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パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人たちがいる。彼らはなぜ、この仕事を選んだのか?このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。今回はアメリカ、NYで活動するDJ AKIさんのキャリアにDJ SHUNSUKEが迫ります。

SHUNSUKE:
今日は宜しくお願いします!堅苦しくなるのも嫌なので、普段通りに色々聞かせてもらいます!まずはバックボーンについて教えてもらってもいいかな?地元・埼玉県からDJとしてのキャリアをスタートさせたと思うけど、そこから「ニューヨークへ渡る」という大きな決断に至った決定的なきっかけは何だった?
AKI:
原点は中学生の頃、ラップをしていた兄の影響でヒップホップに出会ったことです。高校生でターンテーブルを買い、地元埼玉の熊谷でDJとしてのキャリアをスタートさせました。当初から海外志向が強く、DJ MIXを掘り下げるうちに「やっぱり本場はNYだな」と。ネットで現地のDJミックスを聴き漁る中、DJ K.DA.Bさんに教えてもらったDJ First Choiceの音源に圧倒され、「いつか同じ現場に立ちたい」という夢が生まれました。
SHUNSUKE:
なるほど、First Choiceの音源が原動力になったんだね。そこから渡米を決める決定的なキッカケは何だったの?
AKI:
一度下調べで3ヶ月間NYへ行ったときです。現地のリアルなシーンに完全にぶっ飛ばされ、帰りの飛行機では「絶対にここに戻ってくる」と貯金の計算をしていました笑
帰国後、地元熊谷の『WAbySABI』、六本木『IBEX』でのレギュラーなどで1年半みっちり経験と資金を蓄え、満を持して渡米しました。

海外の現場で受けた洗礼
SHUNSUKE:
NYのクラブやストリートの現場に初めて飛び込んだ時、日本のシーンとの一番の「違い」や、カルチャーショックを感じた部分はどこだった?
AKI:
まず驚いたのは、1現場のDJが基本1〜2人、多くて3人体制という少なさですね。DJ一人当たりの時間がとにかく長いんです。そして客全員が英語ネイティブなのでとにかく大合唱します。選曲がハズれた時のジャッジと切り替えの早さもシビアですが、NYに来てR&Bの偉大さに改めて気づかされました。
SHUNSUKE:
お客さんの反応がダイレクトだから少人数で流れを大切にすると言うか。タフな洗礼とかはあった?
AKI:
最初のリアルな洗礼は、マンハッタンのクラブでの経験です。挨拶や偵察に行っても、そもそも中に入らせてすらもらえない。中に入りたいなら「200ドル払え」と平気で言われる容赦のなさに、この街の厳しさを突きつけられました。
SHUNSUKE:
200ドルは高いね笑
AKI:
そうなんですよ笑
あと、急遽呼ばれてプレイしに行ったギグで、縛りがあったりすることですね。例えばセネガルのサッカーの試合のWatch Partyだった時は、現場で必死に血眼でディグりながら、ぶっつけ本番で5時間DJを回し切りました。あの時は本当に焦りましたね笑
ただ、まさに人種のるつぼなので、こうして世界各国のリアルな音楽や文化に生で触れられるのは、NYならではの最高の楽しさです。


アイデンティティの確立
SHUNSUKE:
世界中から腕利きのDJやアーティストが集まるNYという街で、日本人であること、あるいは「自分自身の強み・オリジナリティ」をどのように見出し、どう表現していったの?
AKI:
僕はまだ現場でマイクがうまく使えなくて、今練習中なんです。現地のDJはマイクや勢いでフロアをロックしますが、使えないからこそ、自分は純粋な「選曲の説得力」だけで勝負するしかありません。そこで意識しているのが、日本人ならではの繊細さと、現地の荒々しいバイブスの絶妙なバランスです。
SHUNSUKE:
感覚を掴むのって最初は結構難しかったんじゃない?
AKI:
その感覚を掴むために、最初の1年は睡眠時間を削って毎日クラブに通い詰めました。言葉が完璧じゃないからこそ、誰よりもフロアを観察し、ニューヨーカーが曲のどこに反応するかを体に叩き込んだ。その泥臭いリサーチの蓄積が、今の僕の強みなのかなと思います。

