WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.224。今回はサッカー・ワールドカップ・アルゼンチン優勝特別企画、アルゼンチン・ヒップホップ特集。
サッカー界の生きる伝説、リオネル・メッシ率いるアルゼンチンが36年ぶりの優勝という快挙を成し遂げた今回のワールドカップ。
アルゼンチン国内でも優勝を記念して新たに祝日が制定され、凱旋パレードには400万人が駆けつけるなど大盛り上がりの様子だ。
そんなアルゼンチンなんだけど、実は近年ヒップホップが一大ムーヴメントに。
特に最近は若手の台頭がめざましく、トラップ系のアーティストが大人気なんだ。
今回はワールドカップでのアルゼンチン優勝を記念して、アルゼンチン・トラップ・シーンで絶大な人気を誇る若手ラッパーたちを紹介していくよ!
まず紹介するのは若手イケメンラッパー筆頭格、Rusherking(ラッシャーキング)とTiago PZK(チアゴ・PZK)!
Rusherking, Tiago PZK「NOW (2022)」
Si quiero tenerte now, now, now, now
Mi mente está arruiná’-ná’-ná’-ná’
Me tiene’ desespera’o buscándote
Aunque sé que no me haces bien君を手に入れたい。今この瞬間に。
僕の心は壊れてしまっている。
手に入れたくて、探している
駄目だってわかってるのに。
ラッシャーキングとチアゴは共にフリースタイル・ラップ・バトルで頭角を現したラッパーだ。実はアルゼンチンやブラジルなどの南米地域はフリースタイル・ラップが盛んな地域。大規模な大会が毎年多く開催されているんだ。
特に南米全域から選ばれたラッパー達がスペイン語圏最強の称号をかけて行うラップバトルである、FMS Internacional(Freestyle Master Series)やBatalla de los Gallosなどの観客は1万人以上。またそのバトルのライブストリーミングの視聴者は数百万人を超えるなどまさに桁違いのスケール感なんだ。
「Now」はそんな南米フリースタイル・ラップバトルシーンで、アルゼンチンを代表するラッパーとして活躍していたラッシャーキングとチアゴ・PZKのコラボ曲。
好きな女の子に向けての気持ちを歌った歌詞とメロディアスなフローがエモい一曲だ。
続いては独自性溢れる音楽センスでコアな音楽ファンから絶大な人気を誇るフィメール・ラッパー、Saramalacara(サラマラカラ)!
SARAMALACARA「GUCHI POLO(2021)」
Chicos polo
Where u get my fono?
Guchi porro
Porque quiero todo?男の子、ポロシャツ
どこで私の電話番号をゲットしたの?
グッチ、マリファナのジョイント
どうして全部欲しいの?
テレビゲームをしながらマリファナを吸うのが日課というドープ・ギャル、サラマラカラはアルゼンチン、ブエノス・アイレス出身のラッパー。
元々はグラフィティ・ライターであり、地元ブエノス・アイレスの電車や壁にタギングをしまくってたみたい。
ライターとして活動していた彼女が音楽で注目を集めることになったきっかけが、2019年にサウンドクラウドでリリースしたファースト・シングル“Budokai Tenkaichi”。 タイトルはアルゼンチンでも大人気の漫画「ドラゴンボールZ」をテーマにしたテレビゲーム「Budokai Tenkaichi」からとったんだって。
ゲーマーとしての一面とAvril Lavigne(アヴリル・ラヴィーン)や blink-182(ブリンク・182)、Bad Gyal(バッド・ギャル)などに影響を受けたという音楽性、そしてグラフィティで培ったストリートアートの感覚など、様々な要素が融合したサラのトラップは、言うなれば究極の文化系ラテン・トラップ。
群雄割拠のアルゼンチン・トラップシーンでも、他のラッパーとは一線を画すクリエイティビティを持った唯一無二のアーティストだ。
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」 Vol.223のラストを飾るのは、アルゼンチン・トラップ・シーンの頂点に立つ男、Duki(ドゥキ)の大ヒット曲「GIVENCHY」!
DUKI「GIVENCHY (2022)」
Tengo a lo’ míos hablando italiano, de lunes a viernes solo comen pasta
Tengo a mis hater’ diciéndome “basta”
Modo Ginóbili, no erro canastaイタリア語を話すオレの連れたち、月曜から金曜、食べるのはパスタだけ
オレのヘイターたちはもう十分だろと言う
ジノビリ・モード、バスケではミスらない
ドゥキは2016年にアルゼンチン最大のラップバトル・イベント、El Quinto Escalónで優勝してその名を知らしめたラッパーだ。今やその人気は絶大で、今年7月にMVが公開された「GIVENCHY 」の再生回数はすでに1億界に迫る勢いだ。
そんなドゥキはラップバトル出身者とあって、リリックもテクニカル。
冒頭の「イタリア語を話すオレの連れたち、月曜から金曜、食べるのはパスタだけ」の部分で使われている“pasta(パスタ)”はスペイン語では「お金」を意味する単語。つまりドゥキと彼の仲間がイタリア語を話して、パスタばかり食べているというのは、オレたちは金を稼ぎまくっているぜという事を意味してるんだ。
そしてそんな彼に対してヘイターたちはお前はもう十分稼いだだろと言ってくるのだけど、彼はまだまだ飽きたらない。
アルゼンチンとイタリアにルーツを持ち、卓越したドリブル・テクニックとシュート力でNBAを席巻した名バスケットボールプレーヤー、マヌ・ジノビリのようにドゥキもラップゲームでゴールを決め続けるぜってわけ。
フリースタイル出身の若手、ラッシャーキングとチアゴ PZK、 圧倒的なアートセンスのサラマラカラ、そしてトラップキング、ドゥキ。
今後もアルゼンチン・トラップから目が離せないぜ!