みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。
今回取り上げるのは『パルプ・フィクション』。奇才タランティーノ監督の初期作品でありながら、彼の魅力がたっぷり詰まった作品だ。
『パルプ・フィクション』ってどんな映画?
今日かぎりで犯罪から足を洗おうと、レストラン強盗を企てる不良カップル。嫉妬深いボスの妻を、一晩世話することになったギャングの殺し屋。八百長試合を持ちかけられた落ち目のボクサー。バラバラな3つの物語が次第に交錯していき…。
『パルプ・フィクション』を観るべき5つの理由
①タランティーノが再発掘した60年代の隠れた名曲たち
印象的なシーンにクールな音楽はつきものだ。本作で流れる音楽は、タランティーノが青春時代に聴いていたであろう、60〜70年代のロックやファンクが使われている。
物語のオープニングで流れるのはディック・デイル&デルトーンズ『ミザルー』。本作をきっかけに人気が復活した曲で、「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト」にも選ばれたディック・デイルがかき鳴らすイントロのギターだけでテンションが上がってしまう。スピーディに物語が展開していく本作を予言しているような、疾走感あふれる曲調だ。
さらにダンスシーンで流れるのは、チャック・ベリーの『ユー・ネヴァー・キャン・テル』。こちらも体が勝手に動きだしそうになる音楽だ。ギャングのボスの妻、ミアと殺し屋のヴィンセントがダサい振り付けを自信たっぷりに踊りあうふたりのシーンはあまりにも有名で、惹きつけられた人も多いかもしれない。
他にもザ・レベルズの『コマンチ』やプリーチャー・マンの『ダスティ・スプリングフィールド』など、一度は聴いたことがある音楽たちが印象的なシーンで使われているから、ぜひチェックしてみてね。
②抜群のキャラ立ち!今では実現不可能な豪華キャストの共演
キャラが立ちまくってる豪華俳優陣も要チェックだ。
主役の殺し屋ヴィンセントを演じたのは、70年代に一世風靡したジョン・トラヴォルタ。当時は落ち目の俳優だったが、彼の大ファンであるタランティーノ監督が主演に大抜擢。『パルプ・フィクション』では色気たっぷりの演技を披露し、再びスターへと返り咲いた。
若くて美しいギャングのボスの妻を演じたのは、ユマ・サーマン。オファー当時は男だらけのギャング映画への出演を躊躇していたが、監督に口説き落とされ出演。ボブ髪のギャングの妻を茶目っ気たっぷりに演じていて、誰もが恋に落ちてしまう魅力を放っている。彼女の挑発的な目つきの映画のポスターは、誰もが一度は観たことがあるはずだ。ちなみに同じ監督作品の『キル・ビル』では主演を務めているね。
他にも落ち目のボクサーを『ダイハード』シリーズのブルース・ウィリスが演じていたり、ヴィンセントの相棒の殺し屋を今やレジェンド俳優であるサミュエル・L・ジャクソンが演じていたりと、意外と思われるキャスティングが役にバチハマり。役者の魅力が爆発している。俳優のおもしろさだけでも十分楽しめる映画だ。
③タランティーノのお家芸”ダラダラ会話劇”
本作の一番の魅力は、なんと言っても登場人物たちの会話劇。仲がいいんだか仲が悪いんだかわからない殺し屋のふたりは、任務を遂行しながらずーっと喋っている。はたからみればどうでもいい話を、自分の主張をまくしたてながら延々話している姿が滑稽でおもしろい。
そのスタンスはタイトルにも表れている。『パルプ・フィクション』は「くだらない話」や「意味のない話」という意味で、チープな紙をつかった大衆向けの雑誌「パルプ・マガジン」からとられている。
タイトル通り、映画を通して伝えたいメッセージは特にないのに、飽きさせない会話劇と時系列をシャッフルする構成で何度も観たくなる名作に仕上がっている。会話だけでも魅せることができる、タランティーノ監督の脚本のすごさがわかるよね。
④圧倒的な作品のオマージュ量
生粋の映画オタクのタランティーノ監督は、いろんな映画のオマージュを作品に忍ばせている。映画監督になる前にレンタルビデオ店で働き、浴びるように映画を観ていたからこそ、成せる技だ。
有名なダンスシーンは、主役を演じるジョン・トラヴォルタがブレイクしたきっかけの作品『サタデー・ナイト・フィーバー』が下敷きになっていたり。サミュエル・L・ジャクソン演じるギャングが人を殺すまえに聖書のある1節を唱えるシーンは、俳優・千葉真一の大ファンである監督が、彼の主演映画『ボディガード牙』から引用していたり。
気づいた人がニヤリとしてしまうオマージュが、至るところに散りばめられている。膨大な映画の知識をインプットしまくった監督だからこそできる映画の作り方だ。
⑤内容がないのにカンヌのパルム・ドールを受賞!?
本作はもっとも有名な映画祭のひとつであるカンヌ国際映画祭で、グランプリであるパルム・ドール賞を受賞した作品。高尚な作品が受賞することが多いためか「この作品が受賞するのはおかしい!」と映画祭の会場で批判する観客も現れるほど。
だけど内容がないのに、めちゃくちゃおもしろいのがこの作品のすごいところなんだ。それは監督こだわりの俳優、脚本、音楽、演出が見事に噛み合って、とんでもないパワーを発揮しているから。
タイトルやポスターは知っているけど観たことがない人も多いだろうこの作品。一度みればやみつきになるから、ぜひ観てみてね!
画像出典元:松竹