NYのクラブカルチャーのリアル
SHUNSUKE:
NYのクラブオーディエンスは日本以上にリアクションがストレートだと思うけど。彼らの心を掴み、フロアをロックするために、選曲やプレイスタイルにおいて一番意識していることって何?
AKI:
現地の客はとにかく大合唱するので、一曲一曲のメッセージやリリックの理解は絶対です。ただ言葉を知っているだけでなく、ジャンルを問わず選曲の意味合いや、客が今どこを歌いたいのかというポイント、曲ごとに存在する一番大事なパートを的確に掴むことを常に意識しています。
SHUNSUKE:
リリックの理解とフロアの呼吸を合わせるのが大事なんだね。プレイスタイルでのこだわりは?
AKI:
現地では言葉の壁もあり、マイクを多用してフロアを煽るスタイルはあまり使えません。ですが、NYはレゲエカルチャーの基盤がめちゃくちゃ強いので、HipHopの現場であってもレゲエのジョグリンのような、次々に展開していく疾走感のあるプレイスタイルは常にイメージして回しています。マイクが使えない分、客が一番歌いたいパートでしっかり爆発させつつ、疾走感のあるプレイで聞き手を飽きさせない。曲の展開とその意味合いだけでフロアの熱量をコントロールし続けることを意識しています。

ハードルとブレイクスルー
SHUNSUKE:
言葉の壁やプロモーション、あるいはギグを勝ち取るための動きとか、これまでのNY生活の中で「これが一番タフな壁だった」と感じる局面と、それをどうやって乗り越えたかを教えてもらってもいい?
AKI:
渡米して最初の1年は思うようにDJができず、本当に苦労しました。そんな時、先輩から「自分が好きなDJのオープン枠に食い込め」とアドバイスをもらったんです。僕はFirst Choiceのプレイが大好きだったので、彼が回す現場には全て通い詰め、「オープンをやらせてくれ」と何度も直談判しました。しかし、タイミングが合わず苦戦する日々でしたね。
SHUNSUKE:
直談判し続けるのも相当なエネルギーがいるよね。そこからどうやってチャンスを掴んだの?
AKI:
転機はある日、いつも通りオープンから遊びに行った時に訪れました。僕の熱意を覚えてくれていたお店のスタッフから「オープンDJが遅刻してるから、今すぐお前が回せ!」と声をかけられたんです。
SHUNSUKE:
千載一遇のチャンスが降ってきた!
AKI:
ぶっつけ本番で必死にプレイしたところ、後ろでFirst Choice本人が見てくれていて。そこから彼や周りのプロモーターに認めてもらい、一気にギグをいただけるようになりました。あの日、諦めずに通い詰めて本当に良かったですし、引き上げてくれた彼には感謝しかありません。

日米の売り込み方の違いとリアル
SHUNSUKE:
現場のプロモーターやDJのボスたちに「自分を売り込む」とき、日本でのやり方が通用しなかったり、逆に「ここまでガツガツ自分を主張しなきゃいけないのか!」と驚いた瞬間はあった? NYのアーティストたちがやっている、あるいはAKIが実践している「効果的な売り込みのリアル」みたいなのがあれば聴きたいです。
AKI:
ニューヨークは、傲慢さやストイックさ、そして「がっつき」が決定的に大事な街です。僕自身、元々は結構奥手なタイプなので、どう自分を売り込むかは本当に悩みました。だけど、こっちでは自分から発言せず、ただフロアにいるだけだと、ただ遊びに来ている客だと思われて終わります。だからこそ、現場では「しつこいなコイツ」と相手に呆れられるくらいの熱量で、とにかく自分から声をかけ、存在をアピールし続けました。
SHUNSUKE:
日本特有の「一歩引く美学」みたいなのは、向こうだとネガティブに捉えられちゃうんだ。
AKI:
そうですね、日本的な一歩引く謙虚さは、ここでは自信がない奴とみなされてしまいます。存在すら気づいてもらえない場所から、泥臭く自分という存在を主張し続ける覚悟を持つこと。まずはその壁をブチ破るガッツが、NYでの売り込みの絶対的なスタートラインだと学びました。

