「こんな自由なスタイルでも、ちゃんとやっていけるよ」と背中で見せたい

DJ、イラストレーターとして活躍するDJ SHIOTSUのキャリアとは?

ライター:DJ SHUNSUKE

パーティーを通して人の心を強く揺さぶり続ける人たちがいる。彼らはなぜ、この仕事を選んだのか?このコーナーではパーティーというカルチャーに関わり続ける演出家たちの過去から現在まで続くキャリアを紐解いていきます。今回はDJであり、世界中の名立たるアーティスト達から高い評価をされるイラストレーターでもあるDJ SHIOTSUさんのキャリアにDJ SHUNSUKEが迫ります。

ヒップホップとの出会い

SHUNSUKE:
まず、DJとしてのルーツから伺いたいです。

SHIOTSU:
きっかけは高校の友達がヒップホップをやっていた事でした。周りはヒップホップを聴いてたんですけど、僕、当時はビジュアル系バンドのギタリストだったんです。LUNA SEAとかGLAYが流行っていた時期に、高校では「ヒップホップ最高」という空気で、僕だけジュディマリとか答えてる温度差でした笑
そんな中、バンドのベーシストから「この5枚を聴いとけ」って音源を渡されて。中身はドリーム・シアターとかイングヴェイとかハードロックの名盤ばかりだったのに、その中にまさかの2Pacの『All Eyez on Me』が入っていて。「このベースライン聴いとけ!」って。そこでヒップホップというより、ブラックミュージックとしてのバックトラックの格好良さに惹かれたんです。


その後バンドが解散、新加入のドラムのお父さんがジャズのライブハウスでパーカッションをやっていたので観に行ったら、エド・ルイスという黒人の方がトランペットを吹いていて、スタンダードジャズを演奏していたんです。本当に衝撃を受けました。「ビジュアル系なんかやってる場合ちゃう、ジャズギターやりたい!」って。そのライブハウスにいた現役ジャズギタリストの寺井豊さんに直談判して弟子入りしたんです。当時17、18歳、若さゆえの行動力ですね。高校は中退してました笑
ただスタンダードジャズは18歳の自分には渋すぎて、先生に「僕らの世代でも格好良いと思えるジャズのアーティストはいませんか」と相談したら、お弟子さんに紹介されたのがロニー・ジョーダン。ジャズとヒップホップを融合したアーティストで、マイルス・デイヴィスをカバーしていたのを聴いて「これや!」と、本格的にヒップホップにのめり込んでいきました。

DJ LEADとの出会い

SHIOTSU:
その頃、友人たちとレコード屋巡りを始めて、当時京都にあった「L-COMMITTEE」というレコード屋に行ったんです。そこでジャケットを見た瞬間に衝撃を受けたのが、ローリン・ヒルの「Ex-Factor」のリミックス盤でした。メアリー・J. ブライジも一緒に買って、ラップより歌物(R&B)が好きだと気づいて猛烈に集め始めました。それがターンテーブルを買ってDJを始めるきっかけです。


18〜19歳の頃、大学生になった友人たちがラップを始めて、その一人に「一緒にやってくれへん?」と誘われ始めて現場に出ました。そのうち自分たちでイベントを始めて「ゲストを呼ぼう」となった時に、高校時代に強烈なカリスマ性を放っていた同級生のラッパーのことを思い出したんです。それで彼を京都のクラブ「DOT(ドット)」に呼んだんですけど、その時にバックDJとして一緒に来たのが、DJ LEADだったんです。
当時のDJ LEADは、ツンツン金髪にサンバイザーを逆に被った怖い風貌だったんですけど、リハでスクラッチを始めた瞬間、度肝を抜かれて。「怖いけど、この人DJめちゃくちゃうまい!」となって、作っていたミックステープに連絡先を書いて渡したら、後日本当に電話をくれて「毎週水曜『シークレットカフェ』でDJしない?」と誘われました。
そこにその後活動を共にするYMXたちも集まっていて
不特定多数に自分の音楽を聴かせるきっかけをくれたのは間違いなくあの場所です。
ある時、LEADくんから「土曜日にシークレットカフェで回してるから遊びに来いや」と言われて行ったら、フロアにお客さんが全然いないんですよ。それなのにLEADくんはマイクを使って、めちゃくちゃ激しくスクラッチしながら全力でDJプレイをしていて。「すっげえ……!」って痺れました。LEADというワードが沢山出てきてるんですけど僕のDJの話は、DJ LEAD(以下ひでくん)が全てみたいな部分があるんです笑

京都BUTTERFLYでの熱量と葛藤

SHUNSUKE:
当時「京都にBUTTERFLYという凄い箱がある」と噂になってました。どんなお店だったんですか?

