり、ドラッグの売人としてストリートで一目置かれる存在に。金塊強盗にまで手を染めたジワは逃亡生活の末、ドイツの刑務所に収監。しかしそこから刑務所内で録音した曲でデビューし、“ギャングスタ・ラッパー”としてドイツで絶大な支持を集めることになる。
①ストリートから成り上がれ。
どん底から頂点を極めた男の実話
この映画の魅力はなんといっても実話を基にしたストーリーであるということ。
主人公のモデルであるラッパーのXatar(カター)は、実際にドイツ・ヒップホップシーンのレジェンドであり、ドラッグの売人から人気ラッパーに成り上がった人物だ。
移民の子供として育ち、ストリートでのハスリンをサバイブしていく様はまさに“リアル”。50 セントの自伝映画『Get Rich or Die Tryin’(2005)』や、マーティン・スコセッシのギャング映画『Goodfellas(1990)』などの成り上がりストーリーが好きなヘッズのみんなには超オススメだね。
②ドイツ映画界のスターたちが総力を結集
監督であるファティ・アキンは30代にしてベルリン、カンヌ、ヴェネチアの世界三大映画祭主要賞受賞の快挙を成し遂げたドイツを代表する映画監督。特に彼自身両親がトルコ移民であることから、移民をテーマにした作品を得意としている。2022年にドイツで公開された『RHEINGOLD ラインゴールド』は1000万ドル近い興行成績を記録し、ファティの作品で最もヒットした作品となったんだ。また主人公のカターを演じるドイツ最強イケメン俳優、エミリオ・ザクラヤも注目。甘いマスクとモデル顔負けのスタイルの良さでヨーロッパ中の女性を虜にするスーパースターだ。子役として9歳から培ってきた確かな演技力と、フルコンタクト空手のドイツ選手権で優勝するほどの高い身体能力で数々の映画で存在感を見せてきたエミリオが改めてその演技の幅の広さを見せたのがこの『RHEINGOLD ラインゴールド』。優しい青年がストリートの洗礼を受け、イカついギャングスタになっていく様を見事に演じているよ。
③ 差別と貧困に立ち向かう物語
移民ラッパーのリアルな人生
黒人差別、そして貧困問題と密接に関連しているアメリカのヒップホップカルチャー。この映画の舞台であるヨーロッパにおいて「人種」と「貧困」という側面で二重に困難な状況に置かれているのがアフリカや中東諸国からの移民の人々だ。特にこの物語の主人公・“Xatar(カター)”ことジワのルーツであるクルド人は中東地域においてさまざまな国の国境争いに巻き込まれ、迫害されてきたという悲しい歴史を持つ民族。厳しい迫害から逃れ、亡命した移住先でも差別や貧困に直面している人々が多いんだ。だからこそ差別や貧困を乗り越え、人気ラッパーとなったカターの物語は多くの同じ立場の人の共感を得たってわけだね。
④ ヨーロッパのヒップホップシーンを
知るきっかけに
日本にいるとどうしてもアメリカのヒップホップシーンばかりが目に入ってきてしまうが、実はヒップホップカルチャーはヨーロッパも激アツ。特にラップミュージックは移民のバックグラウンドを持つ人々がヨーロッパ社会で居場所を見出すためのツールとして大きな役割を果たしており、近年ではガイアナと中国のルーツを持つイギリス人ラッパー・Central Cee(セントラル・シー)やチュニジア系イタリア人であるGhali(ガリ)などがヨーロッパ全域、そして世界で人気を博しているよね。またダンスシーンにおいても、フランスでは立ちのストリートダンスの世界大会『Juste Debout』が2000年代初頭から開かれていたり、イギリスではブレイクダンスの世界大会『UK B-Boy Championships』が90年代から開かれているなど、ラップに限らずさまざまな分野でヒップホップがとても盛り上がっている地域なんだ。
『RHEINGOLD ラインゴールド』をきっかけにヨーロッパのヒップホップシーンをチェックしてみるのも良いかもね。
⑤ ヒップホップとは?
ヒップホップはさまざま側面を持つ文化だけど、マイノリティや弱い立場の人々が自分の意見を発信したり、居場所を作り出すことができる文化でもあるよね。近年日本では排外主義を声高に叫ぶ風潮が表面化してきているけど、改めてヒップホップ好きとしては、文化のルーツや世界での状況、そしてヒップホップがこれまでどんな人々を救ってきて、僕たちは誰に救われてきたのかということを考えたいところ。『RHEINGOLD ラインゴールド』はヒップホップとはなんなのか?ということを考えるきっかけを君にくれる映画になること間違いなしだ。
画像出展元:Amazon
