WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.227。
今回取り上げるのは日本のラップシーンでもおなじみの英語「beef(ビーフ)」。
一般的には「牛肉」という意味だけど、スラングでは「喧嘩、口論」という意味になる単語だね。早速USラップでの使われ方を紹介していくよ!
まずはヒップホップシーンに君臨するラップ・キング、JAY-Z(ジェイ・Z)のヒット曲「99 Problems」から“ beef ” の使い方をチェックしてみよう!
JAY-Z「99 Problems(2003)」
Got beef with radio if I don’t play they show
They don’t play my hits, well, I don’t give a shitラジオ局とビーフ、オレがあいつらの番組をかけなかったら
あいつらはオレのヒットをかけないだろうな、まぁいいさ、知ったことかよ
ラジオ局とビーフ(喧嘩)を繰り広げるジェイ・Z。
その結果として、彼の曲がラジオで流れなくなったとしてもジェイ・Zは知ったことではない。なぜなら彼には十分すぎるほど硬派なファンがついており、ラジオで流れなくても曲を売ることができるから。カッコいいぜ。
続いてはヒップホップ史上最強の武闘派集団、Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)の「Da Mystery of Chessboxin’」!
Wu-Tang Clan「Da Mystery of Chessboxin’(1993)」
I got beef with commercial-ass niggas with gold teeth
Lampin’ in a Lexus, eatin’ beef金歯つけてるセルアウトの連中とのビーフ
レクサスで繰り出して、ビーフ食らってやるのさ
「Da Mystery of Chessboxin’」からRaekwon(レイクォン)のバース。
彼のビーフの相手は“commercial-ass niggas(セルアウトなラッパー達)。そんな連中とのビーフをまさに”ビーフ(牛肉)”を喰らうように勝ってやるという非常にクレバーなリリックだね。
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.227のラストを飾るのは、ビーフといえばこの人、ラップ・ゴッド、Eminem(エミネム)の超過激な一曲「Kill You」!
Eminem「Kill You(2000)」
Bitch, I’ma kill you! You ain’t got the balls to beef!
We ain’t gon’ never stop beefin’, I don’t squash the beefビッチ、殺してやる!お前にはビーフする根性がねぇんだよ
オレたちはビーフすることをやめないぜ、ビーフを収めるつもりはねぇな
過激な歌詞の多いエミネムの曲の中でも随一のぶっ飛び具合を見せるのがこの「Kill You」。タイトルの通り冒頭から“Bitch, I’ma kill you! (ビッチ、殺してやる!)”で始まるこのフックのパートでエミネムがかますのは「ビーフ」の “品詞ライミング”とも言うべき韻踏みのテクニックだ。
まず最初の“You ain’t got the balls to beef!(お前にはビーフする根性がねぇんだよ)”の“beef”は「ビーフする(喧嘩する)」という意味の動詞、続いて、“We ain’t gon’ never stop beefin’, (オレたちはビーフすることをやめないぜ)”で使われてる“ beefin’ ”は動名詞、ラストの I don’t squash the beef(ビーフを収めるつもりはねぇな)の ” beef ”は名詞だ。つまりbeefという言葉の活用を使い分けながらリリックに入れているんだ。
さすが学生時代は国語が飛び抜けて優秀だったというエミネム。beefというスラングでしっかり活用のお手本を見せてくれてるんだ。ラップでしっかり英語の活用が学べるなんて…エミネム先生、ヤバすぎっす!