ラグビー映画 『インビクタス/負けざる者たち』を観るべき5つの理由|ストリートヘッズのバイブル Vol.58

弱小チームがラグビーワールドカップ優勝へ。南アフリカをひとつにした奇跡の実話。

ライター:Lee

みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きにオススメの映画を紹介していくよ。

今回取り上げるのはラグビー映画『インビクタス/負けざる者たち』。南アフリカチームが1995年のラグビーワールドカップで優勝するまでの奇跡を描いた、実話を基にした物語だ。

『インビクタス/負けざる者たち』ってどんな映画?

1994年に南アフリカ共和国で初の黒人大統領となったネルソン・マンデラ。彼は人種隔離政策のアパルトヘイトが色濃く残り、白人と黒人の分断が根深い母国をひとつにするため、当時弱小と言われていたラグビー南アフリカ代表のワールドカップ優勝を目指すが、その道のりはもちろん容易ではなく…。

『インビクタス/負けざる者たち』を観るべき5つの理由

①黒人初大統領の「赦し」のリーダーシップ

主人公のネルソン・マンデラはアフリカ政治でもっとも偉大な英雄として世界中の人に愛されている人物。なぜかというと、南アフリカで初の黒人大統領に就任した彼は、「赦し」の心を持って南アフリカの人種融和を推し進めたからだ。本作の監督を務めた巨匠クリント・イーストウッドも「赦しの物語」を描き出したと語っている。

南アフリカでは黒人の隔離と差別を認めるアパルトヘイトという恐ろしい政策が、1948年から1990年代初めまで行われており、マンデラが黒人初の大統領になることで、黒人から報復されるのではないか?と白人たちは恐れたんだ。しかしマンデラは黒人と白人が手を取り合って南アフリカの再建を目指すと宣言。前政府の白人官僚たちも迎え入れ、まずは自分の周りから人種の垣根をなくしていったんだ。

彼はアパルトヘイトをきっかけに27年間ものあいだ刑務所に収監されていたのに、白人たちへの復讐に走らなかったのはすごいよね。マンデラの素晴らしい人間性には、学ぶべきことが満載だ。

②アパルトヘイト象徴のラグビーが人種融和の象徴に!?

白人たちだけではなく、黒人たちに対してもマンデラのリーダーシップは存分に発揮される。国をひとつにするためにラグビー南アフリカ代表チームのワールドカップ優勝を目指したマンデラだったが、その前に立ちはだかったのは黒人たちだった。

というのも、人口の20%しかいない白人に権力を握られていた南アフリカで、イギリス発祥のラグビーは白人を象徴するスポーツであり、黒人たちに忌み嫌われていたからだ。黒人たちはアパルトヘイトの象徴であるラグビーチームの名前やエンブレムを変えようとするが、マンデラはそれを阻止する。

同志である黒人たちに反対意見を物申すのはとても勇気のいることだが、彼は国のために自分の理想を語った。白人の意志も尊重しないことには、人種融和は実現しないからだ。自分以外の全員が反対意見であろうと、勇気を持って理想を掲げることで、人々を動かしていくことができたんだ。

③ワールドカップ優勝の鍵は「不屈の精神」

タイトルの「インビクタス」はラテン語で「征服されない」「屈服しない」という意味を持つ。これは27年間の収監生活に屈しなかったマンデラと、国の期待と重圧に打ち勝った南アメリカ代表のスプリングボクスのことを指している。

南アフリカは今でこそ強豪チームだが、初優勝を飾った1995年までは弱小チーム。そんな彼らが不可能と思われたワールドカップ優勝を果たすことができたのは、マンデラ大統領とキャプテンのフランソワの交流によってチームにもたらされた“不屈の精神”のおかげだった。

マンデラが不屈の精神を培ったのは刑務所の中。イギリスの詩人ウィリアム・アーネスト・ヘンリーの詩『インビクタス』と出会い「我が運命を決めるのは我なり。我が魂を制するのは我なり」という一節を心の支えに過酷な収監生活を乗り超えていった。大統領になった彼はフランソワにもその詩を教え、リーダーのあるべき姿を伝えていったんだ。

ラグビーはボールを落とさず後ろに繋いでいくことで、ゴールへと辿り着くことができる。一人の知識と経験も後世へと繋いでいくことで人々に広がっていく。マンデラから受け継がれた不屈の精神が南アフリカ代表の底力を引き出し、優勝へ導いてくれた。何事にも屈せずに己の道を切り開いていく生き様を教えてくれる。

 

④スポーツの偉大なる力

南アフリカのラグビーチーム「スプリングボクス」がワールドカップを勝ち上がるたびに国民は熱狂し、白人も黒人も関係なく彼らを応援し始めた。国を懸けたスポーツには、自分の帰属意識を強める力がある。白人と黒人として対立していた彼らは、ラグビーを通して、自分たちは同じ「南アフリカ国民」であることを自覚することになったんだ。

決勝戦の戦いは、1995年にトリップしながら一緒に観戦している気持ちになるくらい、丁寧に描かれていた。国の命運を背負った選手たちの奮闘は、観戦している人たちの心を強く突き動かしてくれる。

優勝した後に人種がこちゃまぜになりながら歓喜に踊る姿に、スポーツがもたらす偉大な力を噛み締めさせられる。ラグビーに目をつけたマンデラの先見の明にも脱帽だよね。

⑤モーガン・フリーマンは大統領直々のご指名!?

ネルソン・マンデラ大統領にモーガン・フリーマン、ラグビーチームキャプテンにマッド・デイモンと、豪華俳優陣の演技も傑作だ。

そして実はマンデラが「自分を演じてもらいたい俳優」として、過去に名をあげていたのがモーガン・フリーマン。彼はマンデラの秘書が絶賛するほど、マンデラ自身を見事に演じ切った。彼がいなければ、この映画は実現しなかったのかもしれないね。

9月8日からは、いよいよラグビーワールドカップが開催される。それぞれの国でも「インビクタス/負けざる者たち」みたいなストーリーがあるかも。選手たちが背負う想いに想像を巡らせながら、楽しんで観戦してみてね!

画像出典元:ワーナーブラザーズ

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