プロフェッショナルとしての成長
SHUNSUKE:
日本にいた頃の自分と、NYの荒波に揉まれている現在の自分を比べて、DJとしてのスキルや音楽に対する向き合い方、マインドセットにどのような変化があった?
AKI:
日本にいた頃と一番違うのは、現場に対するハングリー精神です。NYでは、次も呼んでもらうためには本当に毎回命懸けでカマさないといけない。せっかく手に入れたレギュラーイベントだって、結果を出せなければいつクビになってもおかしくない世界です。
SHUNSUKE:
気が抜けない環境、常にサバイバルだね。
AKI:
その環境に揉まれたことで、音楽に対する覚悟の座り方が完全に変わりました。思うようにDJができずクラブに通い詰めた時期も含め、どれだけ失敗しても、無視されても、足を止めずに走り続けるタフさが身につきましたね。綺麗に回す技術以上に、この街の荒波に押し潰されないタフなマインドセットを手に入れられた事こそが、僕の最大の成長だと思います。
現場のサバイブ術
SHUNSUKE:
まだ若くして異国の地に単身で飛び込み、コネクションをゼロから作っていく中で、現地の人脈を広げたり、プロデューサーやプロモーターに自分を表現するために、日々どんなアクションを心がけてるの?
AKI:
基本的にこっちの人は他人より自分の事を一番に考えてるので、何回か会ったくらいではそっけないのがほとんどです。だからこそ、あちこちに広く浅く営業にいくのではなく、まずは「この人」と決めた1人のプロモーターやDJに自分を知ってもらうために徹底的に現場に通いました。彼らは一度仲間だと認めてくれれば、仲間に対しての思いが凄く熱いからです。
SHUNSUKE:
ただがっつくだけじゃなくて、関係性の深め方にも色々あるよね。
AKI:
はい。そこで僕が心がけているのは、ただ生意気にガツガツするだけではなく、日本人の強みである気遣いと礼儀を意識して、相手の記憶に少しでも印象を残しす事です。「日本から来て頑張っている奴がいる」と思ってもらい、プロモーター側から「コイツを仲間に紹介したい」と自然にフックアップしたくなるような関係性を築くこと。自己主張をしつつも、自分本位にならず相手が応援したくなる人間性でいること。この絶妙なバランスを、日々の現場で大切にするようにしています。

影響を受けた音楽と街の空気
SHUNSUKE:
現在のプレイスタイルや、これから制作していきたい楽曲のインスピレーションにおいて、NYという街の空気や、現地で新しく出会った音楽・コミュニティから受けている影響ってどんなものがあるの?
AKI:
NYに来てから、ヒップホップ以外の音楽にも触れる機会が圧倒的に増えました。その中でも、特に現地のReggaeシーンからは強い影響を受けています。ニューヨークはジャマイカ人を含むカリビアンの人口が非常に多いため、ヒップホップのパーティーであっても現場では必ずReggaeやDancehallがかかります。
SHUNSUKE:
あぁ、さっき言ってた「ジョグリンのスタイル」はそこから来てるんだね。
AKI:
まさにそうです! 彼らの音楽やバイブスを日々肌で体感する中で、今の僕のDJスタイルには、Reggae特有のジョグリン(疾走感のあるクイックな繋ぎ)のスタイルが色濃く反映されるようになりました。この街の多様なコミュニティと現場の空気感があったからこそ、今のスタイルが確立されたと思っています。

キャリアにおける「挫折」との付き合い方
SHUNSUKE:
思い通りにいかないことや、悔しい思いをすることも多々ある環境だと思います。モチベーションが落ちそうになった時、自分を支えているものや、ピンチをチャンスに変えるためのマインドの保ち方は?
AKI:
NYは本当にすべてのスピード感が早いです。思い通りにいかないことや、悔しい思いをしたことは数え切れないほどたくさんあります。でも、この街にいると、その悔しさにどっぷり浸かって立ち止まっている時間なんてないんですよね。落ち込んでいる暇があったら「じゃあ次どうしていこう?」と、自然と頭が次の作戦に切り替わっています。
SHUNSUKE:
立ち止まったら置いていかれるっていう緊張感が、逆に前を向かせてくれると。
AKI:
本当にその通りです。悩む前に動かないと一瞬で置いていかれる環境だからこそ、クヨクヨせずに走り続けられる。街のタフなスピード感そのものが、僕のモチベーションを押し上げてくれる一番の原動力になっています。