SHIOTSU:
完全にひでくんのカラーが出た箱でした。ひでくんは世界のトップDJ集団「The Heavy Hitters」に入りニューヨークに住んだりしてた時期で、ベースはUS直系のヒップホップ。ディレクションを担当していたのがKEISUKE君というブレイン的な存在で、ビジネスとして外国人のお客さんをどう集客するかという課題もあって、「フォーリナー・フリー(外国人入場無料)」などのシステムを色々と考えてやっていました。当時京都には「SAM & DAVE」「WORLD」「BUTTERFLY」という3大箱があり、英語圏に強いSAM & DAVEに対抗して、BUTTERFLYもピットブルやドン・オマールのような、いわゆる「オープンフォーマット」と言われる前段階の、アップテンポなダンスミュージックを取り入れ始めたんです。「ヒップホップの芯を通しながらどうフロアを揺らすか」を毎週ミーティングしていました。ひでくんとYMXはニューヨークのストリートに視野が特化していたのに対し、僕はフロアを見てキャッチーな曲も混ぜたいタイプだったので「そのプレイはないわ」と怒られることも多く、本当に胃が痛くなる毎日でした笑

SHUNSUKE:
BUTTERFLYの時代の2013年にはご自身もDJ SPANKY(現SO DOPE)との国内ツアーも行いましたよね。

SHIOTSU:
そうですね。それまでひでくんにおんぶに抱っこだったのを「今回は全部自分でやれよ」と言われて、スポンサー探しからアテンドまで自分でやりました。通訳を付けずに、拙い英語でもフィーリングを大事に話していたら冗談を言えるくらい通じるようになって。おかげで今も外国人との会話に物怖じしない自信になっています。

SHUNSUKE:
コロナで残念ながら閉店してしまいましたが、SHIOTSUさんにとってBUTTERFLYを通して得られた一番の財産って何ですか?

SHIOTSU:
音楽、DJという部分の財産は沢山あるんですけど、一番の財産は人とのつながり、関係を通して「ライフスタイル」の原型を作れたことです、間違いなく。

現在の活動

SHUNSUKE:
最近はホテルやラウンジなど現場の幅が広がっていますが、選曲で意識していることは?

SHIOTSU:
「自分がかっこいいと思う良い曲をかける」ことだけは絶対です。それが軸にあって初めてお客さんに伝わると思うんです。
BUTTERFLYの閉店後は、お風呂カルチャーを広める「FROCLUB」でDJする機会が増え、レゲエからおしゃれな生音系まで幅広くかけるようになりました。今メインの現場は「Ace Hotel 京都」で、丸4年ほどレギュラーを務めています。コロナ禍で一度月一のDJが途切れたあと、プロフィールとミックスをマーケティング部に送って日曜日のチャンスをもらいました。ブランディングに合わせつつドレイクなど最近のヒップホップを混ぜたプレイがフロントの若いスタッフに刺さり、「来週から毎週土曜やってもらえませんか」とオファーが来て今に至ります。ただホテルの現場では「Nワード」が入った音源にはかなり気を遣うようにしています。幅広い層へ向けて新譜旧譜自由にやらせてもらってます。

SHUNSUKE:
様々な経験を経て今に至りますが、今のSHIOTSUさんのDJライフは、すごく自由にのびのびとできているように見えます。

SHIOTSU:
本当にその通りで、一種の「呪縛から解き放たれた」感じなんです。「クラブDJはこうじゃないとあかん」という思い込みから解放されて。Ace Hotel 京都でのスタイルこそ自分が一番やりたかったことだと思います。クラブだと体力的にもしんどくなってくる部分があるので。それに、みんなと違う場所を歩んでいるマイノリティ感を喜ぶ自分も正直いて笑
初めてヒップホップを聴いた頃の、マジョリティに対するマイノリティだけど本質、という感覚は今も変わっていません。

しおつ工房・Cartoon Mafiaについて

SHUNSUKE:
しおつ工房・Cartoon Mafiaというデザイナー、イラストレーターとしての顔もありますよね。世界的なアーティストもSNSのトップ画像にしています。絵を描き始めたきっかけは何だったんですか?

