「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのは年末年始で観るべき!ヒップホップ文化を学べる映画3選!
①『Hip-Hop Evolution』
ヒップホップ音楽の誕生と進化を4シーズンに渡って描いたNetflixドキュメンタリー。カナダ出身ラッパーのシャッドが、アメリカ各地を周り、ヒップホップ音楽のレジェンドたちに直接インタビュー。1970年代のニューヨーク・ブロンクスのストーリーから、各地域での進化、そして現在に至るまでのヒップホップの歴史を辿る。50年以上に渡るヒップホップの歴史をレジェンド・アーティストたちのインタビューから体系的に知ることができるよ。
またヒップホップだけに留まらないブラック・ミュージック全体への理解を深めることができるのもこの作品の大きな魅力。ヒップホップ文化はアメリカの黒人奴隷制、そしてそこから発展したジャズやファンクなどのブラック・ミュージックがベースとなって生まれたものであり、例えばシーズン4のニューオーリンズ編では、現地の音楽文化“ガンボ”や、奴隷制時代の状況などに触れながら、ニューオーリンズのラップ音楽の発展過程を丁寧に取り上げている。
奴隷制やブラック・ミュージックの歴史的背景を知らずして、ヒップホップ文化を本質的に理解することはできないし、やっぱり背景を知れば、自分が今聴いている音楽をより楽しむことができるよね。
②『Scratch』
2001年公開のドキュメンタリー映画。ヒップホップの誕生、そしてDJ文化の発展をパイオニアやトッププレーヤーたちへのインタビューを通して紐解いていく。
世界中で多くの人々が楽しむカルチャー、ヒップホップ。今ではユニバーサルなものになったこの文化は1970年代のニューヨークで、とあるDJが革新的なプレーをしたところから始まっている。1973年、ブロンクスに住んでいたDJ、Kool Herc(クール・ハーク)は観客がいつも楽曲の同じ部分で盛り上がっていることに気づき、同じ楽曲のレコードを2枚同時にかけ、曲をループさせる “The Merry-Go-Round(メリー・ゴー・ランド)”というテクニックを発明。以降、彼が作る曲の間奏部分(breaks)の“つなぎ”はbreak beatsと呼ばれ、言葉を乗せたり、ダンスを踊るビートとしてヒップホップ文化の根幹になっていく。これがヒップホップの始まりであり、そのテクニックを生み出したクール・ハークは“ Father of Hip-Hop(ヒップホップの父)” と呼ばれることになる。つまり今現在僕たちが楽しんでるヒップホップカルチャーは全てDJの創意工夫、テクニックから始まったものなんだ。
映画『Scratch』はそんなDJたちのテクニックとその発展の歴史に焦点を当てた作品。そりゃヘッズとしてはチェックするしかないでしょ。
③『Nas/タイム・イズ・イルマティック 』
ヒップホップ史上最高のリリシストと称される Nas(ナズ)の伝説的デビューアルバム『Illmatic』の制作背景を中心に、ナズの生い立ちに迫ったドキュメンタリー映画。ニューヨークのクイーンズブリッジ・プロジェクトでの過酷な少年時代、両親や友人との関わり、そしてアルバムに参加したDJ Premier(DJプレミア)、Q‑Tip(Q・ティップ)、Large Professor(ラージ・プロフェッサー)らが語る制作秘話などを収めた貴重な映像作品。
この作品でしか知ることができないエピソード、ナレッジが盛りだくさんであり、作品時間の1時間15分があっという間に感じるヘッズなら必見のドキュメンタリーだ。
またラップというアートの面だけでなく、社会学の側面からもヒップホップ文化を学べるのがこのドキュメンタリーの見所の一つ。特にアフリカ系アメリカ人の文化史研究の第一人者であり、大学教授・社会活動家のCornel West(コーネル・ウェスト)博士が解説する1940年代から1960年代のアメリカにおける住宅環境の歴史と人種問題は1970年代以降のニューヨークにおけるヒップホップカルチャーの誕生に大きく関連するものであり、ヒップホップ好き、ブラック・ミュージック好きなら必聴だ。またナズ本人が振り返る1980年代〜90年代のクラック(吸引しやすくしたコカインの塊)の流行や、A Tribe Called Questの(ア・トライブ・コールド・クエスト)のQティップが語る黒人の若者が直面している様々な課題などヒップホップという文化を理解する上でとても大切な内容を学ぶことができる。
画像出典元
『Hip-Hop Evolution』:Netflix
『Scratch』:Palm Pictures
『Time Is Illmatic』:Tribeca Films