若き挑戦者へのメッセージ
SHUNSUKE:
同じように「いつか海外の現場で挑戦したい」「自分の音楽を世界に届けたい」と夢見ている、同世代の若いDJやアーティストたちに向けて、今のAKIだからこそ伝えられるリアルなアドバイスを送るとしたら?
AKI:
僕自身、日本である程度有名にならないとNYには行けないと思っていました。でも、もし少しでも海外に興味があるなら、言い訳を作らず今すぐ準備して現地に実際に行ってみてほしいです。ガッツリ住むとまでいかなくても、たった1週間現地に行くだけで確実に見える世界が変わります。特別な資格なんて何もいらないし、極端な話、お金を貯めるだけで行くことができる場所なんです。体験する事が本当に大切だと思っています。
SHUNSUKE:
「まず行ってみる」っていう行動力がすべてを変えるよね。
AKI:
はい。現地に行けば、悔しい思いもたくさんします。だけど、そこで足を止めずにやり続けることでしか次のチャンスは掴めません。まずはその最初の一歩を踏み出すこと。タフな挑戦ですが、行動を起こした人にしか見えないリアルな世界があると思います。「やらない後悔よりやる後悔」の精神で日々生きています笑
現在地とこれからのビジョン
SHUNSUKE:
現在、NYで展開している具体的な活動状況について教えてください。また、今後この街で、あるいはグローバルなシーンにおいて、DJ AKIが目指す「次のフェーズ」みたいなものがあれば教えてください。
AKI:
ありがたいことに、現在はプロモーターグループの『KLUB KINGZ』の方々にお世話になっていて、彼らが仕掛ける主要イベントにレギュラーで出演させていただいています。毎週金曜日の『RnB Fridays』への出演をはじめ、木曜日にBrooklynで開催されている『Good Vybz』、そして日曜日にQueensで行われている『Soul Session』にもDJとして出演しています。これらはFirst ChoiceやTy Boogie、DJ SELFといった現地のトップDJたちが集まるビッグイベントで、その最前線で毎週プレイさせてもらっています。
SHUNSUKE:
凄いメンツだね! ラウンジやレストランとかでも回してるんだよね?
AKI:
そうですね。Harlemにある2箇所のレストランでのレジデンシーを持っているほか、単発の案件で様々なLoungeやBar、Rooftopなどでもスピンしています。とにかく今はNYでの基盤をより強固にするため、これらの現場でプレイに100%専念している状態です。
そして、この街での大きな野望は、NYヒップホップ最大のラジオ局である『Power 105』のブースに立つことです。今は昔に比べてラジオの影響力や敷居は下がったと言われる時代ですが、電波に乗せて自分のミックスを響かせることは、僕にとってずっと変わらない絶対的な憧れです。現地のトップDJ達と並んで回させて貰えている今だからこそ、ただの夢で終わらせる気はありません。時代がどう変わろうと、NYストリートの象徴であるあの場所でDJをする。それが、僕の最大のビジョンです。
SHUNSUKE:
今の姿勢を崩さなければいつかチャンスは巡ってくるかもしれないしね!凄く成長している話が聞けて嬉しかったです!これからの動きも期待しています!

プロフィール
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埼玉・熊谷のアンダーグラウンドシーンからキャリアをスタートさせ、東京(六本木・渋谷)の主要クラブで活躍。日本では企業系イベントのほか、女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)所属の「ちふれASエルフェン埼玉」の公式DJを務めるなど、確固たる実績を築いたのち渡米。現在はヒップホップの本場ニューヨークへ活動拠点を移し、現地のナイトライフや商業シーンの最前線で頭角を現している。世界的人気ラッパー Megan Thee Stallion(ミーガン・ザ・スタリオン)がプロデュースするテキーラブランドのプロモーションイベントでのDJプレイや、数多くの海外セレブリティが夜な夜な集まる著名スポット「Girls Love Karaoke」でのDJに抜擢されるなど、その影響力を急速に拡大。現在はマンハッタン、クイーンズ、ハーレム、ブルックリンなど、現地のナイトクラブからラウンジ、レストランにいたるまで多岐にわたる現場でスピン。ニューヨークを拠点に活動を展開する気鋭の日本人DJ。