SHIOTSU:
元々は自分のミックステープのジャケット用に黒人の絵を描いたりしていました。感覚的に「自分は絵が描ける人間だな」とは思っていて。当時はSNSもなく誰の目にも触れていなかったんですが、きっかけはひでくんが祇園に作ったお店「SEED」での朝方ミーティングです。売り上げや方針のシビアな話が飛び交う中、僕は白い収支表の裏にみんなの顔をラクガキしていて。ひでくんに見つかって「お前何してんねん!何描いてんねん!」って激怒されて、ヤバいと思ったら、ひでくんがその紙をじっと見て「……これ、ええやんけ。お前こんなん描けんの!?めちゃくちゃええやん、ちゃんと仕上げて描いてや」ってなったんです笑
それをひでくんたちがMixiのトップ画像にし始めたのが「しおつ工房」の最初の一歩でした。その後、ひでくんが大阪に作ったクラブ「AZURE」の『AZURE新聞』でイラスト枠をもらい、RYUZO君やDABO君らを描かせてもらいました。さらにひでくんがThe Heavy Hittersに入った時、メンバー全員(総勢40〜50人)の絵を描き上げ、翌年ひでくんとニューヨークへ行ったんです。ラジオ局「HOT 97」のスタジオで生放送中に「From Japan, DJ LEAD!!」とシャウトされ大興奮した後、DJ Camiloに絵を渡したら「Cartoon Mafia!」と言ってくれて!響きが格好良すぎて「英語名義はCARTOON MAFIA、日本語はしおつ工房でいこう」とその瞬間に決めて。その場で「Cartoon Mafia!!」ってシャウトを録らせてもらいました。今でも忘れない最高の衝撃です。

SHUNSUKE:
海外アーティストとのイラストのエピソードも強烈だと伺いました。

SHIOTSU:
Chainsmokers、FUNK FLEX、Breakbeat Louから直接オファーが来たり、Fatman Scoop、Lil Jon、Skrillex、DJ SNAKEなどかなりの数の海外著名人を描きました。故Fatman Scoopは絵を気に入ってすぐ最高のシャウトを送ってくれましたし、Lil Jonは絵を渡したら向こうのマネジメントから正式な契約書が送られてきて「サインしてくれ」と。「何が欲しい?」って聞かれたので興奮のあまり「お金はいらん、お前のシャウトをくれ!」とDMしたんです。翌月、麻布十番の「ELE TOKYO」のオープン日に来日していた彼から突然「今東京にいる。ELE TOKYOに来い」ってDMが来て。京都と東京が近いと思ったんでしょうね笑
「これは行くしかない!」と新幹線に飛び乗ってVIPルームに行くと、大柄なSPたちにガチガチに固められたLil Jonがいて。僕の顔なんて向こうは認識していないので、スマホで自分の描いた絵を見せて「これ描いたの俺や!」と言ったら「おお、こっち来い!乾杯しようぜ!」と迎え入れてくれて。そしたら「お前、シャウトが欲しいって言ってたな。ここは音がうるさいから付いてこい」とトイレに連れて行かれ、SPがドアの前に2人立って誰も入れないようにして、狭い個室の中でリル・ジョンと僕が二人になって、「iPhoneのボイスメモの準備はいいか?」って言われてシャウトを録ってもらいました笑
後日、音楽関係の社長さんに「シャウトだけ?言い値でくれたのに笑」と言われましたが、あの狭いトイレでの思い出はお金より遥かに価値のある財産です。こうした全てのきっかけをくれたのも、海外アーティストを完璧にアテンドして信頼を築いてきたDJ LEADという人物なんですよね。

次世代へのメッセージとこれからの野望

SHUNSUKE:
次世代のアーティストに伝えたいメッセージはありますか?

