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「ストリートヘッズのバイブル」では音楽や文化の知識を知ることができる映画や本を紹介していくよ!今回取り上げるのはNetflixドキュメンタリー『ブラック・ゴッドファーザー:クラレンス・アヴァントの軌跡』!
『ブラック・ゴッドファーザー:
クラレンス・アヴァントの軌跡』とは?
アメリカのエンターテイメント界で黒人が活動する土壌を作りあげた伝説的プロモーター、クラレンス・アヴァントの人生を辿るドキュメンタリー。ノースカロライナの極貧家庭で育った少年が、エンタメ業界で成り上がり、”黒人音楽のゴッドファーザー”と呼ばれるようなるまでの道のりを振り返った作品だ。
①ブラック・ミュージックの歴史を辿る旅
今では世界で最も聴かれている音楽の一つとなっているヒップホップ。日本でもラップが人気の音楽ジャンルとして定着してきたし、世界的にもK-Popなどでヒップホップ的な要素が取り入れられたり、様々な人種、国籍の人が聴いて楽しんだり、またプレイヤーとして発信したりできるものになっているよね。
ただユニバーサルな文化になったとはいえ、やっぱりラップ音楽はアメリカの黒人の方達が創り上げてきた“ブラック・ミュージック”。ジャズやファンクといった音楽と同様にアメリカの黒人文化の中で生まれた音楽だ。
このドキュメンタリーで特集されているクラレンス・アヴァントは1950年代頃から半世紀以上に渡り、音楽業界でプロモーター、そしてプロデューサーとして黒人アーティストの活動を支えてきた人物であり、彼の人生はそのままファンク、ソウル、R&B、そしてヒップホップへと至るブラック・ミュージックの歴史そのもの。つまりこのドキュメンタリーを観れば、ヒップホップのルーツやその歴史的背景まで触れることができるんだ。文化はそのルーツを知るとより深く楽しめるもの。ヒップホップが一大ムーヴメントになっている現在だからこそ、ぜひ観て欲しいドキュメンタリーだ。
②人種差別との戦い
2020年、Black Lives Matter (ブラック・ライヴズ・マター)運動でも大きく問題提起されたようにアメリカにおける黒人の方に対する差別は本当に根深い問題。今でも様々な形での差別が問題にはなっているのだけど、クラレンスが若年期を過ごした1930年代から1960年代は人種差別が現在よりも遥かに激しい時代だった。白人が黒人を殺害しても罪に問われない。そんな信じられないような出来事が起きていた時代なんだ。
クラレンスが育ったのは、そんな時代のアメリカの中でも特に差別が激しかった南部ノースカロライナ。極貧家庭で育ったクラレンスは自分の状況を変えるため家を出て様々な苦労を乗り越え、音楽ビジネスで名をなしていく。1969年に音楽レーベル「Sussex Records(サセックス・レコーズ)」を設立し多くのヒットソングを世に送り出すと、1970年代にはアメリカ史上初めて黒人所有のラジオ局を開設、ブラック・ミュージックを広める活動を進めていく。音楽を通して多くの人々が黒人文化を理解し、それを魅力的だと感じること。それがひいては黒人の方の地位向上に繋がることを音楽ビジネスを通じて実現していくんだ。
③スヌープ・ドッグやオバマ元大統領も!?
アメリカ黒人社会の“ゴッドファーザー”
クラレンスがこれまでに関わったり、影響を与えたアーティストはまさにブラック・ミュージックの歴史そのもの。このドキュメンタリーにも大物アーティストたちがこれでもかというぐらい登場している。1960年代から80年代にかけて活動し、グラミー賞を3回受賞しているシンガー、ビル・ウィザース、全世界アルバムトータルセールス1億枚以上のレジェンド・シンガー、ライオネル・リッチー、そしてヒップホップ勢からは現在は俳優として活動するジェイミー・フォックス、そして言わずと知れた西海岸のOG、スヌープ・ドッグなど、とんでない面子がクラレンスについてコメントを寄せている。その交友関係の幅の広さは半端じゃなく、バラク・オバマ元大統領、そして昨年の大統領選にも出馬したカマラ・ハリス氏なども登場。音楽業界に留まらず、政治の世界からも超絶リスペクトされているんだ。まさにブラック・ゴッドファーザー。半端ないぜ。
④稀代のビジネスマン、
クラレンスの最強交渉術
アメリカ音楽界屈指のビジネスマンだったクラレンスが最も得意としていた仕事は“ディール(交渉)”をまとめること。ビジネスの現場では一番大切なことだよね。ドキュメンタリーの中ではそんなクラレンスの交渉力が人を救った出来事に触れる場面がある。時代は1970年代、メジャーリーグで活躍していた黒人のハンク・アーロン選手はそれまでのアメリカ野球の象徴だったベーブ・ルースのホームラン記録を塗り替えようとしていた。今考えたらシンプルにおめでたいことだけど、なんと黒人のアーロン選手が白人のルースの記録を超えることをよく思わない人々から「記録を塗り替えたら殺す」というとんでもない手紙が球場に大量に送りつけられる事態に。この事態を知ったクラレンスはアーロン選手を守るためには大企業の後ろ盾が必要と考え、コカ・コーラ社の社長に直談判することに。会合の当日、社長室に入っていったクラレンスは挨拶もせずに一言、“N**gas drink a lot of Coke (黒人たちもコーラたくさん飲んでんだよ)”と言い放ったんだ。結果としてアーロン選手はコカ・コーラ社と巨額の契約を結ぶことに。アメリカ最大の会社がスポンサーとしてついたことで、アーロン選手は野球に集中することができ、ベーブ・ルースのホームラン記録を更新、野球史にその名を刻むんだ。音楽業界だけでなく、野球史にまでも大きな影響を与えてきたクラレンス、かっこ良すぎるよね。
⑤全ての仕事人の学びに
アメリカで黒人アーティストが活躍する基盤を作った男、クラレンス・アヴァント。
ドキュメンタリーには生前のクラレンス本人(2023年に死去)も出演し、彼の仕事に対する考え方や思いを語っている。仕事における人と人との繋がりの大切さや、自分の価値を理解し、強みをしっかりセールスしていく方法など音楽ビジネス以外でも役にたつ要素がたくさん詰まっている『ブラック・ゴッドファーザー:クラレンス・アヴァントの軌跡』。マスト・ウォッチです。