WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」。Vol.391の今回はWu-Tang Clan(ウータン・クラン)の実に29年ぶりにして最後の来日ツアーとなる「Wu-Tang Forever: The Final Chamber」開催記念特集の第6回、Ol’ Dirty Bastard(オール・ダーティー・バスタード)編。
個性派揃いのウータンの中でも圧倒的にぶっとんだキャラクターと、何人も真似できない異次元のフローでグループ屈指の人気を誇った”ODB”のリリックをチェックしていこう!
まずはウータンの1stアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』収録の「Shame on a Nigga」!
「Shame on a Nigga(1993)」
Yo, hut one, hut two, hut three—hut!
ハット・ワン、ハット・ツー、ハット・スリー、行くぜ!Ol’ Dirty Bastard, live and uncut
オレはオル・ダーティ・バスタード、なまもんで、無加工Styles unbreakable, shatterproof
スタイルは破壊不能、砕け散らねぇTo the young youth, you wanna get gun? Shoot!
若者諸君、銃を持ちたいって?撃ってみな!
オール・ダーティー・バスタードの自己紹介的なヴァース。アメリカン・フットボールの掛け声である“hut(ハット)”を使いながら自己紹介をするODBは、live(生の、本物の)で、uncut(加工されてない)、音源からもストリートのヒリヒリ感が伝わってくるドープなラッパー。そのスタイルはまさにunbreakable(アンブレイカブル:破壊不能)ってわけだね。
続いては同じく1st『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』収録の「Da Mystery of Chessboxin’」!
「Da Mystery of Chessboxin’(1993)」
Comin’ raw style, hardcore
かましてく、ありのままのスタイル、ハードコアNiggas be comin’ to the hip-hop store
あいつらがやってくるヒップホップストアComin’ to buy grocery from me
オレから買おうとする日用品Pretendin’ to be a hip-hop MC
ヒップホップMCのフリをしやがってThe law, in order to enter the Wu-Tang
ルールがあんだよ、ウータンに入るにはYou must bring the Ol’ Dirty Bastard type slang
オールド・ダーティ・バスタード・タイプのスラングを持ってこなきゃな
異次元のフローをかましながら、実は硬いライミングをしっかり決めてくるODBのリリック。”hardcore(ハードコア)”と“hip-hop store(ヒップホップストア)”でライムするこのラインは、ハードなスタイルを貫くODBのもとにやってくるヤワなMCたちをディスったパート。ウータン・クランに憧れてラップを始めたり、メンバーになりたがったりする人もいるけど、ウータンに入るにはしっかりした“ law(法律、ルール)”がある。それはオールド・ダーティ・バスタード・タイプのスラングを持ってくること。なかなかハードめな入団テストだぜ。
ラストは彼のソロ・デビューアルバム『Return to the 36 Chambers: The Dirty Version(1995)』収録のヒットソング「Shimmy Shimmy Ya」!
「Shimmy Shimmy Ya(1995)」
Off on a natural charge, bon voyage
ナチュラル・チャージで発進、ボン・ボヤージュYeah, from the home of the Dodger Brooklyn squad
ドジャー・ブルックリン軍団のホームからWu-Tang killer bees on a swarm
ウータンのキラービーが群れで襲いかかるRain on your college-ass disco dorm
お前らの大学ディスコ寮に降らせる雨
ODBの代表曲であり、1stヴァースと2ndヴァースのリリックが同じという珍しい構成の「Shimmy Shimmy Ya」。リリックで出てくる Dodger Brooklyn(ドジャー・ブルックリン)は現在のロサンゼルス・ドジャースのこと。実はドジャースは1883年の設立から1957年までブルックリンを本拠地としていたんだ。ODBは元々ブルックリンが地元であり、そこからウータンの仲間たちとラップシーンにぶちかましていくってことだね。”Rain on your college-ass disco dorm(お前らの大学ディスコ寮に降らせる雨)”は当時のシーンの状況を考えると、1990年代にコロンビア大学の学生ラジオ局で放送されていた「The Stretch Armstrong and Bobbito Show(ストレッチ・アームストロングとボビートのショー)」が想起される。このラジオ番組は当時ニューヨークでクラブDJをしていた“ストレッチ・アームストロング”と“ボビート”がホストを務めていたヒップホップラジオ番組であり、90年代のヘッズの間で絶大なプロップスを得ていた番組だ。そんな番組の中で名物企画だったのがフリースタイル。当時の若手ラッパーの多くがこの番組でフリースタイルを披露、それがきっかけでシーンでの認知度が広がるケースも多く起きていたんだ。実はODBが彼のソロアルバム『Return to the 36 Chambers: The Dirty Version Elektra Records』をリリースした Elektra Recordsと契約を結ぶことになったのもこの番組がきっかけと言われており、当時のレーベルのA&R(新人発掘担当)がこの番組での彼のラップを聴いて、契約を決めたとも言われている。“Rain on your college-ass disco dorm(お前らの大学ディスコ寮に降らせる雨)”はそんな当時の大学ヒップホップ・ラジオシーンを引き合いに出し、そこにODBのラップのドープな一撃を喰らわせてやるって意味にも取れるよね。
【歌詞出典元】Genius
*訳は全て意訳です。
こんなスラングも知ってる?
cheesy
安っぽい

tied in
結束している、繋がっている

hard
困難な、難しい、激しい