SHIOTSU:
僕はオラオラ引っ張るタイプではないけれどAce Hotel 京都では最近若い子をメンバーに入れて一緒にやっていて。「こんな自由なスタイルでもちゃんとやっていけるよ」と背中で見せたいって思います。デザインもDJも根本のセンスの磨き方は一緒、僕のフィルターを通して若い子が何か挑戦するきっかけになれば嬉しいです。

SHUNSUKE:
今後のビジネス的な動きとしては、どんなことを考えていますか?

SHIOTSU:
実は今、DJとしおつ工房の仕事に加え、ご縁でレストランの店長という人生初の経験も楽しんでいます。また、先程話していたAce Hotelが2027年に福岡にもできるので、その時はDJとしてだけでなく、ホテル全体の「サウンドのプロデュース」で関わりたいというのがひとつの目標です。
新しいプロジェクトとしては、近いうちに「しおつ工房」のタッチでオリジナルの立体フィギュアを作りたいという野望があります。今はAIで簡単に3Dモデリングができる時代ですが、自分の絵をあえてAIに学習させて実験してみると、AIには絶対に真似できない「僕だけの領域」があると分かりました。一発で「SHIOTSUの絵だ」と分かる、AIには再現できない奥行きがあるんです。ひでくんに「もうすぐAIに仕事奪われるぞ」と冗談で脅されますが、「俺のこの絵は真似できひんで!」という絶対的な自信を持っています。だから色々楽しみにしていてください!

SHUNSUKE:
フィギュア、素晴らしいアイディアですね!楽しみにしています!今日は長い時間お話を聞かせていただいて、ありがとうございました!

SHIOTSU:
ありがとうございました!

プロフィール

  • DJ SHIOTSU

    DJ SHIOTSU

    イラストレーターであるDJ SHIOTSUは「CARTOON MAFIA」、「しおつ工房」の名で知られ、近年その活躍は世界中から注目されている。似顔絵を中心とする彼の作品は国内外問わず大きな反響を呼び、NYを拠点に構成される世界のトップDJ集団 THE HEAVY HITTERS をはじめ、全米で絶大な人気を誇るアーティストLIL JON、KID INK、DJ DRAMA、FUNKMASTER FLEX、FATMAN SCOOP、MAKJ、CHAIN SMOKERS、DON OMAR、CONSEQUENCE、KID CAPRI、そして国内ではSHOKICHI(EXILE)、DOBERMAN INFINITY, Hilcrhyme(ヒルクライム)TOC、DJ LEAD、北島康祐(水泳平泳ぎオリンピック金メダリスト)、山本良介(トライアスロン日本代表)、寺内健(飛び込み日本代表)、池江璃花子(競泳選手)ELJERO ELIA(サッカーオランダ代表選手)、T-岡田(オリックス・バッファローズ)、坂口(オリックス・バッファローズ)など、多くの著名人がSNSやプロモーション等で使用し、話題となっている。「CARTOON MAFIA」の名はTHE HEAVY HITTERS全員のイラストレーションを手がけたことによりDJ CAMILOに名付けられたものである。 また、DJとしての活動も特筆すべき点である。2001年よりクラブDJとして活動を開始。現在全国で最も注目されているクラブ"京都BUTTERFLY"にて毎週土曜日開催される看板パーティー"BUTTERFLY SATURDAYS"のレギュラーDJとしてDJ LEAD、DJ YMXらと共に京都のシーンを支え2020年コロナの影響で閉店。これまでに、DJ LEADらと共に様々なゲストを招き(PETE ROCK、THE PHARCYDE、BIG BOY & DJ E-MAN、KURUPT、XZIBIT、ROSCOE、SHADE SHEIST、DJ EVIL DEE & MR WALT、DJ TONY TOUCH、 DJ STRETCH ARMSTRONG、DJ SPINBAD、FUNKY DL 等)公演を行っている。2013年11月にはTHE HEAVY HITTERSに所属するDJ SPANKYと共に全国ツアーを廻り、各地で成功を収めている。彼独自の世界観と経験をもって、ブラックミュージックのよさをDJを通して伝えるそのセンスは本物で、選曲の幅も広く、彼のプレイを支持する熱狂的なファンも多い。昨今ではホテルやラウンジなどのDJをメインに結婚式や宴会など様々な現場にてプレイする

タグ一覧