みんな文化ディグってる?
「ストリートヘッズのバイブル」ではヒップホップ好きならマストチェックの映画を、作中に登場する名言を通して紹介していくよ!
今回取り上げるのは、アメリカの根深い人種差別問題を描いた『アメリカン・ヒストリーX』。
勉強熱心で家族想いだった青年が、白人至上主義者になっていく過程とその後を、丁寧に描きだした映画だ。人種差別のない本当の平和を手にいれるために、我々にできることは何かと問いかけてくる。
そんな『アメリカン・ヒストリーX』から、君のマインドをインスパイアする名言を紹介していくよ!
『アメリカン・ヒストリーX』ってどんな映画?
父親を黒人に殺されたことがきっかけで、過激な白人至上主義者になった青年デレクは、白人至上主義のネオナチ団体のリーダー的存在として活動することに。バスケットコートを黒人から取り上げたり、移民が働くスーパーを荒らしたりと、やりたい放題やっていた。
そんなある日、デレクは家の車を盗もうとした黒人ふたりを殺してしまう。ひとりを容赦なく射殺し、瀕死状態のもうひとりは首の骨をへし折るという残虐ぶり。明らかな殺意をもっての殺人だったが、故殺罪(意図せず人を殺してしまった罪)で3年間という短い期間を刑務所で過ごすことに。
デレクに心酔していた弟のダニーは、その3年間でデレク以上の白人至上主義者になっていた。学校の感想文でヒトラーを称賛する内容を書いたダニーは、校長のスウィニーに、兄デレクについてのレポートを書くよう命じられる。デレクが犯した罪が、ダニーに与えた影響を自己分析させるために。
過去と現在が交錯しながら、ダニーのレポートをもとにデレクの心の移り変わりが描かれていく。
『アメリカン・ヒストリーX』の名言
過激な白人至上主義者だったデレクは、刑務所での生活の中で、だんだんと自分の思想を改めることになっていった。そんなデレクに寄り添い、改心のきっかけを与えた言葉をかけた人たちの名言を3つ紹介するよ!
①「俺はアホな黒人だが、シーツに八つ当たりはしねえ」
受刑者のほとんどを黒人が占める刑務所で、犯した罪から黒人たちに敵対視されていたデレクは、ネオナチの白人グループとつるむように。
洗濯の刑務作業を一緒に担当したのも、また黒人であるラモントだった。デレクの罪に無頓着なのか、彼に陽気に話しかけるラモントだったが、デレクは無視を貫いていた。
ある日、デレクは面会に来た母親と口論になり、イライラした様子で洗濯されたシーツを畳んでいた。怒りをぶつけるようにすごい速さでシーツを畳み続けるデレクに、いくらやっても仕事が増えるだけだからやめろと言うラモント。
そんな彼の忠告を聞かずに、手を止めないデレクに対して、ラモントが言ったパンチラインがこちら。
I know, I’m just a dumb,stupid nigger, right?
What do I know?
I know I ain’t the one getting
mad at them sheets,though.
俺はアホな黒人だが
シーツに八つ当たりはしねえ
怒りに任せて仕事をめちゃくちゃにこなすデレクへのクールな語りかけがイカしてるね。
「俺だって頭にくるシーツはある」と、シーツを頭にかぶり、KKK(白装束が特徴のアメリカの白人至上主義者団体)のものまねをはじめるラモント。それにはデレクも降参といった様子で、ゆっくりシーツを畳みはじめる。
後にわかることだが、ラモントが服役していたのは、テレビを盗んだからだった。その刑期はなんと、デレクの倍である6年。彼を捕まえようとした警官の足にテレビを落としてしまったことが暴行とみなされたからだ。さすがのデレクも、この話にはとまどいを隠せていなかった。
そんな風に少しずつお互いのことを話しながら、デレクとラモントは打ち解けていくことに。
②「君がしてきたことは君を幸せにしたか?」
ネオナチグループとはポリシーが合わず、グループを抜けたデレク。その一方で、黒人のラモントとは仲を深めていった。しかしそれをよく思わないネオナチグループはデレクをレイプし、大怪我を負わせる。
そんなデレクを訪ねてきたのは、弟のダニーが通う高校の校長であるスウィニーだった。かつてはデレクも教えていたスウィニーは、ダニーが彼と同じ道をたどることを心配し、彼のもとにやってきたのだ。
スウィニーは「私も怒りをためてきた」と、黒人を差別する白人や社会を憎んでいたと告白する。いくら怒っても答えはでなかったとも。そしてスウィニーが、続けてデレクに問うたパンチラインがこちら。
Has anything you’ve done
made your life better?
君がしてきたことは君を幸せにしたか?
今のはデレクにはキツイ問いかけ…!
でも本当にそうで、怒りに任せた行動は新たな怒りを生み、不幸の負の連鎖がはじまるだけなんだ。
白人至上主義の思想に疑問を抱き始めたデレクは、ここから徐々に変化していくことになる。
③「もうブラザーをいじめんなよ兄弟!」
ネオナチグループからも敵対視され、後ろ盾もなくなり、いつ黒人たちに襲われてもおかしくなくなったデレク。毎日怯えて暮らすも、不思議と誰もデレクに手を出してこなかった。
晴れて出所の日、デレクはラモントと最後の言葉を交わすことに。デレクはラモントのおかげて無事出所できたことを感謝する。実は彼が襲われないように守っていたのは、ラモントだったんだ。
軽い罪のはずなのに、まだまだ刑務所を出られないラモントに、デレクは別れのあいさつをする。そんな彼に対して、ラモントが最後にかけたパンチラインがこちら。
Just take it easy
on the brothers, all right?
The brothers!
もうブラザーをいじめんなよ兄弟!
いいやつすぎないか?
同じ黒人を殺したデレクを敵対視するどころか、友達として心を通わせ、彼を守ってきたラモント。デレクが自分の思想の過ちに気づくきっかけになったのは、彼の存在がとても大きい。
出所したデレクは、自分と同じく白人至上主義に染まっていくダニーを正気に戻そうと奮闘していく。だけど、物語は衝撃のラストをもって、幕を閉じることになる。残酷なラストだけど、現実ではそれ以上にひどいできごとが日々起こっているのも事実だ。
ダニーがレポートの中で引用した、エイブラハム・リンカーンの大統領就任演説のスピーチがある。
我々は敵ではなく友人である。敵になるな。激情におぼれて愛情の絆を断ち切るな。仲良き時代の記憶をたぐりよせれば、良き友になるなれる日は再び巡ってくる
人種を超えた先にいる、ひとりひとりの人間への想像力を、忘れてはいけない。
画像出典元:ワーナー・ブラザーズ
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