目 次
パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人達がいる。
彼らは何故、今の仕事を選んだのか?
このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。
今回は長きに渡り熊本のクラブシーンを引率するDJ TOMOさんにお話を伺います!
ラッツ&スターに衝撃を受けた幼少期
DJ SHUNSUKE:
TOMOさんの出身地、DJ歴をまずお伺いさせてください。
DJ TOMO:
出身地は熊本県、DJ歴は28年になります。
DJ SHUNSUKE:
音楽との原体験についてですが、記憶の中でいちばん古い音楽体験って覚えてますか?
DJ TOMO:
覚えてます。ラッツ&スターですね。最初にテレビで見たとき、顔を黒塗りにしてて、子ども心に少し驚いた記憶があります。でも歌い出した瞬間に衝撃でした。「街角トワイライト」とか「ランナウェイ」とか「め組のひと」とか、小学生のくせにめちゃくちゃ背伸びして聴いてましたね。歌の力にグッと引き込まれた、あの感覚は今でも覚えてます。
DJ SHUNSUKE:
ラッツ&スター、確かに子どもには衝撃的だったと思います!笑
DJ TOMO:
小さい頃、家族でよくテレビを観てたんですよ。歌番組がゴールデンにたくさんあった時代でした。色々アーティストはテレビで見ましたけど、中でも特に印象的だったのがそのラッツ&スターの登場で、「音楽ってカッコいいな」と強く思いましたね。昭和の時代は今よりもテレビで沢山歌番組がやっていたので、テレビを見てるだけで自然と音楽が耳に入る時代ではあったような気がします。
高校の先輩に無理やり連れていかれたパーティでDJの存在を知る
DJ SHUNSUKE:
DJを始めたきっかけは何だったんでしょうか?
DJ TOMO:
実はわりとありがちなパターンで、高校の先輩にパーティに誘われたのがきっかけなんです。「ちょっと来てみなよ」って無理やりだったんですけど(笑)、そこにDJがいて、初めて見たときに「あ、これやってみたい」って思いました。あの場に行ってなかったら、今の自分はいないと思います。先輩には感謝してますね。
M.O.P.の「ANTE UP(Remix)」の衝撃は凄かった。
DJ SHUNSUKE:
DJとして衝撃を受けた曲はありますか?
DJ TOMO:
時代ごとに色々あるので一曲って選ぶのは難しいんですけど、特に印象深い衝撃という意味ではM.O.P.の「ANTE UP(Remix)」ですかね。リリースされた瞬間からすぐにクラブヒットして、イントロの段階でお客さんのテンションが爆上がりするんです。自分がプレイしてても「うわ、これすげえ!」って鳥肌立ったのを覚えてます。
DJ SHUNSUKE:
2000年代を代表するクラブアンセムですね!日本全国のヒップホップ好きは当時みんな好きだったんじゃないでしょうか、今でもたまに耳にしますしね。
辞めるという選択肢は浮かんだ事がない。
DJ SHUNSUKE:
高校時代からDJを続けている事になると思うんですが、クラブでDJを続けていくのは生半可な事ではないと思います。色々な壁を乗り越えてきたと思うのですが、辞めようと思ったこととかは無かったですか?
DJ TOMO:
それがね、一度もないんですよ。本当に。もちろん大変なことや壁はありましたけど、「辞める」って選択肢は浮かばなかったです。音楽が好きって気持ちが根っこにあるからでしょうね。家族が増えたタイミングで少し休んだりした時期はありましたけど、辞めようと思ったことはただの一度もないです。
マンスリーでMIX TAPEをリリースした事で活動の幅に広がりが出た。
DJ SHUNSUKE:
キャリアの中で、ターニングポイントになった出来事ってありますか?
DJ TOMO:
うーん、やっぱりマンスリーでMIX TAPEをリリースしたことですかね。それなりに流通させることは出来たので、少しずつ自分の名前が広まって、県外のイベントに呼ばれるようになったり、ラジオ出演の話が来たり。自分のスタイルを発信し続けることで、チャンスが繋がっていく実感はなんとなくありましたね。
DJ SHUNSUKE:
DJとしてのMIX音源って、やっぱり大事ですね。今では少し広まりにくくなっている感じもするDJ個人のMIXですけど、僕も重要だと思います。TOMOさんのお名前を最初に知ったのもMIXCDだったように思いますね。
DJ ENUFFがシャウトしてくれたことは一生忘れない。
DJ SHUNSUKE:
ではこれまでで、DJキャリアの中でいちばん印象深い出来事って何でしょう?
DJ TOMO:
間違いなく、NYのDJ ENUFFが熊本に来たときですね。一緒のブースに立てるだけで感激なのに、BIGGIEの「UNBELIEVABLE」をかけてるときに、“BIGGIE SMALL IS THE ILLEST”のラインを“TOMO F#%KIN’ IS THE ILLEST”に変えてシャウトしてくれて。まるで映画みたいな瞬間で、鳥肌モノでした。熊本のHIP HOPシーンを彼に伝えられたような気がして、本当に宝物みたいな体験です。一生忘れない。
DJ SHUNSUKE:
うわ、それはアツいですね……!日本全国でもそんなシャウトをしてもらったDJはそういないと思います。実際ENUFFを呼んでパーティするっていうだけでも凄まじい労力がかかると思いますけど、熊本のシーンにとっても物凄く重要な一晩になったんでしょうね。
クラブから疎遠になっている人達が楽しめる場所を作りたい。
DJ SHUNSUKE:
今はどんな活動に力を入れているんですか?
DJ TOMO:
キャリアも気づけば28年になって、年齢的にもだいぶ上の方になってきたんで(笑)、最近はクラブから少し離れていたような人たちと、昼間のパーティーでゆるく楽しめるような場所を作れたらなって考えてます。みんなで集まって、音楽でリラックスできるような空間をね。
DJ SHUNSUKE:
クラブの楽しさとかを忘れないでほしいですよね、音楽を楽しむことに年齢の制限はないですし。こないまま終わりにするのか、新しい楽しみ方を提示するのかっていうのも長く続けている人達の仕事なのかもしれないですしね。
自分の肌でVIBESを感じるのが何より大事
DJ SHUNSUKE:
最後に、これから熊本のクラブシーンに入ってくる若い人たちに向けて、何か一言お願いします。
DJ TOMO:
今の若い世代ってSNSでいろんな情報をリアルタイムで得られるから、感性もすごく鋭いと思うんですけど、やっぱり現場に足を運んで、自分の肌でVIBESを感じるのが何より大事だと思います。それを重ねることで、プレイに“厚み”が出てくるし、本当の意味での「自分らしさ」に繋がってくるんじゃないかなと思います。
DJ SHUNSUKE:
現場第一主義ですね!本日は本当に貴重なお話、ありがとうございました!
プロフィール
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1996年にDJとしてのキャリアをスタート。地元・熊本でのレギュラーパーティーやゲスト出演を中心に活動しながら、九州各地の様々なイベントにも出演する現場第一主義のDJである。プレイスタイルは、現在のヒット曲を軸に、クラシックやダンスホール・レゲエなどもフロアの雰囲気を見ながら織り交ぜていく“飽きの来ない”選曲が魅力。長年にわたるキャリアと実績は、熊本のヒップホップ・シーンを牽引してきたと言っても過言ではない。 また、彼の代名詞とも言える膨大な数のミックステープは、地元・熊本のみならず、日本全国のヒップホップファンを魅了してきた。現在も不定期でリリースされるMIX作品は非常に好評で、MIXCLOUDでも上位にランクインするなど高い評価を得ている。間違いなく、熊本を代表するヒップホップDJの一人である。