WHAT’S UP, GUYS!
ヒップホップ好きイングリッシュティーチャー TAROが送る「ラップで使われてるスラングの意味、ユナーミーン?」。
Vol.295の今回は、史上最強のヒップホップ・クルー、Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)を生み出した男、RZA(レザ)特集。ニューヨーク・スタッテン・アイランドの荒くれ者たちをまとめあげ、ヒップホップ史上最強のラッパー集団を作り上げた稀代のプロデューサーのリリックを1993年リリースのウータンのファーストアルバム『Enter the Wu-Tang (36 Chambers)』からチェックしてみよう!
「Clan in da Front」
Wu-Tang Killa Beez—we on a swarm
The RZA, the GZA, Ol’ Dirty Bastard, Inspectah Deck,
U-God、Ghostface Killah, the Method Man, Raekwon the Chef,ウータン・キラ・ビー、オレらの軍団がかましにいくぜ
レザ、ジザ、オール・ダーティー・バスタード、インスペクター・デック、
ユー・ゴッド、ゴーストフェイス・キラ、メソッドマン、レイクォン・ザ・シェフ
当時まだ謎が多かったウータンのメンバーたちをレザが紹介したヴァース。
まずはプロデューサーであり、リーダーのレザ、幅広い語彙やメタファーを操るジザ、ヒップホップ史上最もクレイジーな男と言われるオール・ダーティー・バスタード、テクニカルなライミングのインスペクター・デック、低音ボイスでかますハードコアなラップが魅力のユー・ゴッド、高音ボイスで縦横無尽に韻をたたみかけるゴーストフェイス・キラ、スモーキーな声と圧倒的なカリスマ性を誇るメソッド・マン、そしてグループ随一の
リリシスト、レイクォン。史上類を見ない最強スキルを持ったメンバーが集ったウータンはまさに“bee(蜂)”のように、”swarm(群れ)”をなしてヒップホップシーンに襲いかかるぜってわけだ。
続いてはハードなビートが最高にカッコいい「Wu-Tang Clan Ain’t Nuthing ta Fuck Wit」!
「Wu-Tang Clan Ain’t Nuthing ta Fuck Wit」
I be tossin’, enforcin’, my style is awesome
I’m causin’ more family feud than Richard Dawson
And the survey said, “You’re dead!”
Fatal Flying Guillotine chops off your fuckin’ headかましてく、力でねじ伏せていく、オレのスタイルはヤバいぜ
家族間の確執を起こしている、リチャード・ドーソンよりもな
調査結果が言ってると、“お前はもう死んでいる”ってな
フェイタル・フライング・ギロチンがお前の頭を切り落とすぜ
“family feud”は「家族間の確執」という意味。実はこれ、アメリカの人気テレビ番組『Family Feud』のタイトルでもあり、リチャード・ドーソンはそのMCの名前だ。番組では、2つの家族が賞金や景品を獲得するために、クイズで激しく競いあう企画が人気。つまりレザの過激なラップスタイルはシーンに動乱を巻き起こすということを示唆してるって感じだね。
“the survey said(調査によれば)”も 『Family Feud』内で使われている決め台詞。
”Fatal Flying Guillotine(フェイタル・フライング・ギロチン)”も実は映画からのサンプリング。1975年制作の香港映画『Master of the Flying Guillotine(邦題:片腕カンフー対空とぶギロチン)』が元ネタだ。なんとこの映画の中に、投げて、人の頭を切り落とすという空飛ぶギロチンという武器が出てくるのだ。つまりレザのハードなライミングはまるで空飛ぶギロチンみたくお前をやっつけちまうぜって言ってる感じだね。
ラストはウータンのデビュー・シングルでもあるクラシック・ソング「Protect Ya Neck」!
「Protect Ya Neck」
Yo! Chill with the feedback, black, we don’t need that!
It’s 10 o’clock, ho, where the fuck’s your seed at?フィードバックは気にすんな、そんなものはいらねぇぜ
もう10時だ、お前のガキたちは一体どこにいるんだ?
“feedback(フィードバック)”は「感想」という意味。つまりレザに周りからの批評は不要ってわけだ。さらにレザが続けるのは “It’s 10 o’clock, ho, where the fuck’s your seed at?(もう10時だぜ、お前の子供たちは一体どこにいるんだ?)のライン。これは元々レザが子供の頃の70年代〜80年代にニューヨークのテレビで22時になると流れていた“It’s 10 p.m. Do you know where your children are?(午後10時です。あなたの子供達がどこにいるかわかってますか?)のサンプリング。特にゲトーでは夜に子供が出歩くのは非常に危険。つまり“It’s 10 o’clock, ho, where the fuck’s your seed at?(もう10時だ、お前のガキたちは一体どこにいるんだ?)”ゲトーで暮らす人々へのレザから警鐘なんだ。
【歌詞出典元】Genius
*訳は全て意訳です。