WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.195の今回は2000年代名盤特集。取り上げるのはLil Wayne(リル・ウェイン)の「Tha Carter III」。
<p2008年リリースの本アルバムはそれまでミックステープを中心に着実にプロップスを得ていたリル・ウェインの最大の出世作となった1作だ。
そんな「Tha Carter III」からまず紹介するのは、2008年をリル・ウェインの年に決定づけた1曲「A Milli」!
「A Milli」
A millionaire, I’m a Young Money millionaire Tougher than Nigerian hair My criteria compared to your career just isn’t fair I’m a venereal disease, like a menstrual bleed Through the pencil, and leak on the sheet of the tablet in my mind
ミリオネア、オレはヤングマネーのミリオネア ナイジェリア人の髪よりタフに生きてきた オレの判断基準とお前のキャリアと比べるのはフェアじゃねぇな 私は性病、まるで生理の血 鉛筆を通して、オレの思考のメモ帳の上に滴り落ちるのさ
ルイジアナの貧困家庭に生まれたリル・ウェイン。両親は彼が2歳の時には離婚し、 その後お父さんは家族を見捨て出て行ってしまったらしい。12歳の時には自宅にあった銃で自分の胸を撃ってしまい瀕死の重傷を負いながらも奇跡的に生還するなどの経験をしてきたウェインはまさにタフのタフ。それはまるで他の国の人々と比べて硬いと言われるナイジェリア人の髪の毛よりも硬いてことだ。そんなタフな経験を乗り越えて、成功を掴んだ彼の人生は一般人とは比べることはできない。10代前半でレーベルと契約するなど若い頃から注目されてきた彼のラップの才能は本物。ジェイ・Zと同じくリリックを紙に書かず頭の中で組み立ててラップするスタイルなんだって。つまりまるで生理の血のごとく、 彼の思考のメモ張の上に滴り落ちてくるて感じだね。
続いてはR&BシンガーのBabyface(ベイビーフェイス)がフィーチャリングで参加した爽やかな一曲「Comfortable」。
「Comfortable」
Hey, now if you rocking with Weezy Bedroom in the bank, baby we safe I got game like EA But I wanna let you play And don’t I treat you like soufflé? Don’t I look at you like I see a new day?
なぁ、もしお前が今ウィージーと一緒にロックしてんなら、 銀行の中のベッドルーム、オレたちは安全だぜ オレはEAみたいなゲームを手に入れたけど お前にプレーさせたいんだよ そして、オレはお前をスフレのように扱うだろ? 新しい日を見るようにお前を見てるだろ?
実はこんなロマンチックなこともさらっと言えちゃうウェイン。 銀行の中のベッドルームとは、誰もこない安心な場所という意味。 そしてEAとはFIFAシリーズなどを制作する世界的なスポーツゲームブランド。 “But I wanna let you play(お前にプレーさせたいんだよ)”ということで意中の女の子と一緒にゲームを楽しみたいて感じだね。そしてゲームをしてる彼女をお菓子のスフレの野菜くように扱い、まるで新しい日を迎える時のように毎日フレッシュな視線で見つめていると。あんないかつい見た目のウェインからスフレなんて言葉が出てくるなんて。なんか可愛いぜ、ウェイン。
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.195、2000年代名盤特集、リル・ウェインの「Tha Carter III」のラストは「Mr. Carter」!
「Mr. Carter」
Man, I got summer hatin’ on me cause I’m hotter than the sun Got spring hatin’ on me ‘cause I ain’t never sprung Winter hatin’ on me ‘cause I’m colder than y’all And I will never, I will never, I will never fall I’m being hated by the seasons
夏に嫌われちまったぜ、太陽よりホットだからな 春にも嫌われちまった、なぜって恋に落ちないから 冬もオレのことが嫌いみたいだ、お前らより冷たすぎるから そしてオレは絶対に、絶対に、絶対に落ちることはないぜ オレは季節に嫌われているんだよ
言葉遊びのセンスが光るリリック。イケイケのリル・ウェインは春夏秋冬それぞれの季節に嫌われてしまっている。ホットすぎて夏に嫌われ、恋愛の季節である春に恋に落ちず、 冬よりもクールだ。特にウェインは秋が嫌いみたい。なぜなら秋を意味する“fall”は 「落ちる、倒れる」という意味があり、ラップゲームで負けることを連想してしまうから。 だからウェインは“ I will never, I will never, I will never fall(オレは絶対に、絶対に、絶対に落ちることはないぜ)”という感じでオレは絶対にラップゲームからは脱落しないぜという強い意志を表しているわけだね。また四季が表現するのは時代の流れや流行の移り変わりのこと。世の中の流行に嫌われようと、自分を貫いてタフなラップゲームを勝ちぬいてきたリル・ウェインならではの説得力のあるリリックだね。