世界で活躍する靴職人、三澤則行のヒップホップなキャリアとは?

プロのDJを目指していた青年がなぜ靴職人に!?

ライター:TARO

ヒップホップ好きのスポーツ選手や文化人のキャリアについてインタビューしていく「あの人も実はヒップホップ」。今月は日本を代表する靴職人の一人であり、スパイク・リーやエイドリアン・ブロディなどへの製作実績を持つ、靴職人&アーティスト・三澤則行(みさわ・のりゆき)さんに全4回に渡って、お話をお伺いしました。

前回までの記事はこちら→ハンマー投げの選手からプロ・ラグビーに!?異色のキャリアのラガーマン 知念 雄とは?

世界を舞台に活躍する靴職人&アーティスト 三澤則行とは?

レペゼン:
自己紹介をお願いします。

三澤則行:
靴職人の三澤則行(みさわ・のりゆき)と申します。出身は宮城県です。
オーダーメイドの靴作りと同時に、アートの分野で靴を表現しています。

レペゼン:
先ほど作品を拝見して、三澤さんのアート作品の独自性と精緻さ、そして何よりも靴の造形としての美しさにとても驚かされました。元々若い頃から靴に興味があったんですか?

【三澤さんが制作した靴やアート作品】

三澤則行:
ありましたね。自分が高校生の頃、ちょうどキムタクの影響でRed Wing(レッドウイング)が流行りだした頃で。当時一足3万5000円ぐらいで高校生にはかなり高かったんですが、徹夜で列に並んで買ってましたね笑

レペゼン:
高校生でそこまでする人は少ないかもしれません笑
その時は靴職人になろうと思っていたんですか?

三澤則行:
いや全くでしたね。
その世界すらわからなかったです。

レペゼン:
スニーカーには興味なかったんですか?

三澤則行:
スニーカーも好きで、大学生の時には100足ぐらい持ってました。
全ての靴が好きっていう感じですね。

ヒップホップにハマったきっかけはライムスターのあの名曲!

【学生時代のフリーマーケットで友人達と(前列中央)】

レペゼン:
ヒップホップはいつ頃から聴いてたんですか?

三澤則行:
大学1年生の時に、演劇サークルに所属してたんですが、練習場所が仙台市の体育館や公民館みたいなところで。
そこにダンスをやってる方がいて、RHYMESTER(ライムスター)の「キング・オブ・ステージ」をかけてたんですよ。

レペゼン:
僕も大好きな一曲です!

三澤則行:
ヒップホップやラップっていうジャンルを1ミリも知らない状態で、ダンサーがかけてた「キング オブ ステージ」を聴いて衝撃を受けたんです。「かっこいい!」みたいになって、耳に残ってた。「ザキーン」っていう。

レペゼン:
良いですね。

三澤則行:
「何なんだこれは?」てなって。で、ヒップホップが好きな人に、「こんな曲知ってる?」って言ったら、RHYMESTERって教えてもらって、そこからどんどんっていう感じです。

レペゼン:
RHYMESTER入りなんですね!
そこからどう広がっていったんですか?

所蔵レコード2000枚、本気で目指したDJ、そして靴の世界へ

三澤則行:
その後、仙台の古着屋さんでバイトを始めたんですが、ドレッドのヒップホップにめちゃくちゃ詳しい先輩がいて。その人に憧れて、色々教えてもらって、DJも少しずつ練習し始めました。

レペゼン:
なるほど。

三澤則行:
で、1年ぐらいですかね。ずっとオタクDJとして頑張ってたら、先輩がパーティーで声をかけてくれて。ちょっとデビューしてみる?みたいな。

レペゼン:
おお!

三澤則行:
そこからクラブで回す機会を月1ぐらいで頂戴して、あとは、ヒップホップ繋がりの友達のイベントで回してみたいなことを大学3年くらいまでやってましたね。

レペゼン:
当時だとDJはレコードの時代かと思うのですが、結構集めていたんですか?

三澤則行:
気づいたらDJの友達もはるかに超えるぐらいレコード持ってて。2000枚ぐらいかな。知識量も全然自分の方が知ってるんだって途中で気づいた感じです。

レペゼン:
ハマったらとことんやるタイプ笑

三澤則行:
お金も全て突っ込みましたし、周りから破産するんじゃないかと心配されてたくらい。親も心配してましたね。

レペゼン:
それだけハマったってことは、やっぱりプロのDJを目指すように?

三澤則行:
結構本気で思ってました。いろんなDJのミックステープと自分のを聴き比べて「いや、全然劣ってないんじゃないか」みたいな。

レペゼン:
なるほど。

【DJ時代の三澤さん(右から2番目)】



三澤則行:
ただどのきっかけか思い出せないんですけどある時、自分の耳って運動神経が悪いんだってことに気づいちゃったんです。

レペゼン:
どういうことでしょうか?

三澤則行:
運動神経が良い人、悪い人っているように、曲を聞き取る感覚の良い人、悪い人っていて。自分は曲に耳が馴染むまで結構時間かかるなって思ったんです。

レペゼン:
ピッチとか、曲の感じを掴むのがってことですよね。

三澤則行:
感覚が良い人って、即興で新しい曲と次の曲に繋いだり、組み合わせたりできるんですよね。
自分は事前に聞き込んで、セットリスト作って一切変えないみたいなタイプで。その場でピッチ合わせるとか即興性が全然なかった。

レペゼン:
その場の空気に合わせるのも大事ですもんね。

三澤則行:
なので、自分はDJで食べていくのはちょっと違うのかなって。そんなタイミングで靴を作る仕事があることを知ったので、レコードでお金使うより靴にお金を使って、靴職人っていうのを真剣に考えようかなと思ったんです。

レペゼン:
それは大学何年の頃ですか?

三澤則行:
大学3年の中盤から後半ぐらいにそうなってきました。

レペゼン:
ちょうど就活ぐらいですよね。そこからどういうふうに靴職人の道へ進んで行くんですか?

RHYMESTERでヒップホップにハマり、DJとして頑張っていた三澤さんが歩み出した靴職人の道。次回は修行時代の話から、憧れの人、宇多丸さんとの出会い、そして海外への挑戦までを紹介していくよ!

プロフィール

  • 三澤則行(みさわ・のりゆき)

    三澤則行(みさわ・のりゆき)

    1980年生まれ、宮城県出身。幼い頃から母親の趣味である美術画集に囲まれて育ち、工作や絵画に没頭した少年時代を送る。大学時代はヒップホップ音楽に没頭し、プロのDJを目指した。この頃に培ったヒップホップ・マインドは現在の活動、作品製作にも大きく影響している。大学3年生のとき、地元のとある革靴店との偶然の出会いから靴づくりの道に。靴職人として東京・浅草とオーストリア・ウィーンで10年間修業した後、2011年に自分の工房兼靴教室を東京・荒川に構える。2017年にはフランス・カンヌ映画祭で展示会を開催。日本とヨーロッパで培われたアートの感性、そして精緻な技術によって生み出される造形美はまさに唯一無二であり、スパイク・リーやエイドリアン・ブロディなど世界的なセレブリティへの制作実績を持つ。 近年はアメリカで開催される国際的な靴のコンクール「GLOBAL FOOTWEAR AWARDS」で2年連続で受賞するなど、今世界で最も注目される靴職人の一人。

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